2012 Fiscal Year Research-status Report
ウシ体細胞クローンに用いるドナー細胞の簡易保存とくに凍結乾燥保存法の開発
Project/Area Number |
23580396
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
佐伯 和弘 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (10298937)
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Keywords | 組織凍結 / 凍結乾燥 / トレハロース / digitonin / 体細胞クローン |
Research Abstract |
昨年度は簡易凍結により耳介、肺および筋間脂肪が簡易冷凍保存に適した細胞との結果が得られたため、本年度は和歌山県畜産試験場にて飼育されている和牛メス子牛の耳介を一部を採取し、細切したのち初代培養を行い3継代したものをセルバンカーにて凍結保存し実験に供した。 培養細胞へのトレハロース導入では、昨年度細胞内薬液半自動注入装置FemtotipsIIを用いて薬剤の注入を行ったが注入に極めて多大な時間を要し非効率的であったのでdigitoninによる膜透過処理によるトレハロース導入を行った。digitonin処理後CaCl2でのリシーリングにより細胞を生存させようとしたが、トレハロースの導入はできたものの生存率は極めて低かった。このため今年度は耳介由来繊維芽細胞にdigitoninによるによる膜透過処理を行いトレハロース導入し、細胞核の正常性を確認し、核DNAの断片化が少ない条件設定を行った。これら細胞は生存性はないものの核が正常であれば核移植によりクローン胚が生産できると考えた。digitonin濃度10, 50, 100μg/mlのNIMメディウムに細胞を導入し氷温で2分間処理した。細胞を洗浄し、0.6MトレハロースNIMメディウムに導入し-80℃で凍結した。細胞は融解後Comet assayにより細胞核DNAの断片化を調べた。陽性対照区、陰性対照区は、それぞれ、処理しない培養細胞と過酸化水素水にて処理した細胞を用いた。その結果、digitonin濃度10μg/mlでトレハロースを導入するとコメットテールが最も短く陽性対照区と同程度であった。今後、これら細胞を注入法でウシ除核卵子に注入してクローン胚を作製する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トレハロースを導入して細胞の生存性を維持したままの凍結保存は困難であったが、細胞核のDNAの断片化が最小限のトレハロース導入条件が設定できた。これら細胞を凍結乾燥し、クローン胚を作製して胚の発育率を検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り核DNAの断片化が少ないトレハロース導入条件が設定できた。細胞の凍結乾燥の条件を検討し、復水後の細胞核のコメットアッセイを行い再度DNAの断片化を調べるとともに、これら細胞の注入法による核移植胚の作製を検討したい。この際、細胞をそのまま注入する方法と核のみを分離し注入する方法、さらには注入法ではなく、細胞を電気融合法で導入できないかについても検討を加えたい。作製したクローン胚は、胚発生は勿論、核の断片化や染色体の状態についても以上がないかどうか検討を加えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬やプラスティック器具類の消耗品に950千円、国内学会の旅費として60千円、実験補助や英文校正など謝金に252千円、その他として50千円を予定している。
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