2012 Fiscal Year Research-status Report
銅耐性担子菌による銅含有木材防腐剤処理廃材からの銅回収
Project/Area Number |
23580455
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
服部 武文 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (60212148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 温子 奈良県森林技術センター, 木材利用課, 主任研究員 (90205708)
梅澤 俊明 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80151926)
吉村 剛 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40230809)
鈴木 史朗 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (70437268)
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Keywords | Wood-rotting fungi / Fomitopsis palustris / Removal of copper / copper-tolerant fungi |
Research Abstract |
本研究の目的は、銅木材防腐剤を含有する木材廃材を、特異な銅耐性担子菌により腐朽処理することにより、銅を可溶化し廃材外へ運搬し、銅を回収する技術を開発することである。平成24年度は、銅含有スギ辺材試験片(20 mm四方)を、4種の銅耐性担子菌(オオウズラタケ、チョークアナタケ、自然界から採取した菌J、N)及びカワラタケで、27℃、6、12、18週間腐朽処理し、試験片表面の菌糸をぬぐい落すことにより、試験片から除去された銅の量(銅除去率)を比較した。続いて、その試験片に残存する銅を溶媒抽出し、腐朽処理及び溶媒抽出という2つの処理により溶出された銅の総除去率を比較した。供試菌の中では、オオウズラタケによる銅除去率が最も高く、重量減少率が低い6週間の腐朽処理で、ほぼ最高値(53.5%)に達した。一方、カワラタケ、菌Nは、重量減少が観察されず、これら2菌及び菌Jの銅除去能力は、オオウズラタケ、チョークアナタケに比して、大変低かった。同じ溶媒抽出方法で腐朽処理6、18週を比較すると、水振とう抽出を除き、6週で最大値に達した。その結果、オオウズラタケ腐朽処理+溶媒抽出による総銅除去率も水振とう抽出を除き、6週で最大値に達した。今回の結果では、オオウズラタケで腐朽処理した試験片を、その後、1N 塩酸による振とう抽出により、総銅除去率は87.4%に達した。まとめると、調べた方法の範囲では、溶媒抽出方法の如何を問わず、銅耐性担子菌による腐朽処理はその後の溶媒抽出を組み合わせることにより、溶媒抽出のみの抽出率を増大させることが分かった。銅を可溶化し、菌糸により外部に運搬するメカニズムの解明は今後の課題である。このような菌の利用は、これまで銅、ヒ素、クロムを含むCCA処理廃材から重金属を回収する際検討された微粉砕化を必要とせず、チップ程度の大きさの廃材からも銅の回収を可能とする点で意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下、サブ課題ごと達成度を記述する。 サブ課題1.銅木材防腐剤含有廃材の銅耐性担子菌を用いた腐朽処理による銅除去率の決定と、銅可溶化・運搬機構の解析に関する達成度 平成24年度は、オオウズラタケ、チョークアナタケ、カワラタケ、自然界から採取した菌J、Nにより腐朽処理し、各菌の銅除去率の決定を達成した。しかし、銅可溶化・運搬される機構の解析については、当初の計画では、銅が可溶化し運搬される際の予測構造体である可溶性シュウ酸銅塩の標品をまず合成し、腐朽過程に生成する塩と構造を比較し、当該可溶性塩が生成しているか明らかにする予定であった。しかし、標品塩合成のため、さらに参考文献を調査する必要があることを認識し、平成24年度は調査に費やしたので、標品の合成は平成25年度に達成する予定である。 