2011 Fiscal Year Research-status Report
高温ストレスによる光化学系障害機構とその光依存獲得性高温耐性機構の解明
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23580456
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山内 靖雄 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90283978)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光合成 / 高温障害 / 高温耐性 |
Research Abstract |
本研究課題では、他の生物種では見られない、植物に独自の光依存獲得性高温耐性機構の解明を目指し、遺伝学的手法により機構を欠損したアラビドプシス突然変異体を獲得することを目的とした。 また光獲得性高温耐性が阻止する高温障害メカニズムを明らかにすることも目的としている。 突然変異体の作製は、突然変異誘発化学物質エチルメタンスルホン酸処理によりおこなった。ホモ化された変異株を播種し、25℃で4週間生育させたものを用い、光照射下40℃で1時間高温処理(以下、光40℃処理と略す)した後、引き続き暗下40℃で1時間高温処理(以下、暗下40℃処理と略す)した。野生株は光40℃処理により光依存獲得性高温耐性が誘導され、暗下40℃処理でも光合成活性の低下を示さないので、野生株と比較し顕著に活性の低下を示す個体の選抜を行った。変異体を選抜後、高温障害のダメージを回復させるため二週間25℃で生育させ、もう一度前述の高温処理を行い、再度顕著な光合成活性の低下を示す個体を選抜した。その後は25℃で栽培し種子を採取した。この一連の一次選抜により、約5,000のアラビドプシス植物体から13の候補系統を得た。選抜された系統の種子を播種し、一次選抜と同様の方法により、二次選抜を行った。 得た突然変異体(lat, Light-dependent Acquired Thermotolerance)は、野生株と戻し交配、ホモ系統の選抜を行い、lat系統を固定した。遺伝子の同定を進めるため、固定したlat系統(Columbiaバックグラウンド)とLernsbergとの交雑を行い、キメラ系統(lat x Lernsberg)を作製した。現在は引き続き、ポジショナルクローニングにより原因遺伝子の特定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画では、課題1)光に依存しない光化学系高温障害メカニズムの生理生化学的解明、課題2)遺伝学的解析による光依存獲得性高温耐性機構を司る遺伝子の解明、という二つの課題を研究期間内に明らかにし、最終的に光化学系タンパク質を高温障害から保護する光依存獲得性高温耐性機構の全貌を明らかにすることを具体的な目標にしている。 課題1)「光に依存しない光化学系高温障害メカニズムの生理生化学的解明」に関しては、計画通り研究が進行し、ストロマ還元力のチラコイド膜への流入によりD1タンパク質の損傷をもたらすことを明らかにすることができた。この研究成果は、2012年にPlanta誌に発表した。このことから、課題1)に関しては予定通り計画が進行していると評価できる。 課題2)「遺伝学的解析による光依存獲得性高温耐性機構を司る遺伝子の解明」については、キメラ系統の確立に手間取り、予定通り進んでいない。このため、今後はこの課題にてこ入れを施し、研究の円滑な進行を促す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究計画では、できるだけ自力をもって研究を進めることを旨としてきた。しかし、熟練したスキルや栽培技術が必要となる植物の交配に手間取り、課題2)は遅々として計画が進んでいないのが現状である。 そこで、現在研究遂行に当たっての大きなハードルとなっているキメラ系統の作成に関して、受託解析を請け負っている会社に依頼し、これを乗り越えたい。 キメラ系統獲得後は、申請者が熟達している一般的な遺伝子解析技術が主となるので、本研究計画は予定通り進行すると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述した通り、次年度は「遺伝学的解析による光依存獲得性高温耐性機構を司る遺伝子の解明」に注力したい。しかし、申請者が不慣れな交配技術が研究遂行において枢要であることから、キメラ系統の確立に、受託サービス(インプランタ社)を用い、確実にこの問題をクリアできるようにしたい。そのための委託料を使用計画に計上している。キメラ系統の獲得後は、一般的な遺伝子解析が主となるため、遺伝子解析関連器具、試薬を消耗品として計上している。また、網羅的遺伝子解析用の受託解析費用、論文作成時の英文校正、論文掲載費、学会発表のための旅費を計上している。
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Research Products
(6 results)