2011 Fiscal Year Research-status Report
褐色脂肪細胞制御による新たなウシ肥育技術開発に向けた基礎研究
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23580368
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舟場 正幸 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40238655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 知哉 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域, 主任研究員 (80343987)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / ウシ / 脂肪組織 / 転写因子 |
Research Abstract |
効率的な牛肉生産を考える上で問題となるものの一つに、肥育後期における肥育効率の低下が挙げられる。この期間の肥育効率の改善により、肥育期間を短縮できる。褐色脂肪細胞は褐色脂肪組織を構成する細胞であり、熱産生に重要である。従来、ヒトやウシの褐色脂肪組織は成長に伴い消失することから、起源、分化調節、ならびに、機能制御に関して研究は進められてこなかった。最近、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞に分化転換し得ること、ならびに筋細胞系の細胞(筋芽細胞)も褐色脂肪細胞になり得ること、白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への分化転換の程度は、動物の生理条件や環境要因によって可変的であることが明らかになった。「肥育に伴って、褐色脂肪細胞による熱産生が増加し、肥育効率が低下するのではないか?」との仮説の下、本研究の目的は、1) 白色脂肪組織において褐色脂肪細胞が出現することの検証、ならびに、2) 褐色脂肪細胞の分化・成熟および機能に及ぼす要因の解明を行うことである。 成牛の脂肪組織中で褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるUcp1の発現がタンパク質レベルでもmRNAレベルでも検出され、成人のみならず成牛においても褐色脂肪細胞が存在することが示唆された。肥育期間中に粗飼料:濃厚飼料比の異なる飼料を給与したウシの脂肪組織中のUcp1ならびに褐色脂肪細胞で選択的に発現する遺伝子群の発現をqRT-PCR法により定量したところ、濃厚飼料多給群のウシの皮下脂肪においてこれらの遺伝子群は高発現し、内臓脂肪における発現は給与飼料の影響が見られなかった。褐色脂肪細胞分化に影響を及ぼす因子を培養細胞レベルで検討したところ、褐色脂肪前駆細胞の分化に対して、インスリンが第一義的に必要な因子であること、ならびに転写因子であるSrebp1cの発現誘導を介して分化を推進していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初予定していた計画通りに進んでいるから。この1年間に褐色脂肪分化に関与する新たな分子群が次々と同定されてきた。これらの分子群がウシの脂肪組織で発現するかどうか?飼料条件によって発現量の変化が起こるか?これらの検証により当初は想定していなかった新たな機構の解明に繋がる可能性もある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた成果を受けて、今後は、培養細胞レベルでの知見がウシの脂肪組織における褐色脂肪細胞誘導とどのように関わっているか?ウシ脂肪組織での遺伝子発現変化から予想される機構を培養細胞レベルで検証することの双方向で研究を推進し、最終的にウシの肥育効率改善に向けての提言を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は試薬納入業者の値引きや試薬類のキャンペーン時期に当該試薬を購入した結果、当初予定していた執行金額よりも少ない執行金額で研究を推進できた。次年度は、当初の計画通り、ウシ個体を使った飼育試験とその解析、ならびに培養細胞を使った褐色脂肪細胞分化の制御に関する分子機構の解明のために必要な物品の購入を行う。本年度に知り得た情報の一部は当初の予想を超えるものであった。次年度は、本年度の執行残額と当初の予定執行金額を併せた範囲内でさらに研究の深化を図る。
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