2011 Fiscal Year Research-status Report
牛精漿中に含まれる子宮機能調節蛋白の同定とその作用経路の解析
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23580446
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
片桐 成二 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (00292061)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 子宮内膜 / 上皮成長因子 / サイトカイン / 精漿 / 受胎性 / 乳牛 / 内分泌 / 免疫 |
Research Abstract |
精漿がもつ子宮機能調節作用を利用して雌牛の受胎性を向上させる技術の開発を目的として、雌生殖器の機能調節に関わる精漿蛋白質の同定と精漿蛋白質の作用機序の解明を試みた。まず、雌牛の子宮内膜での上皮成長因子(EGF)およびサイトカイン群の発現に及ぼす効果を指標に精漿蛋白質の機能を評価したところ、精漿を電気泳動法により分画して得られる250個以上の蛋白質スポットの中から6~9個の蛋白質が含まれる精漿分画に雌生殖器の機能を調節する活性の含まれることが明らかになった。また、この蛋白質群に含まれる3個のスポットは既知の蛋白質として同定できた。一方、腟内に投与した精漿が生殖器の免疫系を介して子宮機能を調節するとの仮説をもとに、雌生殖器の血管およびリンパ管分布を調べた後、精漿が子宮機能に及ぼす効果を評価した。その結果、精漿による子宮機能の調節作用は雌牛の発情日(発情周期の0日目)とその翌日に精漿を投与した場合に強く現れ、7および14日目(黄体期)には有意な効果が得られないことが分かった。また、卵巣を摘出しホルモン処置を施した試験牛では、5日以上のプロジェステロン感作に続きエストロジェン処置を行った場合に精漿投与の効果が認められたが、エストロジェンの単独投与では対照群と比較して一部のサイトカインの発現増強効果がみられたものの、EGFを含む正常な発情周期中の子宮内膜とは異なる変化であった。また、精漿の腟内投与部位と子宮内膜の反応の関係を調べたところ腟深部に投与することにより最大の効果の得られることが分かった。以上の結果から、牛の精漿による子宮内膜での増殖因子およびサイトカイン群の発現調節効果は性ステロイドホルモンの影響を強く受けることが明らかになった。また、性ステロイドホルモンによる精漿効果の発現調節には腟深部での精漿タンパクに対する受容機構の発現が関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度には精漿蛋白質の同定(数個の蛋白スポットへの絞り込み)と精漿蛋白質の作用機序の検討を予定していた。精漿蛋白質の同定に関しては予定通り進んでおり、平成24年度の研究計画については変更の必要がない。一方、後者については予定通りの研究計画で実施しており、かつ一部については平成24年度に予定していた検討事項を前倒しで実施している。さらに、研究の過程で明らかになった知見をもとに、当初の予定に加え腟内での精漿成分に対する受容機構の局在と性ステロイドによる受容機構の調節に関する新たな知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
精漿蛋白の同定に関する研究については平成24年度以降も計画通り実施する。ただし、もう一つの目的である精漿蛋白質の作用機序の検討については、平成23年度に得られた知見から腟内での精漿成分に対する受容機構の解明が本研究の最終目的を達するために重要であることが示されているため新たに検討を進める。このため、平成24年度中あるいは平成25年度半ばを予定していたと体由来の生殖器を用いた腟から子宮への物質輸送経路の検索については終了予定を変更して平成25年度末に変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記計画の変更は、研究手法の変更あるいは新たな研究手法の導入を伴わないため研究費の使用計画に変更はない。ただし、当初予定していた学会での成果発表に加え、平成23年度に得られた「腟内での精漿成分に対する受容機構」に関する研究成果を学会で報告するため旅費としての支出割合の増加を予定している。
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Research Products
(4 results)