2011 Fiscal Year Research-status Report
高乳量を持続する多回搾乳牛の乳腺組織と全身における代謝動態の解析
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23580369
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30194632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉野 利久 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (90363035)
黒川 勇三 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00234592)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 乳牛 / 搾乳回数 / 乳腺組織 / 乳生産 / 代謝 |
Research Abstract |
最近、国内の酪農での導入台数が増加している自動搾乳装置(搾乳ロボット)では、牛が自発的に搾乳室に進入することによって1日に多回数の搾乳が行われる。このような多回搾乳下では、乳生産量が増加することが知られている。多回搾乳による乳生産量増加は栄養必要量の増加を伴うと考えられるが、そのための栄養管理技術は確立していない。本研究は、ロボット搾乳装置によって多回搾乳が行われる乳牛を用いて、乳腺組織と全身での栄養素代謝量の変化を種々の条件下で検討し、多回搾乳牛の栄養管理技術に応用しうる基礎的知見を得ることを目的としている。初年度では、多回搾乳(1日4回搾乳)が泌乳初期乳牛の乳腺組織での栄養素の正味取り込みと全身の栄養状態に及ぼす影響について検討した。 泌乳牛12頭(初産牛4頭、経産牛8頭)を供試し、分娩後に2回搾乳区と4回搾乳区に分けた。各牛には分娩後からTMRを自由採食させ、搾乳ロボット内で配合飼料を3から7 kg/日、給与した。4回搾乳区では2回搾乳区に比べ、乳量は12kg/日ほど多く、乳成分生産量も多かった。両区の間で飼料摂取量には有意な違いはみられず、体重減少量にも有意な違いはなかった。NEFAやグルコースの血漿中濃度の推移などから、4回搾乳区では体組織からの動員が増加するととともに、乳線組織への糖基質の供給が低下していることが伺えた。一方、乳腺組織での糖・脂質の取り込み率は増加しており、このことが乳糖や乳脂肪の高い生産に寄与していると推察された。血漿アミノ酸濃度は4回搾乳区で高く推移しており、乳腺組織以外での代謝が調節されることで、乳タンパク質生産のためのアミノ酸の需要を賄っている可能性が示唆された。内分泌のうち、血漿IGF-I濃度が4回搾乳区では高値で推移する傾向が見出されており、このことが血漿アミノ酸濃度の推移と関連あることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた泌乳初期乳牛における搾乳回数の違いが乳腺組織および全身での栄養素代謝に及ぼす影響に関する試験では、分娩直後の経産牛8頭を用いて試験を実施し、乳生産成績、血漿中栄養素濃度、乳腺組織での正味代謝量、代謝ホルモン濃度の測定などについて、ほぼ計画通り遂行できた。乳生産への影響については想定通りの結果が得られた。初産牛についても、例数を得るために、初年度から試験を行った。ロボット搾乳システの設定の調節方法を検討した結果、試験計画通りに搾乳回数を制御することができた。計画段階ではロボット搾乳への馴致期間などが不明であったたが、予備試験の結果をもとに、試験期間を当初の計画よりも延長させた。また飼育上の問題が発生する懸念があったことから、安定同位体を用いた代謝量の測定については初年度での実施をみあわせた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、泌乳初期での多回搾乳は、体組織動員の増加をもたらす可能性が示唆された。泌乳中・後期でもそのような効果がみられるならば、泌乳中後期で搾乳回数を増加させることによって、その時期にみられる過剰な体脂肪蓄積による過肥を避けることができる可能性がある。そこで24年度では、当初の予定通り、泌乳中・後期牛における多回搾乳が、乳生産および乳腺組織での栄養素代謝に及ぼす影響について検討する。2回搾乳区と4回搾乳区を設け、反転法によって試験を実施する。初年度と同様、乳生産成績、血漿中代謝物濃度、乳腺組織での血漿代謝物濃度の動静脈差について、搾乳回数変更後10日目に測定する。同位体による代謝量の測定については、乾乳直前の乳牛を用いて、糖およびアミノ酸の代謝量について測定する予定である。 また、当初計画していなかったが、泌乳初期での多回搾乳の乳生産反応におよぼす乾乳期間の栄養水準の影響についても検討する。泌乳初期での多回搾乳による体組織の動員が、乾乳期間での栄養水準を高めることによって緩和されることを期待している。分娩予定日の3週間前から、乾乳牛のエネルギー要求量の1.0倍および1.3倍に相当する飼料を給与する2区に分ける。分娩後は両区とも4回搾乳を行い、乳生産ならびに血漿代謝物濃度および乳腺での動静脈濃度差を分娩50日目まで1週間ごとに測定する。 次年度使用額が生じたが、これは依頼分析に使用する予定であった試料の調製が年度内に間に合わなかったためで、次年度の依頼分析の経費にあわせて使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は飼料、ガラス器具、採血用器具、分析用試薬、ガスクロ用カラム、同位体試薬などの用途に使用する。旅費は、多回搾乳の研究成果のある北海度根釧農業試験場へ情報収集のために訪問するために使用する。その他の経費として、血液中の代謝物濃度の委託分析に使用する。
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Research Products
(1 results)