2011 Fiscal Year Research-status Report
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23580393
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
田中 和明 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50345873)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ブタ / 遺伝子多型 / 脂肪蓄積 / 遺伝子マーカー / グレリン / レプチン受容体 |
Research Abstract |
ブタのグレリン/オベスタチンプレプロペプチド(GHRL)遺伝子の第3エキソンに存在する一塩基多型(c.358 C>A Ref. Seq. NM_213807) の遺伝子型を解析した。この多型はプレプロペプチドの112番目のアミノ酸をアスパラギンからトレオニンに置換させる。解析した個体は、ニホンイノシシ(香川県)64個体、リュウキュウイノシシ(西表島)12個体、中ヨークシャー(Y)22個体、大ヨークシャー(W)282個体、ランドレース(L)173個体、デュロック(D) 275個体、バークシャー(B)50個体、クラウンミニブタ(CM)52個体、およびLWD三元交配81個体である。各集団のC型対立遺伝子頻度は、ニホンイノシシ1.00、リュウキュウイノシシ0.38、Y種0.14、W種0.29、L種0.38、D種0.85、B種0.25、CM種0.00、三元交配0.51であった。このことから、D種においてC型対立遺伝の頻度が他の品種に比べて著しく高いことが確認された。遺伝子型を解析した集団の中で、個体の測定記録のあるW種、D種、および三元交配に対して、遺伝子型と、背脂肪厚、ロース芯面積、一日平均増体量および筋肉内脂肪量の相関解析を行った。W種ではCC型の個体は、CA型およびAA型の個体に比べて背脂肪が有意(p<0.05)に小さかった。W種の体重90kg時の背脂肪厚は、CC型1.30±0.07 cm(最小二乗平均±SE)、CA型1.45±0.03 cm、AA型1.48±0.03 cmであった。W種では他の形質には遺伝子型間の差は検出されなかった。D種の背脂肪厚は、CC型1.62±0.02 cm、CA型1.68±0.03 cm、AA型1.73±0.13 cmとなり、統計的に有意な差ではないがCC型が背脂肪厚の値が最も小さかった。しかし、三元交配では、上記の効果は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA試料の収集が順調に進み、当初予定していたデユロック種だけではなく、大ヨークシャー種および三元交配でも遺伝子型と形質との相関解析を実施することが出来た。ゆえに実験の実施状況としては順調に進めることが出来ている。ランドレース種についても、形質測定が行われた個体の組織の収集が完了しており、DNA抽出後に遺伝子型の判定が実施可能である。これらの試料のコレクションにより新しい遺伝子多型に対しても迅速に形質との相関解析を実行できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年末に、ポーランドのランドレース種を用いたGHRL遺伝子のc.358 C>A多型と、肉質形質との相関解析の結果が別の研究グループから発表された(Meat Science 89巻 p514-518)。研究実施概要で述べたように、GHRL遺伝子のc.358 C>A多型は、本研究においても重要な位置を占めており、成果の公表に向けて準備を進める段階にあった。肉質のような量的形質では、遺伝子プールの異なる複数の集団を用いて遺伝子多型と形質との相関解析を行うことが望ましいことから、本研究の学術的価値が失われるものではない。また、これによって本研究の研究計画に変更を加える必要はない。しかし、同時に本研究の結果を速やかに公表する必要に迫られている。本研究で遺伝子型判定を行ったランドレース種について形質との相関解析を行った上で、件の既報との比較を行い、学術論文の作成を行う。また今年度は、GHRLの解析で用いた形質測定値の存在するDNA試料を用いてレプチン受容体遺伝子のc.2002 C>T多型を解析し、形質との相関を解析する。さらに、グレリンの受容体である成長ホルモン放出促進因子受容体(GHSR)遺伝子の配列を複数のブタ品種とイノシシについて詳細に決定し多型の分布を明らかにする。有効な変異に対しては相関解析を行う。研究が順調に進んだ場合には、脂肪酸受容体の一つであるGPR120遺伝子についても解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に従って、ブタの遺伝子解析を行っていく。平成23年度の直接経費のうち27854円が次年度使用額となっている。これは、試薬の発注時に発売元の割引キャンペーンが行われていたため通常納入価との間で生じた差額である。ゆえに研究内容の変更によって次年度使用額が生じたわけではない。ブタの試料が、当初の計画以上に順調に収集できているので、本年度に請求する1200000円に27854円にを加えた研究費で、可能なかぎり多くの検体を解析する。
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