2012 Fiscal Year Research-status Report
高温障害による土壌病害の激発化プロセスの究明と克服シーズの創出
Project/Area Number |
23580460
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松元 賢 九州大学, 熱帯農学研究センター, 助教 (60304771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 健一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40150510)
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Keywords | 国際情報交換 / ミャンマー / ベトナム |
Research Abstract |
本研究は、高温気象による転換畑作物の被害の激発化および蔓延化激の要因を究明し、環境に優しい熱帯性土壌病害の克服技術を創生することを目的としている。平成24年度に実施した研究は以下の通りである。 【課題1】熱帯アジア土壌病害調査 平成24年度では、研究分担者の九州大学農学部植物病理学研究室土屋健一教授らとともに、ミャンマー国への調査研究を行う。ミャンマー国への訪問の目的は、近年、ミャンマーは市場開放に伴い、農林水産業に関する経済発展が見込まれ、さらに我が国とミャンマー国2国間の経済的連携がさらに重要性を増している。そこで、本年度において稲作および野菜・花卉類に発生する植物病害の被害調査および病害サンプルの収集を行うのが目的である。現地において、イエジン農業大学を訪問し、植物病理学研究室Seint San Aye博士との研究打合せおよび病害調査を行う。 【課題2】熱帯病害のモデリング解析 平成24年度では、熱帯環境における稲作病害発生のモデリングを確立するために、フトトロン人口気象装置を利用したモデリング解析に必要な基礎データの収集および病害発生のモデリングに不可欠なパラメーターの設定のためのファクターを検討する。本年度では、熱帯・亜熱帯地域で発生するイネいもち病菌の発生生態のメカニズムを解明するため、ミャンマー産イネいもち病菌のレース検定およびいもち病抵抗性遺伝子の特定を行うための試験を行った。 【課題3】植物由来の生物的防除資材の探索 香草・ハーブ類の植物からの抗菌・殺菌成分を抽出し、土壌伝染性植物病害防除に有効な抗菌・殺菌成分の検討を継続して行った。また、ミャンマー国内で広く入手が可能な香草・ハーブ類植物の調査・サンプル収集を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に設定した3つの課題について、各課題の進捗状況については以下のとおりである。 【課題1】熱帯アジア土壌病害調査 平成24年10月に研究分担者の九州大学農学部植物病理学研究室土屋健一教授および古屋成人准教授らとともに、ヤンゴン市周辺で稲作病害、インレー湖周辺ではナス科作物の細菌病害の調査およびトマトやナスの被害植物のサンプリングを行った。また、インレー湖からマンダレーに向かう途中の中山間地区では、イネ、麦類、ジャガイモおよびトウガラシ類の調査病害調査および被害サンプルの収集を行った。被害箇所から、イネ紋枯病菌やイネいもち病、イネごま葉枯病菌、トマト青枯病細菌、難腐病細菌、および蔬菜類立枯病細菌などの土壌病原菌類を分離・保存した。 【課題2】熱帯病害のモデリング解析 ミャンマー国出身修士課程学生Myo Zaw氏と共同で、ミャンマー産イネいもち病菌を用いて、ミャンマー産イネいもち病菌のレース検定を行った。また、日本産イネいもち病菌との分子遺伝学的な比較解析も行った。分子遺伝学的解析結果から、ミャンマー産イネいもち病菌は日本産とは系統が明確に異なることが示唆された。また、ミャンマー産のレース反応は日本産とは明確な差が認められ、ミャンマー固有のいもち病病原遺伝子が存在するとともに、他の東南アジア諸国とは異なる抵抗性遺伝子の特定および病害抵抗性イネの育種が必要であることが示唆された。 【課題3】植物由来の生物的防除資材の探索 カワラヨモギおよびチョウジから抗菌・殺菌活性成分を抽出し、イネリゾクトニア属菌およびイネいもち病菌の抗菌活性試験を行った結果、カワラヨモギからキャピラリン、チョウジからオイゲノールのそれぞれの抗菌・殺菌成分の特定に成功し、培地上おいて、これら抗菌成分がイネ病原菌の菌糸生育を阻害する効果がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究計画の最終年度にあたるため、来年度の研究の推進方策については、以下のような課題をについて研究成果をとりまとめる予定である。 【課題1】熱帯アジア土壌病害調査結果のとりまとめ ベトナムおよびミャンマーを含む東南アジアにおいて発生する熱帯・亜熱帯土壌病害の発生生態について各国毎にとりまとめる。特にイネおよび蔬菜類に発生する土壌病害の原因菌であるリゾクトニア属菌、フザリウム属菌および青枯病細菌について、病害の発生生態について作物毎にとりまとめ、東南アジアと我が国との違いについて比較解析を行う。また、比較解析の結果に基づいて、 高温障害がもたらす我が国で発生の可能性が示唆される土壌病害について作物毎にとりまとめ、高温障害による土壌病害発生予察の基礎資料を作成する。 【課題2】高温障害による熱帯発土壌病害のモデリング解析 高温障害により激発化が示唆される土壌病害のうち、蔬菜類青枯病細菌、リゾクトニア属菌およびフザリウム属菌ついて、高温障害がもたらす土壌病害のシミュレーション解析を行う。予想される熱帯土壌病害の発生と激発化および蔓延化の可能性についてコンピューティングを行い、地球温暖化の進行に伴う土壌病害の発生予察に利用するための病害診断システムの構築を行う。 【課題3】植物由来の生物的防除資材の利用評価 キャピラリンやオイゲノールなどの抗菌・殺菌成分を実際の被害発生圃場に適用し、難防除土壌病害の防除への有効性について検証する。同様に、植物素材を利用した耕種的防除法であるトラップ植物,共生植物および対抗植物による熱帯・亜熱帯地域での利用評価について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【課題1】熱帯アジア土壌病害調査 平成25年度では、ベトナムおよびミャンマー国への研究調査のとりまとめを行うための旅費を計上する。ベトナム国ではハノイ大学農学部Ha Viet Cuong博士と、ミャンマー国イエジン大学農学部Seint San Aye博士とそれぞれ最終的な調査研究結果を現地でそれぞれとりまとめる。 【課題2】熱帯病害のシミュレーション解析 平成25年度では、病害シミュレーション解析に必要なコンピュータおよび解析用ソフトウェアを計上する。 【課題3】植物由来の生物的防除資材の利用評価 ミャンマーおよびベトナム国において、野外で実際に発生している土壌病害の生物的および耕種的防除の実用評価試験のために、現地においてキャピラリンおよびオイゲノールの抗菌・殺菌成分の抽出のための分析試薬および物質精製のための装置消耗品類について予算に計上する。また、植物材料の調達費、抗菌試験のための微生物培養試薬類についても併せて予算に計上する。
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Research Products
(5 results)