2011 Fiscal Year Research-status Report
ウシ体細胞クローンに用いるドナー細胞の簡易保存とくに凍結乾燥保存法の開発
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23580396
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
佐伯 和弘 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (10298937)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 組織凍結 / 凍結乾燥 / トレハロース / 体細胞クローン |
Research Abstract |
23年度は、1)種々の組織の簡易凍結保存と融解後の生存性、2)培養細胞へのトレハロース導入方法の検討、の2点を実施した。 1)種々の組織の簡易凍結保存と融解後の生存性 屠殺直後のウシの種々の組織を1~2 gをクライオチューブに入れ、-20℃、-80℃の冷凍庫およびLN2中に投入し、6ヶ月間保存した。組織採取直後、保存1週間、1月、3月および6月目に融解し培養細胞が得られるかどうか観察した。その結果、耳介、肺および筋間脂肪では、-80℃で保存すると6ヶ月後であっても培養細胞が得られることが分かった。-20℃やLN2で保存すると、それら組織であっても1週間程度しか生存細胞は保存できなかった。以上より、耳介、肺および筋間脂肪が簡易冷凍保存に適した細胞と思われたが、今後は入手が容易な耳介由来の細胞を利用しようと考えている。2)培養細胞へのトレハロース導入方法の検討 まず細胞内薬液半自動注入装置FemtotipsIIの注入効率を調べるため、PI溶液を培養した卵丘細胞に注入した。915個の卵丘細胞にPI溶液を注入したところ、そのうち57 %(521個)でPIシグナルを観察できた。注入に時間もかかり、予想していたより効率が悪く今後の凍結乾燥に十分な細胞が得られないことが分かった。このためトレハロースを細胞内導入する方法としてdigitoninによる膜透過処理を試みた。5~30 μg/ml のdigitonin処理しPI溶液に浸漬し、CaCl2で膜修復処理をした後、Hoechst33342で染色して細胞内へ導入効率を観察した。その結果、10-15 μg/mlのdigitonin処理でPIの導入およびその後のCaCl2での膜修復がなされることが分かった。またトレハロース導入も試みたが今のところ導入細胞での耐凍性の向上は確認できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の組織凍結を行い、耳介、肺および筋間脂肪が耐凍性のある組織で、-80℃が最も適した保存温度であることを明らかにできた。また、トレハロースの導入に有効と考えたFemtotipsIIによる細胞内直接注入法は技術者の高度なスキルを要することから、誰にでも大量に生存性を減ずることなく実施することが困難であった。一方、digitonin処理は最適な濃度などが比較的短時間に設定できた。実際にトレハロースの導入も試みたが、用いた細胞が卵丘細胞であり、導入の条件設定も不十分だったので、その後の耐凍性の確認は今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
用いる細胞は耐凍能が高く、最も入手が容易な耳介細胞としたい。この細胞を利用して今後トレハロース導入に必要なdigitonin処理条件を精査し、凍結融解後の細胞の生存性を損なうこと無く、確実にトレハロースが導入できる系を確立したい。また、細胞の染色体の断片化をコメットアッセイなどで評価し、細胞の生存性がさほど高くなくても染色体に異常が少なければ、細胞核を直接除核卵子に注入して、クローン胚を作成することを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様、試薬やプラスティック器具類の消耗品に1,400千円、国内学会の旅費として62千円、実験補助や英文校正など謝金に252千円、その他分析依頼に50千円を予定している。
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