2011 Fiscal Year Research-status Report
プリン塩基代謝がウシ胚発生に及ぼす影響とそのメカニズムの解明
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23580398
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
木村 康二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 家畜飼養技術研究領域, 主任研究員 (50355070)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ウシ / 胚 / 代謝 / プリン誘導体 |
Research Abstract |
ウシ初期発生胚の培養法(低グルコース・低酸素等)は非常に特殊である。ウシ胚培養系の改善のため、さまざまな物質のウシ胚における代謝が明らかとなっているが、核酸の主要構成成分である塩基については未解明な点が多い。本研究ではプリン塩基に注目し、ウシ胚におけるこの物質代謝を明らかにすることでウシ胚培養系の改良に新規の情報をもたらすとともに、プリン塩基のウシ胚発生に及ぼす影響のメカニズムについて検討する。本年度は1.ウシ胚培養液へのプリン塩基の添加がその発生に及ぼす影響、2.プリン塩基サルベージ経路の遮断がウシ胚発生に及ぼす影響の検討を行った。ウシ1細胞期から8細胞期胚にかけてアデニンまたはヒポキサンチン存在下で培養を行ったところ、アデニンでは1mM添加で有意に発生を抑制したがヒポキサンチンでは発生の抑制はみられなかった。8細胞期杯から胚盤胞期胚の発生培地に添加したところ、アデニンでは1mMで顕著な発生の抑制がみられたが、ヒポキサンチンでは5mMまで発生の抑制はみられなかった。次に胚発生に影響を及ぼさなかった1mMのヒポキサンチン存在下でそのサルベージ酵素ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼの阻害剤(6-メルカプトプリン)を添加したところ、1-8細胞期胚、8細胞期胚ー胚盤胞期胚の両発生において濃度依存的に発生を抑制した。以上の結果から、プリン誘導体の胚培養環境への添加は胚発生を抑制し、それはその代謝産物ではなくプリン誘導体自体が胚発生へ直接影響する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では23年度に1.ウシ胚培養液へのプリン塩基の添加がその発生に及ぼす影響、2.プリン塩基サルベージ経路の遮断がウシ胚発生に及ぼす影響の検討について実験を行うこととなっており、ほぼ計画通り実験が遂行した。しかしながら2.においてアデニンのサルベージ酵素の阻害実験を行うことができなかった。その理由としてその酵素の阻害剤の報告が少なく、文献検索の結果、1つの物質が有効であることが明らかとなったが、市販が中止されており入手出来なかった。その後の調査で試薬を合成することが可能となり、24年度にはその実験を追加して行うことにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は前年度積み残したアデニンサルベージ酵素阻害のウシ胚発生に与える影響を行うとともに、当初予定していたプリンde novo 生合成抑制がウシ胚発生に及ぼす影響の検討とウシ各発育ステージでのプリン塩基サルベージ経路の関わる酵素量(活性)の測定を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に試薬合成の必要が急遽発生し、その実験を平成24年度に行う必要が生じたため研究費の一部を繰り越した。平成24年度はその繰り越した予算を元に試薬合成を行い、平成23年度行えなかった実験を行うとともに、当初通りの研究を同時に行う。試薬合成に持ち越し分30万円を使用し、平成24年度配分額のうち、40万円をウシ卵巣採材経費、20万円を実験補助員の賃金、20万円を学会発表のための旅費、60万円を一般試薬・消耗品費に用いる予定である。
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