2011 Fiscal Year Research-status Report
乳癌原因遺伝子BRCA2の変異を基点としたゲノム不安定化による腫瘍発症機構の解析
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23580399
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森松 正美 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (70241370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 和彦 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (30550488)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 乳癌 / 乳腺腫瘍 / BRCA2 / DNA損傷 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1.イヌの乳腺腫瘍の発症機構について、遺伝性乳癌原因遺伝子BRCA2の変異を基点とするゲノム不安定化に焦点をあてて、腫瘍細胞において特定の遺伝子にコピー数の変化が認められるかどうかを調べること、2.変異が予想されるc-MYC(MYC)等の癌遺伝子やいくつかの癌抑制遺伝子、ゲノム安定化遺伝子の機能解析を通じてイヌの乳腺腫瘍発症機構の解明をめざすこと、とした。イヌのMYCについて、cDNAクローニングを行って全長配列を獲得し、レトロウイルスベクターに組み換えて遺伝子導入による解析方法を確立した。さらに、MYC等を対象にイヌ特有の機能に関与する構造の予測を行うため、イヌとヒトのMYCでアミノ酸配列を比較するとともに、SWISS-PROTやUCSF-chimera等のアプリケーションを利用した構造モデリングを行って解析した。それにより、イヌMYCの立体構造上の特徴を明らかにし、特に分子表面に存在するアミノ酸の位置情報から、イヌc-MYCで特有の機能を発現する可能性のあるアミノ酸の候補を推定した。液体窒素に凍結保存してあった乳腺腫瘍細胞株について、それらの保存状況を確認するためにすべての株を解凍、培養したところ、いずれも良好に増殖したので、再度、新鮮な凍結ストックを作製した。これらを研究分担者との間でやりとりし、保存した。さらに、いくつかの乳腺腫瘍組織や正常乳腺組織といった材料を分担者との間で共有し、これらのいくつかについては、ゲノムDNAやRNAの分離を行った。ゲノムコピー数の変化を調べるためにリアルタイムPCRの装置を購入するとともに、単一コピー遺伝子をイヌゲノムのデータベースで検索し、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)を候補としてリアルタイムPCRによる測定条件を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.イヌ乳腺腫瘍における癌関連遺伝子重複の解析および発現の解析 定量的PCR法の確立とコピー数解析について、本年度は、分担者と協力して細胞等材料の準備やゲノムDNAの抽出を行うこと、単一遺伝子を選んで測定方法を確立することを目的としていたが、ほぼ、これらの目的を達成できたと考えている。2.イヌMYC等の癌遺伝子の機能解析 候補遺伝子であるMYC等を対象にイヌ特有の機能に関与する構造の予測、すなわち、アミノ酸配列およびin silicoでの立体構造予測を行う計画であったが、ほぼ、予定どおりに進んだ。また、イヌMYCのクローニングおよび配列の決定も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.イヌ乳腺腫瘍における癌関連遺伝子重複の解析および発現の解析 平成23年度に引き続き、定量的PCR法の確立とコピー数解析を行う。乳腺腫瘍組織の収集を継続し、これらを材料として解析する。今年度は発現量の解析も行う。ヒトのMYC等は、転座等によって遺伝子発現が亢進する結果、癌遺伝子として作用する事例も知られている。上記で調べたコピー数増加とは関係しない転写活性化が起こっている可能性を検討する。TaqMan法を用いた常法により、定量的PCRで測定する。2.イヌMYC等の癌遺伝子の機能解析 前年度に実施した候補遺伝子におけるイヌ特有の機能に関与する構造の予測を元に、機能解析を行う。 今年度は細胞レベルでの解析を主体として研究し、in vitroにおける増殖能(経時的に培養細胞を回収して計測して解析)やトランスフォーメーション能(コローニー形成等)を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じた状況については、物品費、旅費、人件費・謝金、その他、のいずれも年度当初に予定していた額を下回る結果となった。(1)物品費については、古くて使用できないと考えていた高価な試薬(ウシ胎子血清等)が実際には使用できたなどの理由により節約できたことによる。(2)旅費については、参加予定だった研究集会について直前に他の業務が入って参加不可となったことやインターネット会議システムを利用して分担者と連絡をとったために直接面会して研究打合せを行う必要がなかったことによる。(3)人件費・謝金については、依頼を予定していた業務を代表者と分担者が行ったことによる。(4)その他については、研究材料の分担者とのやりとり等に際して、予定していたよりも送料が安くすんだり、他の研究の材料といっしょに輸送したために節約できたこと等による。次年度の使用計画については、上記で生じた残額を物品費の購入および旅費に使用したいと考えている。癌関連遺伝子重複の解析について今年度は標準とする単一遺伝子の解析にとどまったが、次年度は重複遺伝子を調べる数を当初の予定よりも増やすこととし、そのための材料購入費にあてたい。また、今年度は分担者と直接会って研究の打合せを行う予定であり、そのための旅費が必要となる。そのたの研究経費については、当初の予定どおりに使用する計画である。
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Research Products
(3 results)