2012 Fiscal Year Research-status Report
BDV感染による致死的なBD症状の責任病変を特定する
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23580414
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
斑目 広郎 麻布大学, 大学病院, 教授 (20173768)
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Keywords | 病理学 / 中枢神経 / ボルナ病 |
Research Abstract |
本研究はBDV感染による致死的なBD症状の責任病変(病の座)を形態学的に追求することを目的としている。BDV高病原性株(CRNP5)およびBDV標準株(CRP3)および、遺伝子工学的に4ヵ所のアミノ酸変異を組み合わせて(1~4ヵ所)導入した遺伝子組み換BDV(rBDV)9株を免疫学的に寛容な新生仔ラットに脳内接種個体について以下の解析を行った。1.抗ウイルス抗体を用いた解析とウイルス力価測定:脳の矢状断切片を作製し、2種類の抗ウイルス抗体(抗p24抗体と抗p40抗体)を用いてBDVの分布について免役染色を行い経時的に比較、解析を行い、全接種個体の脳で陽性所見が得られた。ウイルス力価は致死的なBDを発症し、観察途中で致死的なBDを発症し採材された個体は観察期を満了した個体と比較して有意に高く、致死的なBD発症とウイルス力価との関連性が示された。現在、脳切片の部位別に陽性所見の程度を検索し、病原性と脳における抗ウイルス抗体陽性所見との関連性を検討中である。2.CRPNP5株接種群と遺伝子組み換えBDV 株4株(rBDV-GSH+LRR株、rBDV-GSH+L1417R株、rBDV-LRR株、rBDV-L1417株)接種群が、ウイルス力価、臨床症状と脳の病理学的変化について、他のBDV株接種群と比較して高度であったことから、CRPNP5の示す高病原性に関わる遺伝子変異として、L1417Rの変異が重要である可能性が示唆された。3.CRPNP5株接種群と複数の遺伝子組み換えBDV 株において小脳の小型化が認められ、同時に大脳外套の菲薄化が指摘された。4.遺伝子組み換えBDV接種群の髄膜脳炎の解析:囲管性細胞浸潤が遺伝子組み換えBDV接種群にのみに認められ、致死的BDV個体でスコアが高い傾向が示された。現在、髄膜脳炎の程度と浸潤細胞の種類が致死的なBD症状と関連性について検索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではボルナ病症状において両極に位置する、BDV高病原性株(CRNP5)およびBDV標準株(CRP3)および、遺伝子工学的に4ヵ所のアミノ酸変異を組み合わせて(1~4ヵ所)導入した遺伝子組み換えBDV(rBDV)9株を用いて致死的なBD症状の責任病変(病の座)を形態学的に追求することを目的としている。その一環として脳を部位別に分けて病変の数値化(スコア化)を行い、より客観的な病変の評価を進めて来ている。しかし、平成23年度において全ての病変についての数値化が終了しておらず、研究の進行はやや遅れている。昨年度後半に顕微鏡用デジタルカメラを更新したので今後、研究を加速する。 平成24年度についてはBDVの致死的な病変に関与していると考えられる脳の部位を明らかにすべく、症状に関与していると考えられるいくつかの病変について脳切片を部位別に分けての数値化(スコア化)をさらに進め、致死的なBD症状の責任病変(病の座)を形態学的に特定する。現在、高病原性に関与していると可能性が示唆されているL1417Rの変異を中心に遺伝子組み換えBDV株のアミノ酸変異の組み合わせと脳の病変程度との関連性を明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は感染個体の脳を部位別に分け、病変の計量解析を進める。顕微鏡用デジタルカメラを更新ししたので、計量解析研究を加速する。 1.抗ウイルス抗体を用いたウイルス感染程度の計量解析:脳の矢状断切片を作製し、抗ウイルス抗体を用いてBDVの分布について免疫染色を行い、部位別に感染の程度を数値化し経時的に計量解析を行う。2.グリア増殖と活性化を指標とした神経傷害の程度の計量解析:脳の矢状断切片を作製し、星状膠細胞と小膠細胞の増殖と活性化を神経傷害の指標として免疫染色法により経時的に部位別に計量解析する。3. 遺伝子組み換えBDV接種群にのみに認められた囲管性細胞浸潤について、浸潤細胞を免疫組織学的に分類し、浸潤細胞の種類と致死的なBD発症との関連性を検討する。 以上のことから、1.4ヵ所のアミノ酸変異の組み合わせの中のどの組み合わせが高病原性に関与しているのか、特に現在重要である可能性が示唆されているL1417Rの変異の病原性への関与について解明する。2.致死的なBD症状をもたらす脳における責任病変(病の座)を形態学的に解明する。3.致死的なBD症状に髄膜炎が関与しているのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.顕微鏡切片作成のための消耗品(スライドグラス、カバーグラス、染色試薬)と抗体の購入を行う。 2.論文投稿に必要な経費を計上する。
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