2011 Fiscal Year Research-status Report
絶滅動物の体細胞核移植によるクローン個体作製に関する基礎研究
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23580395
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
加藤 博己 近畿大学, 先端技術総合研究所, 准教授 (60330320)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | クローン動物 / 絶滅動物 / 異種間核移植 |
Research Abstract |
平成23年度には、まず、マンモスの組織からの効率の良い細胞核の回収方法を開発した。これまでの研究から、マンモスの皮膚および筋肉からの細胞核の回収方法は確立されていたが、マンモスの組織の中でもより核DNAの保存状態が良い骨髄組織に、皮膚および筋肉から細胞核を回収する方法を適用してもその回収効率は低く、実験に供する数を確保できなかった。このため、ウシの凍結骨髄組織を材料とした実験によって、骨髄組織のホモジナイズ前にコラゲナーゼTypeIVで60分間処理することによって、有意に高い(P<0.05)細胞核の回収方法の開発に成功した。この方法をマンモス骨髄組織へ適用することによって、以前よりも多くの細胞核の回収がなされるようになり、実験へマンモスの骨髄組織由来の体細胞核を供せるようになった。また、ウシ骨髄組織から回収された細胞核を用いて、核移植前の体細胞核に対するトリプシン等酵素による部分的消化処理、Digitonin等化学薬品による部分的分解処理の影響を、マウス除核未受精卵子を用いて解析した。さらに、現在所有するマンモスの組織は既に変性している可能性が考えられるため、新たなマンモス組織の入手の可能性を探るため、ロシア連邦サハ共和国ヤクーツク市にてサハ共和国科学アカデミーの主催で行われた「古生物学サンプルの研究セミナー」へ参加した。2010年にシベリアで新たに発見されたユカマンモスのサンプルの入手のための協議をサハ共和国科学アカデミーと行い、新たなマンモス組織の入手について合意した。また、申請時に平成24年度以降の実験計画としていた現生のゾウ由来の培養細胞の入手についても、平成23年度中に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究の達成度は80%と考える。その理由としては、平成23年度には古生物の体細胞核移植における核の前処理条件の検討を行う予定であったが、実験に供するための体細胞核の確保に時間がかかり、骨髄組織からの体細胞核の回収方法の開発を行う必要が生じ、やや研究の進行が遅れた。骨髄組織からの体細胞核の回収方法の開発には成功したため、平成24年度以降の研究には実験に供する体細胞核の十分な確保が可能になった。さらに、研究計画ではウサギ卵子を使用して体細胞核移植を行う予定であったが、除核未受精卵子を供するウサギの確保が行えなかったため、マウス卵子で代用した。これに対し、申請時には平成24年度以降の実験計画としていた現生のゾウ由来の培養細胞については1年前倒しする形で平成23年度中に入手し、培養を開始した。新たなマンモス組織の入手については、ロシア連邦サハ共和国ヤクーツク市にてサハ共和国科学アカデミーの主催で行われた「古生物学サンプルの研究セミナー」へ参加し、2010年にシベリアで新たに発見されたユカマンモスのサンプルの入手のための協議をサハ共和国科学アカデミーと行い、新たなマンモス組織の入手について合意に至り、大いに進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成24年度中に平成23年度で未達であったマンモスの核移植における適切なレシピエント細胞質の選択についてその結果を得る。さらに、申請時の計画に従って、現生のゾウ由来培養体細胞と先の実験において適切と判断されたレシピエント細胞質を用いた異種間核移植胚の生存性の向上に関する研究を行い、ユニバーサルレシピエント細胞質技術の確立と、作製された再構築胚からのゾウハイブリッド細胞株の樹立を目指した研究を行っていく。また、現有のマンモス組織および平成24年度中に入手予定である新たなマンモスの組織を用いても同様の研究を継続し、マンモスハイブリッド培養細胞株の樹立に関する研究を継続して行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度には、主に旅費が当初予定額よりも少なく済んだため、直接経費のうち13,488円が使用されずに残った。このため、平成24年度の直接経費は、平成24年度直接経費請求額1,300,000円に平成23年度の残額13,488円を加えた1,313,488円を使用する。その内訳は、物品費として900,488円を使用し、旅費として363,000円を、人件費・謝金として50,000円を使用する予定である。
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