2011 Fiscal Year Research-status Report
亜硝酸還元の増強とメタン生成の低減に向けたルーメン微生物の分子制御機構の解析
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23580377
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅沼 成人 明治大学, 農学部, 講師 (50366902)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メタン / ルーメン微生物 / 亜硝酸還元 / 硝酸態窒素 / 野菜残渣 |
Research Abstract |
高硝酸態窒素含有飼料を安全かつ有効に与え、メタン生成を抑制するためには、亜硝酸還元能の増強が極めて重要と考えられる。このためには、亜硝酸還元能の高い新規単離菌を見つけ出し、その菌の亜硝酸還元酵素の活性を増大させるように育種・改良する必要があると考えられる。そこで、本年度は、先ず新規単離菌の探索を行った。そして、それらの菌の特性を調べるとともに、亜硝酸還元酵素の生化学的特性を解析した。 硝酸含量の異なる飼料をヤギに給餌したところ、高硝酸飼料を給餌したヤギからの方が、亜硝酸還元菌が単離される確率が高かった。16SrRNA解析から、単離された亜硝酸還元菌は、Lactobacilus属、Veillonella属、またはClostridium属と推定される菌であった。そこで、菌属に特異的なプライマーを用いてリアルタイムPCRを行った結果、高硝酸飼料給与時にこれらの菌が増加する傾向が見られたので、これらの菌はヤギルーメン内での亜硝酸還元を担うと考えられた。Veillonella属の亜硝酸還元菌について、その詳細を調べた。本菌の亜硝酸還元酵素は細胞質に局在した。また、亜硝酸の存在下で培養すると亜硝酸還元酵素の合成が促進されると考えられた。亜硝酸を添加した混合ルーメン微生物培養系に、本菌を総菌数の約0.5 %となるように添加したところ、亜硝酸還元速度が増加した。その結果、亜硝酸による発酵およびセルロース消化の抑制が軽減され、メタン生成が抑制された。従って、硝酸塩含量の高い飼料または硝酸塩を添加した飼料と共にプロバイオティクスとして本菌を投与することにより、発酵や繊維消化の抑制を招かないでメタン生成を抑制できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己評価 達成度70 % 未知の亜硝酸還元能の高い菌の検索、およびその菌のルーメン内での増殖を促進する条件についての検討というテーマの下で、本年度は計画通りに、未知の亜硝酸還元能の高い菌の検索を行い、いくつかの亜硝酸還元菌を単離することに成功した。また、これらの菌の実際のヤギルーメン内での存在数と、飼料中の硝酸含量によりどのような影響を受けるかを観察することができた。ただし、菌層全体の変動を解析するには至らなかったので、次年度に解析を繰り越した。 一方、亜硝酸還元能の高い新規単離ルーメン菌における亜硝酸還元酵素の活性の調節を目的に、得られた単離菌の特性を調べ、プロバイオティクス菌として有効である可能性を示し、一定の成果は得られた。しかし、種々のカラムクロマトを組み合わせ、単離菌の亜硝酸還元酵素の精製を試みたが、上手くいかず、まだ次のステップには到達していない。当初の計画が過密であったことが反省点である。
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Strategy for Future Research Activity |
亜硝酸還元能の高い新規単離ルーメン菌における亜硝酸還元酵素の活性の調節のテーマでは、達成できなかった亜硝酸還元酵素の精製を引き続き行う。上手くいかない場合に備え、フォスミドベクターを用いた遺伝子ライブラリーを作成し、亜硝酸還元酵素の活性から酵素遺伝子のスクリーニングも酵素の精製と並行して行うことで、その塩基配列を決定する。その後は、計画書通りに、亜硝酸還元酵素合成の調節機構をリアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法、およびマイクロアレイ法を用いて解析する。また、ゲルシフトアッセイ法やDNA-フットプリント法などを用いて、転写制御タンパク質とDNAの結合領域を調べる。 未知の亜硝酸還元能の高い菌の検索、およびその菌のルーメン内での増殖を促進する条件についての検討というテーマでは、平成23年度のヤギ飼育試験で回収したサンプルをもとに、硝酸・亜硝酸の存在下で優勢となる微生物群集をメタゲノムおよびメタトランスクリプトーム解析し、給与飼料と宿主とルーメン微生物との関連性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品は既にあるものを利用する予定であり、その使途はない。平成24年度の申請額と交付額の差額分に開きがあるため、謝金、論文投稿料、英文校閲料を削減する。従って、平成24年度の予算は、主に消耗品費として使用する予定である。
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