2011 Fiscal Year Research-status Report
低品位硫化鉱石からの金属資源回収技術の高効率化に関する研究
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23580458
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上村 一雄 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80294445)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 鉄酸化細菌 / 硫黄酸化 / バクテリアリーチング / チオ硫酸酸化 / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
Acidithiobacillus ferrooxidansは,二価鉄および還元型無機硫黄化合物を酸化できるため,低品位の硫化鉱石から銅などを回収する技術であるバクテリアリーチングに利用されている。バクテリアリーチングでは、鉄酸化活性と硫黄酸化活性が同時に必要である。本菌の鉄酸化酵素系と硫黄酸化酵素系は全く異なり、鉄が存在すると鉄酸化酵素系が優先的に発現する。すなわち生育基質の違いによって代謝経路を切換えていることが明らかにされている。この切換え機構の解明によって,バクテリアリーチング能の改良が期待される。そこで,本年度は,硫黄関連遺伝子の発現制御に関与する因子の解析を行った。硫化水素:キノン還元酵素(Sqr)遺伝子の前後の遺伝子解析を行った結果,sqrの上流に転写制御因子様タンパク質をコードする遺伝子TRsqrの存在が明らかとなった。TRsqrの発現をRT-PCRを用いて検討した結果,硫黄及びテトラチオン酸生育細胞で強い発現が検出され,sqrの発現制御にTRsqrが関与している可能性が示唆された。大腸菌で発現させたTRsqrを用いて,sqrおよび硫黄酸化関連遺伝子のプロモーター領域との相互作用をゲルシフトアッセイにより調べた。その結果,TRsqrは,プロモーター領域に非特異的に結合することがわかった。この解析結果については,国際バイオハイドロメタロジー学会で発表した。一方,sqrの推定σ70プロモーターに結合するタンパク質を直接取り出したところ,約64kDaと約14kDaのタンパク質が検出された。そのうち約14kDaのタンパク質をLC/MS解析したところ,推定分子量13.2kDaのタンパク質(TRsqr-14)であった。このタンパク質をBLAST検索したところ,既知のタンパク質との相同性が低く,機能を推測することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、(1)sqr遺伝子上流に存在する制御様タンパク質(TRsqr)の解析、(2)硫化水素:キノン酸化還元酵素遺伝子(sqr)のプロモーター領域と相互作用するタンパク質の解析である。(1)については、TRsqrの大腸菌内での合成に成功し、そのプロモーター領域への結合能を解析した。得られた結果は、硫黄代謝関連酵素遺伝子の発現制御に関与することを示唆しており、興味ある知見が得られたと判断している。また(2)については、sqrのプロモーター領域に結合するタンパク質を直接検出した。検出したタンパク質は、遺伝子からその機能を推定することはできなかったが、遺伝子発現制御との関連で今後興味ある研究材料であると考えている。以上、本年度は、当初計画をほぼ順調に遂行できたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄酸化細菌の硫黄代謝経路として、我々はこれまでとは異なった代謝経路を提案している。新たに提案した硫黄代謝経路のうち,ユビキノール酸化酵素(UQO),硫化水素:キノン還元酵素(SQR),テトラチオン酸加水分解酵素は我々が精製し、遺伝子を決定した。その他にも硫黄を硫化水素と亜硫酸に分解する酵素やチオ硫酸の酸化に関与する酵素が存在すると考えられるが,その正体は明らかにされていない。これまでの我々の研究で,これらの硫黄代謝酵素系は,硫黄化合物で増殖した細胞内で誘導合成され,主にペリプラズマや外膜に局在すると考えられる。従って,鉄あるいは硫黄化合物で増殖した細胞から調製したペリプラズマと外膜画分のタンパク質を比較することによって,新たな硫黄代謝関連タンパク質が検出できると考えられる。調製したペリプラズマと外膜タンパク質を二次元電気泳動に供し,硫黄で増殖した細胞で特異的に出現するタンパク質を,ゲル内トリプシン処理し,LC/MSによって分析する。得られたデータを用いて,At. ferrooxidans ATCC23270の全ゲノムの遺伝子情報から,遺伝子の同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、ペリプラズムタンパク質の2次元解析に必要な消耗品の購入のための費用、および神戸で開催される生物工学会と東北大学で開催される学会で研究成果発表を行うために費用が、主な経費である。
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Research Products
(9 results)