2012 Fiscal Year Research-status Report
家禽の脚弱および破卵の防止に向けたビタミンD新規代謝の解明
Project/Area Number |
23580386
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
杉山 稔恵 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10272858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 宜永 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40253207)
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Keywords | ビタミンD / ニワトリ / 1α水酸化酵素 / 破卵 / カルシウム代謝 |
Research Abstract |
平成24年度では、以下の研究成果が得られた。 1.ビタミンD標的器官でのビタミンDの局所的代謝について 鶏のビタミンD標的器官である腎臓、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、直結腸、筋ならびに卵管卵殻腺部より全RNAを抽出し、各組織における1α水酸化酵素mRNAの相対発現量をリアルタイムPCRにより計測した。その結果、前年度で示した腎臓に加え、筋を除く各組織に1α水酸化酵素mRNAが発現していた。このことは、腎臓以外での標的器官でも活性型ビタミンDが産生されていることを示唆している。また、相対的発現量の相違から、これまでの報告の通り腎臓での活性型ビタミンDの産生が最も多いと考えられるが、次いで卵管卵殻腺部(腎臓に対して発現量0.63倍)、結腸(0.45倍)、回腸(0.45倍)、盲腸(0.40倍)、空腸(0.33倍)、十二指腸(0.25倍)で活性型ビタミンDを産生していることが推測された。 2.老齢産卵鶏におけるビタミンDの局所的代謝について 老齢鶏の腎臓ならびに十二指腸より全RNAを抽出し、半定量PCRにより1α水酸化酵素mRNAの発現量を産卵鶏のものと比較した。その結果、腎臓ならびに十二指腸における1α水酸化酵素の発現量は老齢鶏において減少していた。また、活性型ビタミンDを不活性化する25水酸化酵素の発現においては、老齢鶏でその発現量は増加した。これらのことは、加齢に伴い腎臓でのホルモンとして作用する活性型ビタミンD産生が減少するとともに、十二指腸などで産生される局所的な活性型ビタミンDの産生が減少しているものと考えられた。これらの活性型ビタミンD産生の減少が、加齢に伴う破卵発生の一要因になっているものと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の養鶏産業において、ブロイラーでは起立不能となる脚弱、産卵鶏では卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらには、ビタミンDの関与が深く関わっていることが推察されるが、体内でのビタミンD代謝の詳細は未だ明らかではない。 本研究では、従来示されている腎臓でのビタミンD代謝に加え、ビタミンD標的器官における1α水酸化酵素による活性型ビタミンDの局所的産生とそれによるカルシウム代謝調節機構を明らかにする。また、脚弱と卵殻薄化の発生とビタミンD代謝の関連を明らかにするとともに、標的器官での活性型ビタミンD産生を促進し、脚弱および破卵発生の防止を試みる。 本研究を達成する上で、平成24年度では、産卵鶏の腎臓以外のビタミンD標的組織において1α水酸化酵素が発現していることが明らかとなった。このことは、これまでに報告のない新規なビタミンD代謝を示すとともに、局所的に活性型ビタミンDが産生されていることを示唆した。また、この産生は加齢とともに減少することが示唆され、この新規なビタミンD代謝が破卵などの発生に関連していることが窺えた。これらの事実は、脚弱の一要因であるとも考えられ、本研究の目標を達成する上で重要な知見であり、本年度の目的をおおむね達成できたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は以下の研究の実施を計画している。 1.標的器官でのビタミンDの局所的代謝の解明 産卵鶏ならびにブロイラーより、腎臓、骨髄骨(産卵鶏)、腸管、脛骨近位端(ブロイラーのみ)ならびに卵管卵殻腺部(産卵鶏のみ)を採取し、in situ hybridaization法もしくは免疫組織化学法により1α水酸化酵素が発現している細胞を同定する。また、各組織の培養細胞を用いて、1α水酸化酵素の発現を調節するホルモンや因子などを解明する。 2.ビタミンD新規代謝に着目した破卵ならびに脚弱発生の防止 老齢鶏ならびに脚弱を発生したブロイラーの腎臓、腸管、脛骨近位端、骨髄骨ならびに卵管における1α水酸化酵素の相対的発現量を正常なものと比較し、局所的なビタミンD産生を含めたビタミンD代謝が破卵や脚弱の発生にどう関わっているか明らかにする。また、老齢鶏ならびに脚弱発症ブロイラーに25-hydroxyvitaminDを給与して局所的な活性型ビタミンD産生を増加させ、卵殻質の改善や脚弱の発生の防止を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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