2012 Fiscal Year Research-status Report
褐色脂肪細胞制御による新たなウシ肥育技術開発に向けた基礎研究
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23580368
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舟場 正幸 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40238655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 知哉 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 家畜飼養技術研究領域, 研究員 (80343987)
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / ウシ / 脂肪組織 / 転写因子 |
Research Abstract |
効率的な牛肉生産を考える上で問題となるものの一つに、肥育後期における肥育効率の低下が挙げられる。本研究は、『肥育に伴って、褐色脂肪細胞による熱産生が増加し、肥育効率が低下するのではないか?』との仮説の下、肥育牛の白色脂肪組織における褐色脂肪細胞の存否、給与飼料が褐色脂肪細胞活性に及ぼす影響、さらには、褐色脂肪細胞分化ならびに活性調節機構の解明を目的としている。 研究初年度に、肥育牛の白色脂肪組織中に褐色脂肪細胞は存在することを明らかにしているので、本年度は、α-トコフェロール含量ならびにβ-カロテン含量の高いTMR飼料を給与した肥育牛の白色脂肪組織中の褐色脂肪細胞関連遺伝子の発現を検討した。その結果、褐色脂肪細胞特異的なUcp1の遺伝子発現は調べた脂肪組織―皮下脂肪、腸管膜脂肪、腎周囲脂肪、筋周囲脂肪、ならびに筋内脂肪―いずれにおいても検出された。UCP1遺伝子発現に関して、いずれの部位においても給与飼料間で有意な違いは認められなかったが、腸間膜脂肪におけるCIDEA, PRDM16およびTfamといった褐色脂肪組織において高発現する遺伝子の発現はTMR区の方が有意に低く、COX7a1やCOX8bもTMR区の方が低い傾向を示すことが明らかになり、TMR飼料摂取によって、潜在的に褐色脂肪細胞分化が抑制されている可能性が示唆された。 また、白色脂肪前駆細胞株である3T3-L1細胞を定法の脂肪細胞分化プロトコールに加えてサイロキシン、ロシグリタゾン、イソブチルメチルキサンチンの長期処理により、Ucp1陽性脂肪細胞に分化することが示され、白色脂肪前駆細胞は条件次第で褐色脂肪細胞になり得ることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初予定していた計画通りに進んでいるから。褐色脂肪細胞に関する研究はホットな領域で、この1年間に白色脂肪組織中に出現する褐色脂肪細胞の出自に関する新知見が明らかになった。これらの分子群がウシの脂肪組織で発現するかどうか?飼料条件によって発現量の変化が起こるか?これらの検証により当初は想定していなかった新たな機構の解明に繋がる可能性もある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた成果を受けて、今後は、白色脂肪前駆細胞が褐色脂肪細胞に分化する際にα-トコフェロールやβ-カロテンがどのような影響を及ぼすかについて培養細胞レベルで検討する。また、サイレージ主体の飼料を給与された肥育牛の白色脂肪組織中の褐色脂肪細胞の動態を検討することにより、如何なる飼料因子が褐色脂肪細胞出現に影響を及ぼすかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究最終年も引き続き、肥育試験から得られるサンプル調製ならびに解析を実施する。また、細胞培養レベルで褐色脂肪細胞分化調節機構を探るので、当初の計画通り、研究費は、これらの研究を推進するために費やされる。
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