2012 Fiscal Year Research-status Report
いや地回避技術法である活性炭によるアレロパシー物質の吸着機構と土壌微生物群の関係
Project/Area Number |
23580457
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
西原 英治 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452544)
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Keywords | 連作障害 |
Research Abstract |
本研究は5種の異なる土壌特性をもつ土壌(赤色土、赤黄色土、砂丘未熟土、灰色低地土および黒ボク土)にアスパラガス根の乾燥粉末を加え、異なる土壌によるアレロパシー活性の差および活性炭(ヤシ殻系活性炭)施用効果の差をバイオアッセイによって調べた。この活性の特徴は、各土壌の水抽出液およびアンモニウム浸出液からのアッセイ試験で調べた。土壌特性の違いによる活性炭施用効果も確認した。 各土壌に対しアスパラガス根を施用しない土壌のみの阻害率では赤色土で16.9%、赤黄色土で54.8%、砂丘未熟土で9.7%、灰色低地土で50.8%、黒ボク土で53.6%であり、アスパラガス根添加による阻害活性の上昇率は土壌により大きく異なり、砂丘未熟土で70.7%と最も大きくなり、赤黄色土や灰色低地土、黒ボク土ではそれぞれ25.2%、7%、23%と低い値を示した。 残画土壌について水とアンモニウム浸出液により抽出し、抽出後の残画土壌について検定試験を行った。水抽出液に関して、いずれの土壌も高い阻害活性がみられた。アスパラガス根を加えないコントロール土壌と比較すると、赤色土で80%、赤黄色土で63.1%、砂丘未熟土で48.6%、灰色低地土で35.5%、黒ボク土で69.9%であった。このことから、水溶性のアレロパシー物質が抽出されたことが示唆された。しかし、水抽出後の残画物の各土壌のアレロパシー活性もあることから、水抽出で抽出されないアレロパシー物質の存在が明らかとなった。残画土壌のアンモニウム浸出液では赤色土で28.4%、灰色低地土で12.1%の阻害活性がみられたことから、土壌にアレロパシー物質が吸着され、水溶性でないアレロパシーの阻害活性がみられる可能性が示唆された。今後、交換態アレロパシー物質の抽出法を検討し、土壌特性の違いによる活性炭施用とアレロパシーの関連を明確にする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度実験を23年度におっこなっており、24年度は23年に行う予定であった活性炭の吸着持続効果の検討を実施し、アスパラガスの幼苗を90日間ずつ3連作していくmicrocosmを作成し、各作付ごとに土壌を採取し、活性炭の吸着持続能を順調に調査してきている(継続中)。また、その作付ごとに採取した土壌アレロパシー活性も評価してきている。吸着能が持続していれば、レタスの成長阻害は軽減されており、これを定期的に行うことによって吸着能図を作成してきている。 さらに、上記のmicrocosmによる活性炭施用が微生物群集に及ぼす影響についても2年間計画で調査してきている。活性炭の表面に付着する微生物量は、活性炭の原材料よりも細孔のミクロ孔とマクロ孔の大きさに影響し、ミクロ孔に吸着された有機物は脱着しマクロ孔に付着した微生物に供給され、また活性炭の表面に付着している微生物は有機物の脱着を促進した可能性を示唆している(福原ら、2001)。そこで、上記の処理区を経時的に採取し、土壌微生物群集の多様性を土壌微生物分析手法:コロニー法および変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(PCR-DGGE)、土壌懸濁液法等を用いて明らかにしてきており、現在同じ土壌および活性炭施用によるアスパラガスの幼苗の作付が3連続目になっている。よっておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
[microcosm試験による長期間での土壌微生物群の変化および活性炭の吸着能の検討] 平成24年度から25年度にかけたmicrocosmを利用した活性炭の吸着能および土壌微生物群の変動の結果から各活性炭の破過点の推定年数を算出する。この結果から、他のいや地土壌を用いていや地回避技術としての活性炭を施用したときの推定破過点年数を算出し図表化する。最終年度での活性炭吸着メカニズムの総合評価を行う。総合的に農業分野で利用できる活性炭の土壌中の特性について明らかにする。 現在、供試土壌の福岡県沖積土壌、アスパラガス連作土壌を100cm2のノウバウエルポットに充填しモデル土壌とた。処理区として土壌のみのコントロール区、活性炭(改植出番・粒状)施用区、アスパラガス連作区、活性炭施用+アスパラガス施用区を作成し、長期microcosm試験を作成した。現在は試験開始8ヶ月程度立っており、アスパラガスは3作目である。コントロール区は常に80%以上の高い阻害活性を示している。また、活性炭施用区においては、2ヶ月程度であれば40%の中程度の阻害活性しか示さなかったが、現在の阻害活性は50%程度であり、若干の吸着能力の低下が見られた。また、アスパラガス連作区では、1作目では活性炭施用区の方が非施用区と比較して生育が旺盛で、全体の乾燥重量は1.3倍であった。この試験においては12ヶ月連続試験で行い、今後経時的土壌の阻害率や、アスパラガスの生育調査、PCR-DGGE法による経時的土壌微生物の遷移について計測し、長期間での土壌微生物群の変化と活性炭の吸着能について検討を行っていく予定である。最終年度は、このmicrocosm試験を通して、アスパラガスのアレロパシー物質等における活性炭の過破点と土壌微生物の動態の解明を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当しない
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