2011 Fiscal Year Research-status Report
旋毛虫分泌タンパク質による免疫抑制作用の免疫学的および構造生物学的解析
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23580400
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
長野 功 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40283296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌足 雄司 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 助教 (70342772)
呉 志良 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90313874)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 旋毛虫 / 免疫抑制 / 組換えタンパク質 / 立体構造解析 / 分泌タンパク質 |
Research Abstract |
旋毛虫感染により自己免疫性疾患の発症は強力に抑制される。今回の研究では、免疫抑制に重要な役割を担っていると考えられる旋毛虫が分泌する53kDaタンパク質について、免疫機能に関する生理活性作用の解析と構造生物学的解析との二つの異なった面から検討する。免疫抑制機構の解析 今年度においては、免疫反応に重要な役割を果たす転写因子であるNF-κBおよびAP-1の転写活性に対する53kDaタンパク質の影響を解析した。すなわち、ルシフェラーゼアッセイ用プラスミドベクターのプロモーター上位にNF-κBあるいはAP-1の結合配列を挿入し、HEK293細胞にこれらのベクターを導入した。53kDaタンパク質は、発現ベクターに53kDa遺伝子を組込み、培養細胞に導入し、その後NF-κB、およびAP-1の転写活性に対する53kDaタンパク質の影響をルシフェラーゼアッセイにより検討した。その結果、53kDaタンパク質遺伝子のHEK293細胞への導入量に比例して、TNF-αで刺激した場合にNF-κBに対する転写活性はコントロール群と比べて大きく上昇し、AP-1もPMA刺激により上昇が認められた。構造生物学的解析 今年度においては、53kDaタンパク質の構造解析に必要な大腸菌による組換えタンパク質の作成法について検討を行った。ベクターとしてpCold-GSTベクター、発現用の大腸菌としてSHuffle express株(NEB社)を用いた発現系を構築した。その結果、この発現系では53kDaタンパク質のほとんどが可溶化して発現され、構造解析に十分な量、質の組換えタンパク質を得ることが可能となった。また、組換えタンパク質を一次元NMR法および円二色性分光法で確認したところ、正確な高次構造を有している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫抑制機構の解析 今回の研究目的は培養細胞を用いて旋毛虫が分泌する53kDaタンパク質の免疫抑制機構を検討することである。転写因子NF-κB、IRF3およびAP-1は免疫反応において中心的役割を果たす転写因子である。今年度において、53kDaタンパク質がNF-κB、およびAP-1の転写活性におよぼす影響を検討した。次年度以降は、培養細胞に旋毛虫由来の53kDaのタンパク質を投与した場合の、各種サイトカインの発現について検討を行う予定となっており、今年度はほぼ予定通りの研究成果を達成することができた。構造生物学的解析 タンパク質の生理活性機能はその3次元的な構造(立体構造)に依存している。タンパク質の立体構造を解析することにより、どのようなメカニズムによりそのタンパク質が活性を示すのか、また活性部位を実際に目で見て解析することが可能である。構造決定法にはX線結晶構造解析とNMR法があるが、今回検討を行うタンパク質は分子量が53kDaと大きく、X線結晶構造解析を行う必要がある。しかし、立体構造を解析するにはタンパク質の純度が高く、高濃度で、ある程度の量が必要である。今回の研究の目標は、まず解析できる量、質の組換えタンパク質を大腸菌で作成することであるが、今年度においては可溶性で純度の高い組換えタンパク質を精製することができ、ほぼ予定通りの研究成果を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫抑制機構の解析 53kDaタンパク質を免疫細胞由来の培養細胞に投与して、その影響を細胞内の免疫関連タンパク質の発現で検討する。すなわち、まずヒトあるいはマウス由来のリンパ系培養細胞およびマクロファージ系培養細胞を用い、発現ベクターに53kDa遺伝子を組込み、培養細胞に導入、または組換えタンパク質をそのまま培養液中に加える。細胞を培養後、LPS等の刺激による培養上清中のサイトカインの発現量をELISAで測定する。同時に、リアルタイムPCRを用いて上記サイトカインおよび免疫関連遺伝子群の発現量を調べる。 構造生物学的解析 今年度以降においては、まず、安定同位体標識したタンパク質を用いNMR法を行う。当タンパク質は分子量が大きくNMR法では解析不可能である可能性があるため、X線結晶構造解析による構造解析も同時に進め、三次構造を決定する。また構造解析と並行して、プルダウンアッセイにより53kDaのタンパク質と相互作用するタンパク質を探索する。こうして得られた候補タンパク質との相互作用は、表面プラズモンレゾナンス(SPR)法により確認し、結合定数を算出する。また、NMR化学シフト摂動法による相互作用部位の同定を行い、さらに変異体の作製により相互作用部位の確認を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫機能の解析に必要な消耗品経費は、組織培養用試薬・器具、ルシフェラーゼアッセイ用試薬・器具の購入費である。また、サイトカイン発現定量用にリアルタイムPCR用試薬・器具およびサイトカインELISAキットの購入費が必要である。組換えタンパク質発現・精製用に必要な消耗品経費は、タンパク質濃縮用フィルター、アフィニティークロマトグラフィー用試薬・器具、ゲルろ過・イオンクロマトグラフィー用試薬・器具、およびウエスタンブロット用試薬の購入費である。X線結晶構造解析実験用として、結晶化スクリーニング用プレート等が必要である。NMR実験用としては、一次元NMR用試薬・器具費が必要である。また、NMR用ラベル化合物、NMRミクロ試料管等も必要である。タンパク質の相互作用解析にはSPR固定化試薬、SPRセンサーチップ等が必要である。また、旅費として成果発表の学会旅費、その他、論文の投稿料および校閲費が必要である。
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