2011 Fiscal Year Research-status Report
犬の僧帽弁閉鎖不全症における心不全治療薬の自律神経機能改善効果の比較
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23580449
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
藤井 洋子 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (10318884)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心拍変動 / 慢性房室弁疾患 / 内科治療 / 犬 |
Research Abstract |
利尿薬は前負荷除去薬として、心不全治療において必要不可欠である。しかし利尿剤使用量が多いと予後不良であり、それは心機能を示す他のパラメターとは独立しているとされている。これは、利尿剤がレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)といった代償機構を活性化させることにより予後に悪影響を及ぼしていると考えられている。心不全治療薬に使用される利尿剤のうちフロセミドが最もよく使用されているが、短時間作用型のためRAASおよび交感神経系を活性化より強くさせてしまう可能性が指摘されていることから、今回我々は自律神経機能にすでに変化をきたしたMR犬において、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンIIレセプターブロッカー、アルドステロン拮抗薬、βブロッカーのうち、心拍変動の観点からどの薬剤が利尿剤を投与した時に生じる代償機構の活性化を生じにくいのか(あるいは抑制するのか)を明らかにすることとした。平成23年度は、まず以下の4群についてクロスオーバー試験を行った。現在、記録されたホルター心電図からHRV解析中である。(1)プラセボ(2)フロセミド単独(2mg/kg, 1日2回、経口投与)(3)フロセミド+ベナゼプリル(0.5mg/kg, 1日2回、経口)(4)フロセミド+ベナゼプリル+カンデサルタン(1mg/kg,1日1回、経口)犬の心不全治療において、多剤の組み合わせが明らかに臨床的利益をもたらすかどうかを評価するためには、QOLおよび血行動態を評価することに止まるのではなく、自律神経機能を評価することは非常に適切であり、かつ重要であると考えることから、本研究の解析結果によって薬剤の最も望ましい併用法の提案が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では長期間経過した実験的僧帽弁閉鎖不全(MR)モデル犬5頭を使用する予定であったが、1頭は急性疾患(非心不全)により死亡し、1頭はHRVに影響を及ぼすと思われる慢性疾患が診断されたことから本実験への使用を見合わせたため、平成23年度は上記1から4群についてそれぞれ3頭ずつのデータ記録を行った。慢性MRモデル犬の数が少なくなったことから、平成23年度は上記のHRV記録実験と並行して新たに5頭のMRモデル犬を作成した。しかし、慢性経過をしていないため、今後の実験に使用するまでに半年間期間をおき24年度後期より使用することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、MRモデル犬の数の減少から実施できなかった以下の2群((5)および(6))について23年度に新たに作成したMRモデル犬5頭を用いて実施する。(5)フロセミド+ベナゼプリル+スピロノラクトン(1mg/kg,1日2回、経口)(6)フロセミド+ベナゼプリル+カルベジロール(0.4mg/kg, 1日2回、経口投与)次に2ターム目として、長期と短期作用型利尿薬がHRVに与える影響に差が認められると仮定し、フロセミド(2mg/kg, 1日2回、経口投与)とアゾセミド(5mg/kg,1日1回、経口投与)のHRVを比較する。さらに3ターム目として、フロセミド+ピモベンダン(0.3mg/kg,1日2回)とフロセミド+ピモベンダン+ベナゼプリルのHRVを比較する。投薬スケジュールは平成23年度と同様、薬剤を無作為に割りつけて2週間投与しHRVを測定した後、2週間のウォッシュアウト期間を設けて薬剤をクロスオーバーさせる。各タームにはプラセボ群も設け、タームごとに3群間の差の検定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記研究を遂行するために、環境の一定な飼育施設における犬の管理、実験に使用する薬剤および検査およびその消耗品に研究費を使用する。
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