2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580428
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
壁谷 英則 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10318389)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 総一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (30181829)
|
Keywords | リケッチア / ネコノミ / 人獣共通感染症 / バルトネラ / ダニ |
Research Abstract |
平成24年度は、引き続き、動物病院、ならびに動物保護センターから供与され、イヌ171頭、ネコ189頭からそれぞれ採取した、ノミ100検体(ネコ由来81、イヌ由来19)、ノミ糞104検体(ネコ由来82、イヌ由来18)、ダニ24検体(ネコ由来1、イヌ由来23)、および血液366検体(ネコ由来175、イヌ由来191)、総計594検体を用いて、Rickettsia遺伝子、およびBartonella遺伝子の検出を試みた。 その結果、Rickettsia felis遺伝子は、動物保護センターの収容ネコ1頭(1.2%)より採取されたネコノミから、わが国ではじめて検出された。さらに同遺伝子は、ネコ由来ノミ糞便6検体(7.3%)からも検出された。 ヨーロッパのダニから検出され、人にも病原性を示すRickettsia monacensis 遺伝子が、2頭(8.7%)のイヌ由来のダニから検出された。さらに、これまでにアメリカのネコノミ、およびタイのイヌのみから検出されたことが報告されている新種と思われるRickettsia種と類似した遺伝子が、ネコ由来のネコノミ6検体(7.3%)から検出された。今後、これら検出された各種Rickettsia種について、病原性の検討をする必要がある。 次にBartonellaについては、B.henselae、およびB.clarridgeiae各遺伝子が、それぞれ、イヌ由来ネコノミから、2検体(10.5%)、1検体(5.3%)、ネコ由来ネコノミから、16検体(19.8%)、9検体(11.1%)からそれぞれ検出された。イヌ血液から、それぞれ2検体(1.0%)、11検体(5.8%)、ネコ血液からは、B.clarridgeiaeのみが、5検体(2.9%)検出された。さらに、イヌ由来ダニ1検体(4.3%)からは、これまでに報告のない、Bartonella種遺伝子が検出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日本全国の保護動物の譲渡を行う動物保護センターならびに動物病院において、吸血性節足動物の寄生が認められたイヌとネコを対象として、節足動物を採取し、R. felisの検出、ならびに分離培養を行い、ヒトと接触する機会の多い 愛玩動物、ならびにそれらに寄生する吸血性節足動物におけるR. felisの感染実態を明らかにし、新たなリケッチア症の感染源としてのリスクを評価することを当初の目的とした。さらに、研究を推進していくうちに、リケッチア感染率は極めて低率であることが判明したことから、同じネコノミをベクターとする人獣共通感染症であるBarttonella感染症についても併せて検討を行うこととした。 これまでの研究の遂行はおおむね順調に進展している。動物病院、ならびに動物保護センターの協力を得て、のべ594検体を材料に用いて実施している。問題点としては、いずれも採材できた地域に偏りがあり、多くが関東近辺であることである。一方、従来より全国的な分布状況を検討することを目的としていたことから、今後、いかに関東以外の地域からの材料提供を募ることができるかが課題である。 一方、得られた検体からは、目的としていたRickettsia felis遺伝子をわが国ではじめてネコノミの糞、ならびに平成24年度にはあらたにノミ材料から検出することができ、一つの目的を達成することができた。さらには新たに検討を加えたBartonellaについても新知見を得つつある。 以上を勘案し、本研究課題の研究目的に対して、おおむね順調に進展していると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、さらに検体を増やしていくことと同時に、地域的に関東以外からの検体を得られるよう工夫を試みたい。 一方Rickettsia felis の分離培養については、平成24年度にはじめてネコノミから遺伝子が検出されたので、この検体を中心に、培養を試みる。併せて、平成25年度においても遺伝子陽性検体が得られれば、分離培養を試みる。計画通り、分離培養に成功した場合には、血清診断計の樹立についても試みる。 加えて、本年度は最終年度であることから、得られた研究成果を積極的に国内外の学会を中心に発表していくことを計画している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リケッチア、ならびにバルトネラの遺伝子検出:引き続き、各材料より市販のキットを用いてDNAを抽出する。リケッチア属のクエン酸合成酵素(gltA)、外膜蛋白A(ompA)、および17kDa抗原をそれぞれコードする各遺伝子を標的としたPCRを行い、リケッチアDNAの検出を試みる。PCR産物について、ダイレクトDNAシークエンス、あるいはベクターDNAシークエンスを実施して塩基配列を決定し、リケッチア種を同定する。 リケッチアの分離培養:PCRによりリケッチアDNAが検出された材料については、分離培養を行う。L929細胞(マウス繊維芽細胞株)の単層培養に、材料(血液、あるいは表面を消毒した節足動物の乳剤)を接種し、リケッチアの分離を行う。分離されたリケッチア株については、DNA抽出、PCRならびに塩基配列の決定を行い、リケッチア種を同定する。 研究成果の発表:日本獣医学会において研究成果を発表することを計画している。
|