2012 Fiscal Year Research-status Report
暑熱ストレス負荷時におけるニワトリの摂食量低下メカニズムの解明
Project/Area Number |
23580404
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河上 眞一 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (50343984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊後 貴嗣 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (40325361)
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Keywords | 暑熱 / 摂食行動 / 視床下部 / 神経伝達物質 / ニワトリ |
Research Abstract |
地球温暖化による気温の上昇は「暑熱ストレス」として家畜・家禽の摂食行動を抑制し、その生産性に悪影響を及ぼす。外界の温度情報は視床下部に存在する視索前野(POA)に統合されることが判明していることから、暑熱ストレスにおいてもPOAに局在する神経細胞からの情報が、摂食行動を制御する視床下部の各神経核、例えば弓状核(ARC)や室傍核(PVN)に伝達されることが想定されるが、それらを証明する知見は現状では存在しない。よって本研究は、暑熱ストレス負荷時におけるニワトリの摂食行動抑制の脳内メカニズムの一端を解明することを目的とした。当該年度は暑熱環境下でのニワトリ視床下部における摂食関連遺伝子の発現について検証した。 試験には卵用種雄ヒナを用い、自由採食、24時間点灯、環境温度30℃恒温条件下で群飼したのち、4日齢時に単飼を行った。5日齢時にヒナを暑熱チャンバーに移動して暑熱ストレスを負荷し、30、60、120、240 分後にと殺して視床下部組織を採取した。視床下部組織よりmRNA を抽出し、逆転写反応にて合成したcDNA を鋳型としてリアルタイムPCR 反応を実施し、摂食関連遺伝子の発現量を測定した。 暑熱ストレス負荷により累積摂食量は経時的に減少した。視床下部の遺伝子発現量については、PVNに局在する神経伝達物質である副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の遺伝子発現量は暑熱ストレス負荷により増加したが、ARCに局在するα-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)の前駆体であるプロオピオメラノコルチン(POMC)の遺伝子発現量は増加しなかった。以上の結果より、暑熱ストレスによる摂食抑制にはα-MSHが局在するARCは関与せず、CRHが局在するPVNの役割が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の二年目である当該年度の実施予定課題は「視床下部における摂食関連物質の遺伝子発現」であり、ニワトリ視床下部で摂食抑制に関与する神経伝達物質の遺伝子発現量が暑熱環境下においてどのように変化するかについて検証する計画であったが、当初の予定通り、CRHをはじめとする摂食関連遺伝子の発現量測定については既に完了しており、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究成果により、暑熱ストレスによる摂食抑制にはARCに局在するα-MSHは関与せず、PVNに局在するCRHの役割が重要であることが示された。また、前年度に実施した神経伝達物質アンタゴニストの投与試験においても、CRHアンタゴニストの脳室内投与により暑熱環境下での摂食量減少の緩和が観察されており、これらの事実は、POAに統合された暑熱ストレス情報が視床下部内においてARCではなくPVNに伝達されていることを強く示唆している。よって、翌年度の研究計画である「視床下部におけるc-FOSタンパク質の免疫組織学的染色」を計画通りに実施することで、暑熱環境下の視床下部内における摂食抑制メカニズム、特にPVN領域の関与についてより詳細な検討が可能になると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は国際学会(北米神経科学会、米国サンディエゴにて開催予定)における本研究の成果発表を予定しており、研究費はそれらの旅費として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)