2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580393
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
田中 和明 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50345873)
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Keywords | ブタ / 遺伝子多型マーカー / グレリン遺伝子 / グレリン受容体遺伝子 / レプチン受容体遺伝子 / GPR120遺伝子 / 経済形質 / 脂肪蓄積 |
Research Abstract |
ブタGHRL遺伝子のc.358C>A多型と、一日平均増体重、背脂肪厚、筋肉内脂肪量および、ロース断面積との相関を、デュロック(D)種、ランドレース(L)種、大ヨークシャー(W)種、および三元交配ブタを対象に解析した。いくつかの形質に対して弱い相関が認められたものの品種間で効果が一定していなかった。 次に、グレリン受容体(GHSR)遺伝子とGPR120遺伝子を対象としてD種、L種、W種、中ヨークシャー(Y)種、バークシャー(B)種、梅山(M)種、イベリア種、マンガリッツァ種、ニホンイノシシおよび、リュウキュウイノシシからなる合計26個体の配列を決定し多型の有無を探索した。GHSR遺伝子では、転写開始点から約200塩基上流から、エクソン1とイントロン1を含む約1.5kbの領域を決定した。グレリンとの結合性を持つGHSR1aをコードするエクソン1領域に遺伝子多型は認められなかった。しかし、スプライシングバリアントであるGHSR1bでは翻訳をうけるイントロン1にA→Gの1塩基置換を発見した。このSNPは、289個のアミノ酸で構成されるGHSR1bタンパク質の281番目のアミノ酸をヒスチジンからアルギニンに置換する。また複数の家畜ブタ品種に存在していた。加えて、転写開始点より5´側上流側に8塩基[TCTTCAGC]の挿入欠失多型も発見した。GPR120遺伝子では、アミノ酸をコードする3つのエクソンと、それぞれに隣接する前後約300塩基の配列を決定した。アミノ酸置換を伴う1か所のSNPがリュウキュウイノシシのみから見つかった。非コードSNPはプロモータ領域を含めて4か所見つかった。 さらに、ブタレプチン容体のExon14上のc.2002 C>T(g.66341 C>T)に対して、ミスマッチプライマーを用いた点変異導入PCR法と制限酵素ApeKIを用いた簡便な遺伝子型判定方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度予定していた遺伝子型判定は予定通り完了することができた。また、研究基盤となる形質値測定値を持つL種のDNA試料の数を約300個体まで増やすことができた。 新規SNPの探索では、GHSR遺伝子に関しては、形質との相関解析の新たな対象となる、GHSR1bタンパク質にアミノ酸置換を生じさせるp.281H>R多型を発見することができた。さらに、このSNPに対する簡便な遺伝子型判定方法も開発も完了した。 加えて従来は、遺伝子型判定に高額の装置を必要としていたレプチン受容体LEPR c.2002 C>T多型(g.66341 C>T)に対する、極めて安価な遺伝子型判定方法が確立できたことから、研究期間内に解析に加えることが可能となった。 GHRLのc.358 C>A多型に関する研究では、当初期待した形質との強い相関は認められないことが示された。しかし、この遺伝子が存在するブタ13番染色体の領域には、肉質に関わるQTLがマップされていることから、潜在的な候補遺伝子として注目されている。研究では、D種、L種、W種の純粋種それぞれ200個体以上を用いた相関解析を実施しており、学術的価値は十分に高いと考えられる。統計モデルによる検討に改良を加えれば学術論文を投稿できる段階に到達した。
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Strategy for Future Research Activity |
グレリン遺伝子(GHRL)のc.358 C>A多型と筋肉内脂肪量など肉質および増体に関する相関解析について複数の統計モデルを比較し効果を検証する。また、本研究で発見したGHSR1bスプライシングバリアントに対して281番目のアミノ酸をヒスチジンからアルギニンに置換させるグレリン受容体(GHSR)遺伝子のg.119917909A>G(NC_010455を基準とする)多型を対象に遺伝子型判定を実施する。これにより対立遺伝子頻度を明らかにし、形質測定値を持つサンプル集団内で希少対立遺伝子の対立遺伝子頻度が0.1以上であった場合には、形質との相関解析を行う。また、レプチン受容体のExon14上のc.2002 C>T多型を対象にデュロック種、ランドレース種、大ヨークシャー種および、LW×D三元交配ブタの遺伝子型判定および形質との相関解析を実施し、既報の表現型への効果が、全ての品種間で一定しているかどうかを検証する。これによって、レプチン受容体c.2002 C>T多型の遺伝子マーカーとしての有用性を確認する。GPR120遺伝子に対しては、多型検索の範囲をさらに5‘側に広げ転写制御領域の多型について詳細に検討を行う。形質との相関解析に有効な多型が発見できれば、速やかに相関解析も実施する。さらに、形質との相関解析では、複数の遺伝子の組み合わせ効果も考慮する。以上の結果を総合して、ブタの改良に貢献できる遺伝子マーカーの開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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