2012 Fiscal Year Research-status Report
亜硝酸還元の増強とメタン生成の低減に向けたルーメン微生物の分子制御機構の解析
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23580377
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅沼 成人 明治大学, 農学部, 准教授 (50366902)
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Keywords | メタン / ルーメン微生物 / 亜硝酸還元 / 硝酸態窒素 / 野菜残渣 |
Research Abstract |
野菜残渣の飼料化をはかり、食品リサイクル率の向上と飼料コストの削減を狙うと同時に、反芻家畜からのメタン生成を低減させることを最終目的として、ルーメン内微生物の亜硝酸還元能を増強するための研究を行った。通常飼料または高硝酸飼料をヤギに給餌した。高硝酸飼料を給餌した場合には、いずれのヤギも亜硝酸中毒を引き起こしたことから、野菜残渣などの硝酸態窒素含量の高いものを飼料化するためには、亜硝酸還元を増強する必要があることが再確認された。ルーメン微生物混合系における硝酸還元酵素および亜硝酸還元酵素の活性は、高硝酸飼料の給餌時に大きく増加したことから、基質である硝酸や亜硝酸により、各酵素の合成が誘導されると考えられた。これらの飼料給与時のヤギのルーメン内微生物の存在数をリアルタイムPCR法を用いて測定した。メタン生成菌の数は低下したが、プロトゾアの数は大きく増加した。この結果は、高硝酸飼料給餌ヤギにおいてメタン生成が低下したことと一致した。しかし、プロトゾア数が増加する理由については現在のところ不明である。主要なルーメン細菌の数について調べたところ、Selenomonas属の菌数が増加した。本菌の中に亜硝酸還元能を持つものも存在するので、高硝酸給与時にルーメン内の亜硝酸濃度が高くなることで優勢になったと考えられる。一方、繊維分解菌および真菌の数は減少した。このことは、繊維消化率が低下したことと一致した。繊維消化率の低下を防ぐためには、亜硝酸還元能を増加させる必要があると考えられた。そのための手段として、ルーメン細菌の亜硝酸還元酵素の活性を増強することが考えられるので、昨年度に単離した未同定の亜硝酸還元菌の特性を調べた。更に、本菌の遺伝子構造を調べるため、本菌の染色体DNAを断片化し、ペアエンドライブラリーを作製した。エマルジョンPCRにより各断片を増幅し、パイロシークエンスを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
自己評価 達成度30 % 実験1の“亜硝酸還元酵素活性の制御機構の分子レベルでの解析”のテーマでは、昨年度に達成されなった亜硝酸還元酵素の単離精製を引き続き行った。2段階のカラムクロマトを行うことで、比活性を10倍近く増加させることはできたが、作業工程の進行に伴い、総活性値が大きく低下してしまった。カラムの種類、酵素の保護剤、界面活性剤の種類、緩衝液等を検討したが、大きな改善は見られなかった。このため、計画書に記載した本年度の計画を遂行することが出来なかった。 実験2の“未知の亜硝酸還元能の高い菌の検索、およびその菌のルーメン内での増殖を促進する条件についての検討” のテーマでは、高硝酸飼料または低硝酸飼料をヤギに給与し、ヤギの生理的反応およびルーメン液性状を調査し、これらのヤギにおけるルーメン微生物の生態分子レベルで解析し、給与飼料と宿主とルーメン微生物との関連性を明らかにすることが出来た。しかし、当該年度の目標であるトランスクリプトーム解析には至らなかった。コスト的な問題のため、パイロシークエンス法ではなく、クローンライブラリー法での解析を試みたが、解読した遺伝子の90%以上が16S rRNA遺伝子であり、機能遺伝子の解析には至らず、多数に存在する16S rRNA遺伝子を取り除く工夫が必要と思われた。 どちらの実験テーマにせよ、いくつかの成果は見られたが、一筋縄でいかないことが多かった。計画書の段階で、トライ&エラーに関する部分を過小に見積っていたと思われ、当初の計画が過密であったことが反省点である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1のテーマでは、亜硝酸酵素の精製を従来のカラムクロマト法だけでなく、遺伝子クローニング法で進めて行くことも検討する。これは大幅な計画変更を強いることになるが、時間も限られていることから、別方向からのアプローチも必要と思われるからである。このために、本年度はゲノムライブラリーの作成を行った。次年度には、それらを解読してドラフトシークエンスを作成し、アノテーション解析を行った後に、亜硝酸酵素の候補遺伝子を選抜する。それらのタンパク質を発現させ、亜硝酸酵素の活性を調べることで、亜硝酸還元酵素遺伝子の同定を行う予定である。ゲノムの解読により、それらの調節遺伝子の情報も得られることが予想され、遺伝子発現の調節機構の解析にも役立つと思われる。 実験2のテーマでは、ルーメン微生物のトランスクリプトーム解析により、硝酸・亜硝酸の存在下で増加する機能遺伝子を同定し、硝酸・亜硝酸の存在下で優勢に働く代謝経路の探索を行うことが目標となる。このためには、総RNAの中で多く割合を占める16S rRNAを除去することが課題となる。これまでに、市販の16S rRNA遺伝子除去キットを用いて試みたが、十分な結果が得られなかった。今後は、この方法を複数回繰り返し、除去効率を上げることを検討する。また、細菌の16SrRNAの保存領域に着目し、この部分に特異的な遺伝子プローブを作成し、結合するRNA遺伝子を除去する方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品は既にあるものを利用する予定であり、その使途はない。実験の進捗状況に遅れがあるため、当初の計画よりも実験作業が多くなる。このため、 謝金、論文投稿料、英文校閲料を削減し、主にとして消耗品費に予算を充てる予定である。
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[Journal Article] Responses in digestion, rumen fermentation and microbial populations to inhibition of methane formation by a halogenated methane analogue.2012
Author(s)
Mitsumori M, Shinkai T, Takenaka A, Enishi O, Higuchi K, Kobayashi Y, Nonaka I, Asanuma N, Denman SE, McSweeney CS.
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Journal Title
The British Journal of Nutrition
Volume: 108
Pages: 482-491
DOI
Peer Reviewed
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