サブ課題2.オオウズラタケの細胞内銅耐性機構の解析に関する達成度 当初の計画では、銅を含む液体培地において菌糸を培養し、銅耐性に重要な働きをするシュウ酸の生合成や分泌に及ぼす銅の影響を、遺伝子レベルで検討する予定であった。しかし、液体培地の条件下では、銅がシュウ酸分泌量、シュウ酸生合成遺伝子の発現に大きな影響を及ぼさない結果を平成23年度得た。その結果を踏まえ、本研究の目的達成には、銅木材防腐剤含有廃材の腐朽処理条件下、銅がシュウ酸生合成に及ぼす影響を検討することが必要と考え、平成25年度検討することとした。その結果を踏まえて、当初の計画である細胞内銅耐性機構の解明の中心であるシュウ酸生合成に対する銅の影響を遺伝子レベルで明らかにしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 銅可溶化・運搬機構の解明 銅可溶化・運搬機構を解明するため、銅を固着させた木材試験片から銅が可溶化・運搬される際の予測構造体である、可溶性シュウ酸銅塩の生成を確認する。具体的には、可溶性シュウ酸銅塩はシュウ酸と銅のモル比が2:1であることが知られているので、合成したシュウ酸銅塩標品のシュウ酸と銅との比率を、まずGC-MS、軟エックス線分析で確認する。続いて合成標品と、腐朽中生成する塩のX線微細構造スペクトルを解析し、銅除去腐朽処理過程中当該塩が生成しているか明らかにする。さらに、菌の種類により分泌されるシュウ酸量に違いがあるか明らかにし、銅除去率とシュウ酸量との関連性を明らかにする。又、銅含有木材試験片腐朽過程の顕微鏡観察を行う。 2.シュウ酸分泌に及ぼす銅の影響 当初の計画では、銅を含む液体培地において菌糸を培養し、シュウ酸生合成酵素活性及びその遺伝子の発現や、シュウ酸トランスポーター、シュウ酸耐性付与タンパク質をコードする遺伝子の発現に及ぼす銅の影響を検討する予定であった。しかし、液体培地の条件下では、銅がシュウ酸分泌量、シュウ酸生合成遺伝子の発現に大きな影響を及ぼさない結果を平成23年度得た。そこで、計画を変更し、銅耐性担子菌による銅含有木材試験片腐朽過程で、銅がシュウ酸生合成に及ぼす影響を検討することとした。すなわち、銅含有木材試験片をオオウズラタケで腐朽させ、その過程で分泌され木材片に残存したシュウ酸を定量し、木材腐朽過程におけるシュウ酸生合成に対する銅の影響を検討する。 3.培養期間が銅除去率に及ぼす影響 平成24年度の検討により、重量減少がまだ十分進行していない培養6週間の腐朽程度でも銅除去率がほぼ最大値に達する結果を得た。最大値を与える腐朽期間はより短い可能性があるので、より短期間における重量減少率、シュウ酸生成と銅除去率との関連性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.銅可溶化・運搬機構の解明 可溶性シュウ酸銅塩の標品合成のため、研究代表者服部に平成25年度配分予定の30万円と平成24年度積み残し金205,768円で、シュウ酸銅塩標品の合成に必要な試薬を購入する。さらに、分担者酒井に平成25年度配分予定の26万円と平成24年度積み残し金501,570円で、X線吸収微細構造依頼分析をシュウ酸銅標品分1件、菌J, N各1件行う。また、分担者鈴木に平成25年度配分予定の4万円は、銅含有試験片腐朽過程の顕微鏡観察に必要な費用に使われる。 2.シュウ酸分泌に及ぼす銅の影響 服部への配分金で、腐朽菌処理過程に分泌されたシュウ酸定量に使用する抽出・誘導体化に必要な試薬の購入に支弁する。分担者梅澤に平成25年度配分予定の10万円で、銅含有試験片腐朽過程におけるシュウ酸量の定量に必要なGC-MS分析を含む機器分析に必要な消耗品を購入する。 3.培養期間における銅除去率の変動 服部への配分予定金により、上記のほか、溶媒抽出に使用する塩酸等の試薬を購入する。 4.シュウ酸除去率の決定 分担者吉村に平成25年度配分予定の10万円で、シュウ酸除去率の決定に必要なICP発光分光分析装置による分析に必要な消耗品を購入する。
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Research Products
(2 results)