2012 Fiscal Year Research-status Report
ウシにおける個性の多面的評価と草地管理・利用への応用
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23580371
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
平田 昌彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (20156673)
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Keywords | ウシ / 個性 / 反応性 / 大胆 / 臆病 / リーダーシップ / 評価 / 草地管理・利用 |
Research Abstract |
本研究課題の第1の目的である「ウシの個性の体系的把握と理解」のために以下の研究を実施した。 1. いくつかの指標に基づく個性評価:採餌と社会性のトレードオフについて,前年度に得られたデータを詳細に解析し,論文1編(受理)としてまとめた。また,社会的隔離,新奇環境,新奇物ならびに採餌と社会性のトレードオフに対する黒毛和種牛の反応を調査した。新奇物反応の個体内一貫性は低かった。新奇環境試験において,好奇心や探査性の強さを表すと想定していた最大到達距離および歩行時間割合は,視覚的な社会隔離に対するストレスを反映するものと解釈され,視覚的社会隔離がない状況で好奇心や探査性のみを評価できる試験を考案する必要性が示された。また,トレードオフ試験において,仲間から遠く離れ,多くの容器を訪問した個体は,社会性が弱いが,仲間から視覚的に隔離されると餌を求めて遠くへ行けない(社会性を評価できない)可能性が示唆された。 2. 草地間の移動時における移動順位:2つの通路で連結されたセンチピードグラス草地とバヒアグラス草地に黒毛和種牛群(26~31頭)を放牧し,草地間の移動における順位について測定・解析した。放牧季節を通して移動順位に一貫性を示した個体は,センチピードグラス草地からバヒアグラス草地への移動では6頭,逆方向の移動では9頭であったが,前方位置をとった個体は後者の移動における1頭のみであった。しかしながら,過去のデータから,この個体は3~4年前にも同様な特徴を有しており,群の構成メンバーなどが変化するなかで移動順位の一貫性を維持したことが明らかになり,移動時のリーダーとして,牛群による草地利用の改善に利用できる可能性が示された。 3. 採餌における関連付けの持続期間:前年度に得られたデータを詳細に解析し,論文1編(審査中)および国内学会発表1編としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画に沿って研究を実施できたのに加え,研究成果を発表(国際誌受理1編,国内学会発表1件)ならびに投稿(国際誌審査中1編)することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成25年度】 データをさらに蓄積するため,また,加齢に伴う個性の変化の可能性を検討するために,平成23および24年度と同様の調査を行う。平成23年度からのデータをまとめて,個性の各特質の個体間変動の大きさおよび時間的持続性,特質間の相関関係などの観点から解析することにより,個性から見た群の成り立ちを把握・理解する手法を確立する。ウシの個性を草地の管理・利用に応用する可能性について予備実験を実施する。植生の定着までに時間を要するため,平成26~27年度に用いる草地の造成を開始する。前年度までに実施した実験について,データを詳細に解析し,成果を雑誌論文や学会発表として公表する。 【平成26年度】 ウシの個性を草地の管理・利用に応用する可能性について検討する。すなわち,前年までに明らかになった個体の個性をもとに,個性から見た構成を異にする実験牛群を人為的に編成する。同時に“空間的に不均一な植生・環境を有する草地”を人為的に創出する。実験牛群を草地に放牧し,草地の利用について,動物側(個体と群のレベル)と草地側から測定し,評価する。 【平成27年度】 平成26年度と同様の調査を行い,データを蓄積する。得られたデータをもとに,ウシの個性を草地の管理・利用に応用する方法について探索・検討し,その効果を評価・検証する。特に,高度な草地管理・利用を実現するために有効な個性の特質,群構成などに焦点を当てて解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として実験資材の購入に充てる。
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