2011 Fiscal Year Research-status Report
暑熱ストレス負荷時におけるニワトリの摂食量低下メカニズムの解明
Project/Area Number |
23580404
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河上 眞一 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (50343984)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊後 貴嗣 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (40325361)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 摂食行動 / 暑熱 / ニワトリ / 神経伝達物質 / 視床下部 |
Research Abstract |
地球温暖化による気温の上昇は「暑熱ストレス」として家畜・家禽の摂食行動を抑制し、その生産性に悪影響を及ぼす。外界の温度情報は視床下部に存在する視索前野(POA)に統合されることが判明していることから、暑熱ストレスにおいてもPOAに局在する神経細胞からの情報が、摂食行動を制御する視床下部の各神経核、例えば弓状核(ARC)や室傍核(PVN)に伝達されることが想定されるが、それらを証明する知見は現状では存在しない。よって本研究は、暑熱ストレス負荷時におけるニワトリの摂食行動抑制の脳内メカニズムの一端を解明することを目的とした。当該年度は暑熱環境下でニワトリの摂食抑制に関与する神経伝達物質を同定することを目的として、神経伝達物質の阻害剤(アンタゴニスト)の脳室内投与による摂食量減少の緩和効果について検討した。 試験には卵用種雄ヒナを用い、自由採食、24時間点灯、環境温度30℃恒温条件下で群飼したのち、4日齢時に単飼を行った。3時間絶食条件の5日齢ヒナを環境温度40℃の別部屋へ移動して暑熱ストレスを負荷したのち、Davisらの方法(Physiol. Behav. 22:693-695. 1979)を用いてHS014 (α-MSHアンタゴニスト)、astressin (CRHアンタゴニスト)またはManning Compound(AVTアンタゴニスト)を側脳室内へ投与した。測定項目は摂食量、飲水量、直腸温とし、投与後0.5、1、2、4時間に測定を行った。 暑熱ストレス負荷により減少した摂食量はastressinおよびManning Compoundの投与により増加したが、HS014の投与により回復しなかった。以上の結果より、暑熱ストレスによる摂食抑制にはARCに局在するα-MSHは関与せず、PVNに局在するCRHおよびAVTの役割が重要であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の初年度である当該年度の実施予定課題は「神経伝達物質のアンタゴニストの脳室内投与による摂食量減少の緩和効果」であり、暑熱環境下でのニワトリの脳室内にストレス・摂食抑制に関与する神経伝達物質のアンタゴニストを投与する実験を実施する計画であったが、当初の予定通り、HS014 (α-MSHアンタゴニスト)、astressin (CRHアンタゴニスト)およびManning Compound(AVTアンタゴニスト)の3種類については投与試験が既に完了しており、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究成果により、暑熱ストレスによる摂食抑制にはARCに局在するα-MSHは関与せず、PVNに局在するCRHおよびAVTの役割が重要であることが示された。これらの事実は、POAに統合された暑熱ストレス情報が視床下部内においてARCではなくPVNに伝達されていることを強く示唆しており、翌年度の研究計画である「視床下部における摂食関連物質の遺伝子発現」を計画通りに実施することで、視床下部内における摂食抑制メカニズムについてより詳細な検討が可能になると考えられる。 また、翌年度の研究計画では当初、脳室内投与は計画されていなかったが、当該年度の研究成果でアンタゴニスト投与による摂食量減少の顕著な緩和効果が観察されたため、暑熱環境下でのアンタゴニスト投与による遺伝子発現変化についても解析を追加することとする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度はアンタゴニストの脳室内投与試験が順調に実施され、購入したアンタゴニストの量が当初予想よりも少なかったため、翌年度に使用する研究費が生じたと考えられる。翌年度は暑熱環境下でのアンタゴニスト投与による遺伝子発現変化についても解析を追加することを新たに計画しており、これらの研究費は追加試験に使用するアンタゴニストの購入費用に充てる予定である。
|