2013 Fiscal Year Research-status Report
リポポリサッカライドによるウシ卵胞構成細胞の機能障害の解明とその起因分子の探索
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23580383
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
清水 隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90375113)
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Keywords | 内毒素 / 卵巣機能 / ステロイド産生 / 黄体化 |
Research Abstract |
本研究は、子宮内膜炎罹患牛の感染細菌から放出されるリポポリサッカライド(LPS)の卵胞機能への影響を解析するため、卵胞構成細胞である顆粒層細胞および卵胞膜細胞の黄体化におけるステロイド産生能に対するLPSの影響を解析した。本年度の研究では,これまでに本研究室で作出検討してきた排卵前の大卵胞から分離・採取した顆粒層細胞および卵胞膜細胞を用いた体外培養系の黄体化への分化誘導システムを用いて,LPSの影響を詳細に解析した。大卵胞から採取した顆粒層細胞を黄体化誘導培地で黄体化を誘導し,黄体化に伴って活発に分泌されるプロジェステロン濃度を経時的に測定した。LPSの処理は,黄体化誘導前,黄体化時期および黄体化誘導前から黄体化時期の3つのフェーズを設け,各フェーズのプロジェステロン濃度を調べたところ,いずれのフェーズにおいてLPSの影響は認められなかった。同様の実験を卵胞膜細胞を用いて行ったところ,黄体化誘導前から黄体化時期にかけての長期間のLPS処理が,プロジェステロン濃度を低下させることが明らかとなった。さらに,プロジェステロン産生に関与する酵素であるStARおよび3β-HSDの遺伝子発現およびタンパク質発現を解析したところ,LPSはこれら両因子の遺伝子発現には影響しないが,タンパク質発現を抑制することが明らかとなった。これらの結果から,LPSは顆粒層細胞の黄体化には影響しないが,卵胞膜細胞の黄体化を障害すること,さらにプロジェステロン産生関連因子のタンパク質発現を阻害することが明らかとなった。 以上のことから,LPSは卵胞発育のみならず,卵胞膜細胞の黄体化を阻害することにより,卵巣機能の障害を引き起こしている可能性を示唆しており,このことが妊娠黄体あるいは性周期中黄体の不形成を誘導しているのかもしれないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画に沿って研究が進められていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、子宮内膜炎のウシ卵巣内の各発育段階別の卵胞液中LPS濃度とE2およびP4濃度を測定することで、LPSに影響を受けやすい卵胞の発育ステージと卵胞の性状との関係性を明らかにした。さらに、各性周期に存在する卵胞や黄体を構成している顆粒層細胞、卵胞膜細胞や黄体化細胞に対するLPSの影響について、本研究室で作出した体外培養による実験モデルを用いて、細胞特異的なステロイドホルモン産生系に焦点をあてて解析し,LPSが卵胞発育過程および黄体化過程におけるステロイド産生を抑制することを明らかにした。今後は,卵胞に内包され次世代を作出するために重要な生殖細胞である卵子の成熟・受精におけるLPSの影響を解析することが必要であるという視点から重点的に研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
卵巣構成細胞の黄体形成過程におけるLPSの影響解析について,材料となるウシ卵巣の入手可能な数が少なくなっており,定期的に実験を遂行しているものの,実験の反復回数が少なく,卵胞構成細胞の黄体化誘導実験の遂行の遅れが生じており,年度を越えて実験を継続的に行うことが必要になった。 実験計画の進捗に合わせて,消耗品や試薬類を計画的に購入する。
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