2012 Fiscal Year Research-status Report
分子標的治療を目指した犬血管肉腫における増殖因子/受容体系の分子基盤の解明
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23580439
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
酒井 洋樹 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40283288)
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Keywords | 血管肉腫 / 犬 / 株化細胞 / mTOR / Akt / Erk / シグナル伝達系 |
Research Abstract |
初年度に得られた犬血管肉腫細胞株の実験から,増殖因子非依存性増殖が確認されたので,細胞内シグナル伝達系の異常を検索した。上記樹立細胞株7株を用い,血清依存性活性化シグナル伝達経路を調べるために、血清飢餓回復後のErk,Akt,4E-BP1,p70S6Kのリン酸化の変化を調べた。その結果,2株では回復後ErkのThr202とTyr204のリン酸化が増加し,血清による増殖促進には,Erk経路の関与が示唆された。一方、AktのSer473と下流の4E-BP1のThr37のThr46,Thr70,Ser65,S6 kinaseのThr389は回復後リン酸化が増加した。次にmTORC2/Akt/4E-BP1経路の恒常的活性化を調べるために,阻害剤による増殖抑制と本経路関連タンパク質のリン酸化の変化を検討した。PI3K阻害剤処置後,細胞株全てで増殖抑制され,AktのSer473,4E-BP1のThr37/36,Thr70,Ser65のリン酸化が低下した。p70S6KのThr389は2株でリン酸化が低下した。mTOR阻害剤処置では,3株で増殖抑制され,4E-BP1のThr37/36,Thr70,Ser65のリン酸化が低下した。またmTOR阻害剤で増殖抑制されない株では,4E-BP1のThr37/46とThr70のリン酸化は低下したが,Ser65のリン酸化は変化しなかった。これから,4E-BP1のSer65が細胞増殖に関与することが示唆された。これらの細胞株では,mTORC1非依存性に4E-BP1 Ser65へシグナルを伝達している可能性が示唆された。更にmTORC1の上流のAktのSer473のリン酸化は,mTOR阻害剤処置により増殖が抑制された3株のうち,2株で低下していた。以上より,細胞増殖にはmTORC1に加え,AktのSer473のリン酸化の関与も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度における,研究推進方針に則り,細胞内シグナル伝達系の解析が進んだ。この解析に時間が費やされ,DNAアレイを用いた網羅的解析に進むことができなかった。一方で,今回得られた知見はタンパク質のリン酸化や細胞増殖など,発現解析とは別のレベルでの知見であるため,今後の網羅的発現解析の解釈に非常に意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた,実験結果は株化細胞での知見であるため,腫瘍摘出材料の病理組織を用いた解析を行い,生体内でのシグナル伝達系の異常を実証する。また,今年度計画されていて実行できなかったDNAアレイによる網羅的解析を行い,シグナル伝達系の異常も含めた,新たな異常増殖メカニズムの解析を目指す。 さらに,増殖因子受容体異常に関しては,投薬等による腫瘍細胞の増殖コントローを考え上で,検索を進める必要があるので,新規受容体や遺伝子の変異を含めて解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画通り,培養細胞を用いたDNAマイクロアレイによる網羅的解析を行う。さらに,臨床材料を用いた免疫染色による増殖因子・受容体の発現解析を継続し,受容体遺伝子の遺伝子解析にて検討する。
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Research Products
(3 results)