2012 Fiscal Year Research-status Report
家畜と野生動物間におけるE型肝炎ウイルスの感染動態の解明
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23580427
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
萩原 克郎 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50295896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅川 滿彦 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (30184138)
岡本 実 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (60372877)
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Keywords | E型肝炎ウイルス / 野生動物 / ブタ / ハクビシン |
Research Abstract |
前年度に引き続き、野生動物におけるHEV感染状況を調査した。エゾシカについては、総捕獲数629頭について肝臓、直腸内容物からのHEV検出をRT-PCR法で検査した。地域に若干の差を認めるものの約47%の個体の肝臓中にHEV遺伝子が確認された。一部、それらのサンプルについてウイルスコピー数をRT-realtime PCR法で調べた結果、すべて100コピー以下で比較的ウイルス量は少ないことが明らかとなった。また、腸内容物についても検査した結果、約12%がHEV遺伝子陽性と診断された。それら個体の肝臓中ウイルスと一致率は約半数であり、糞便中の排出率は肝臓中保有率に比較的して、低いことが明らかとなった。これらHEV陽性率と性別及び年齢間に有意差は認められないが、季節的に5月の春と12月の冬季に陽性個体が増加する傾向を示した。今後は、エゾシカに感染しているウイルスの遺伝子配列を調べ、家畜由来のHEVとの比較をすすめ、HEV陽性肝臓が豚などのウイルス感受性動物に感染性を有するのか検討していく予定である。 その他の野生動物として、本州で捕獲されたハクビシン30頭について、HEVの遺伝子検出を上記方法にて実施した。肝臓中に検出されたHEVは、約53%と比較的高率であった。それら個体の直腸内容物について調べた結果、陽性個体が約36%、肝臓・腸内容物ともに陽性の個体の割合は 23.3%であり、エゾシカと比較してウイルス排泄個体の割合が高い事が示された。抗体陽性率は、約47%とほぼ肝臓中ウイルス陽性率と比例し, この結果は、日本野生動物医学会(青森)にて口頭発表した。また今回調査したハクビシンは、ヒトの居住地域で捕獲されていることから、ヒトの居住と家畜等の接触など感染経路の調査が必要となろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道内のエゾシカに関しては、各地域から十分な期間サンプル収集ができた。今後は、遺伝子型の同定や感染性の有無に焦点を絞り研究を進めることを予定している。当初、予定していたシカを用いた感染試験は野生鹿の捕獲と飼育が困難な状況であるため、感受性動物である豚を用いて検討することとし、現在準備中である。さらに、ヒトの居住地域に生息するハクビシンにHEVが感染していることを確認したことから、今後都市部における野生動物にも調査範囲を広げる必要を感じている。HEVに関する基礎的研究成果として、熱感受性に関する実験系の確率と溶媒による熱感受性の違いを明らかにし、今後のウイルス不活化の知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度については、野生動物の収集継続とHEV疫学調査を実施しながら、ウイルスの遺伝子系統学的な検討並びにとウイルス感染性を実験動物等を用いて検討することを目的とし、エゾシカに感染するHEVのヒトを含めた他個体への感染リスクを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費予算額は、100万円である。野生動物捕獲及びサンプル輸送費用並びに遺伝子診断にかかる試薬・検査キット費用が、全額の60%を占める。その他、検査個体の血清抗体調査にかかる試薬・消耗器具に残り10%予算化し、ウイルス感染実験の費用として30%を計画している。
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Research Products
(6 results)