2012 Fiscal Year Research-status Report
胎盤における一酸化窒素産生制御とニトロシル化タンパク質の関与
Project/Area Number |
23580413
|
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
滝沢 達也 麻布大学, 獣医学部, 教授 (00247305)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 和明 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50345873)
森田 英利 麻布大学, 獣医学部, 教授 (70257294)
|
Keywords | ラット / 胎盤 / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
代表者らは胎盤における一酸化窒素(NO)産生をスピントラップ・電子常磁性共鳴吸収(EPR)法により解析し、同時にNO合成酵素(NOS)の発現調節を検討してきた。生体におけるNO産生の解析が困難なこともあり、胎盤におけるNO産生の調節とその役割については不明な点が残されている。本年度は、ラット胎盤におけるNO産生の役割を検討する一環として、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)発現に及ぼすNOの影響を検討し、さらにタンパク質のS-ニトロシル化が関与しているか検討した。NOS阻害剤NG-nitro-L-arginine-methyl ester(L-NAME)を妊娠15日のラットに持続注入し、スピントラップ・EPR法によりNO産生量を経時的に解析した。L-NAMEの持続注入により、NO産生量は対照群より約85%減少していた。さらに、VEGF 発現はNOS阻害6時間後には有意に減少したが、24時間後には回復していた。一方、低酸素誘導因子(HIF)-1αと誘導型NOSの発現は24時間後には有意に増加した。また、胎盤組織におけるタンパク質のS-ニトロシル化と核内移行、核分画と細胞質分画から抽出したタンパク質量に変化が観察され、検討中である。 胎盤組織片培養においてリポ多糖(LPS)でiNOS発現を誘導すると、VEGF発現は増加傾向を示した。さらに、LPSと L -NAMEの併用によりVEGF発現は有意に減少したことから、in vitroにおいてもNOがVEGF発現を促進していることが示された。以上の結果は、in vivoとin vitroにおいてNOがVEGF発現を誘導し、ラット胎盤におけるこの時期のNO産生はHIF-1を介したNOとVEGFの相互作用により維持されていることが示唆された。また、その際タンパク質のS-ニトロシル化が関与している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成24年度の研究計画のうち、実験動物を用いた研究実施計画は順調に進み、また、培養系での実験が順調に進み、一定の成果を得ている。一方、S-ニトロシル化タンパク質の検出は予備的に実施できているものの、その後の進展が少なく停滞気味であることから、全体としては概ね順調な研究達成度と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究成果によりラット胎盤におけるNO産生とNOS発現とその作用の一端は把握できたので、今年度は、これまでの予備的成果に基づいて、タンパク質のS-ニトロシル化について検討する。 妊娠ラットから胎盤を採取し、ビオチンスイッチ法を用いて、候補タンパク質のS-ニトロシル化を検出し、定量的な評価を試みる。また、胎盤組織において、S-ニトロシル化されたタンパク質の量的変動を観察する。さらに、培養細胞あるいは、胎盤の組織片培養法により、低酸素培養下での検討も含めて、NO産生時に関与していることが予想されるタンパク質についてS-ニトロシル化を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度から繰り越された研究経費は小額であるので、今年度の研究経費と合わせて、当初の目的通り、主に物品費を対象として研究経費を充当していく予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Journal Article] Nitric Oxide Induces Vascular Endothelial Growth Factor Expression in the Rat Placenta in Vivo and in Vitro2013
Author(s)
Hideaki ABE, Wataru ISHIKAWA, Takehito SUZUKI, Yasuo ISHII, Norio KANSAKU, Yoko MIYAZAKI, Kazuaki TANAKA, Hidetoshi MORITA and Tatsuya TAKIZAWA
-
Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 77
Pages: 120923-1, 6
DOI
Peer Reviewed
-
-