2011 Fiscal Year Research-status Report
ニワトリ類を宿主とする亜熱帯性の人獣共通皮膚糸状菌症原因菌の全国的疫学調査
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23580419
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
佐野 文子 琉球大学, 農学部, 教授 (10345001)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 皮膚糸状菌 / 人獣共通感染症 / 真菌症 / ニワトリ / 軍鶏 / Microsporum galliane / Chrysosporium spp. |
Research Abstract |
本研究は2008 年に我が国には存在しないとされてきた熱帯地方を流行地とする人獣共通皮膚糸状菌症原因菌Microsporum gallinae によるヒト感染例が沖縄県で発生したことが調査するきっかけである.当該患者ならびに付近の飼育関係者の話から,闘鶏および日本鶏の品評会は全国的な交流が行われ,個体の交換も頻繁に行われていることを知るにおよび,沖縄県以外へ拡散していることを予測した. そこで予備調査をしたところ,千葉県で飼育されている軍鶏より本菌種が分離された.この事実をもとに全国的に闘鶏用シャモを中心に我が国におけるM. gallinae の生態(保菌率)を調べ,地球温暖化の指標の生物種として,『シャモと日本鶏における人獣共通皮膚糸状菌症原因菌Microsporum gallinae および関連菌種の保有率を全国的に調査するとともに,分離株を分子疫学的に解析する』ことを目的とした調査に着想し,実際の調査に着手した. しかしながら,昨年の東日本大震災の影響で,当初予定していた東北地方の調査が不可能となった.そこで患者の発生した沖縄県を中心とした調査に切り替え,沖縄本島:143羽,宮古島:57羽,西表島:39羽,与論島:20羽,沖永良部島:16羽,計275羽の調査を行った. 現在までに上記検体からM. gallinae は分離されなかったが,関連菌種のChrysosporium spp.は約120株が分離され,遺伝子配列から我が国では確認されたことの無い遺伝子型もあり,現在,解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた調査羽数および調査地域を大幅に変更した.その理由として,昨年の東日本大震災があげられる.平成23年度は本来ならば全国調査を展開する予定であったが,東北地方の闘鶏が盛んな地帯は津波のため流失し,本菌種の北限調査は実質不可能となった.しかしながら,このような天災などの不測の事態にも対応できるような学術的なデータは予備的調査で得ているので問題無いと思われる. また,飼育者へ郵送による検体送付の呼びかけを行う予定だったが,昨年夏の郵送検体破損事故以来,個人での検体輸送は極めて困難な状況に至っただけでなく,獣医師以外の方により採集された検体を郵送に委ねることは,公衆衛生ならびに家畜伝染病の予防の観点から好ましくないと判断し,この方法は中止した. そこで患者が発生した沖縄県および奄美諸島を中心とした調査に切り替え,調査羽数は当初目標の55%ではあるが震災の影響を考えれば十分な調査と思われる. さらに交付された研究費も当初3割減額される見通しであったため,調査も回数も若干減らし,次年度に予算を繰り越すことになったが,交付された金額の1割以内であった.
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Strategy for Future Research Activity |
沖縄本島,石垣島,南大東島,久米島などの周辺島嶼などで飼育されている軍鶏および日本鶏300羽を目標に調査を行う予定である. さらに将来の国際共同研究を視野に入れたアジア諸国の研究者との情報交換ならびに予備調査(台湾,タイ,ベトナム)などを計画している.すでにこの研究に興味を持っている台湾,タイ,ベトナムの大学関係者から検体の調査依頼,将来的な国際共同研究についての討論の希望等が寄せられている. また,予備調査で得られた結果を国際学会(ISHAM 2012: International Society for Animal and Medical Mycology 2012, Berlin, Germany June 11-15, 2012)で発表する予定である. 関連菌種として分離されたChrysosporium spp.の同定,分子疫学的解析を進める予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費:900,000円(沖縄本島,石垣島,久米島,南大東島および本島近隣の島嶼などおよびタイ,台湾,ベトナムなど),消耗品:600,000円(遺伝子解析試薬,遺伝子解析外注料金,培地,シャーレなど)謝金・人件費等:200,000円(人獣共通専門家:獣医師への謝金など),その他:169,017円(英語論文校閲料金,学会発表ポスター作成費など)
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