2011 Fiscal Year Research-status Report
植物・微生物共生系の酸性土壌への適応機構の解析と応用
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23580462
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
砂入 道夫 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80196906)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 酸性土壌適応機構 / 多糖 / 遺伝子資源 / 植物・微生物共生系 / アルミニウム耐性 / ゲノム |
Research Abstract |
本研究は、pH 2-3、Alイオン濃度70 ppm以上を含む強酸性土壌に適応した植物を植物・微生物共生体として捉え、植物だけでなく窒素固定菌やアルミ耐性菌などの共生微生物群にも注目し、共生微生物間、宿主植物・共生微生物間の相互作用をゲノム情報を基に解析し、共生微生物が宿主植物の酸性土壌適応に果たす役割を解析する。これら共生系から単離した高濃度アルミ耐性菌をイネに接種するとアルミを含有する水耕液での生育の向上が認められたことから、共生微生物系を利用した酸性土壌での作物栽培法開発の為の基礎的知見につながることが期待される。 本年度は、強酸性土壌に適応した植物の共生菌のゲノム情報を利用し、酸性窒素固定菌とAl耐性菌との共培養系やAl感受性イネの水耕培養系に接種することによりアルミニウム耐性を付与する共生菌などについてポストゲノミック解析を押し進めた。また、強酸性土壌に適応したカヤツリグサ科植物Eleocharis dulcis から単離したPullulanibacillus属細菌CA42株は強いアルミニウムイオン耐性、pH上昇能、インドール酢酸生産能を有するが、同菌を酸感受性イネ(IR36)の根に接種したところ、接種したイネは生育が促進され、イネの根にバイオフィルム状の物質が見られた。そこで、CA42株が培地上で生産する多糖(CA42-PS)を菌体から剥離し、AlCl3溶液と反応させた結果、溶液中に残存するアルミニウムイオン濃度の減少が見られた。また、CA42-PSのアルミニウムやその他酸性土壌で問題となる重金属の吸着能についても検討を行った。さらにCA42株の生産する多糖の構造の決定し、同多糖のアルミニウム耐性にかかわる構造を推定した。また同菌のゲノムをドラフト解析し、CA42-PS合成遺伝子群を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Acidocella属細菌やMangrovibacter属細菌などのゲノム情報を利用し、酸性窒素固定菌とAl耐性菌との共培養系やAcidocella属細菌群を接種したAl感受性イネの水耕培養系などについてポストゲノミック解析を押し進めた。プロテオミックス解析は、分析に用いる所属研究機関所有の多次元LC-MS/MSシステムが夏に不具合を生じ回復に年明けまでかかったため、次年度以降に延期した。そのかわり、他の実験を推し進め新しい知見を得ることができた。例えば共生菌が生産するアルミニウム耐性に関与する多糖の化学構造を決定し、同多糖のアルミニウム耐性にかかわる構造を推定した。また同菌のゲノムをドラフト解析し、アルミニウム耐性に関与する多糖の合成遺伝子群を推定した。 上述のようにプロテオミックス解析にトラブルが生じたが、他の実験を推進した結果、重要な新しい知見が得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した2つの研究、「酸性窒素固定菌とアルミニウム耐性菌の共培養系」および「Acidocella属細菌群を接種したアルミニウム感受性イネの水耕培養系」に合わせ、平成23年度に明らかにしたPullulanibacillus属細菌CA42株のイネに対するアルミニウム耐性付与に関連するCA42-PSの知見、構造、アルミニウム吸着機構、合成遺伝子群およびゲノム配列を基に、「強酸性土壌に適応した植物・微生物共生系における共生菌の生産する多糖の果たす役割」についてポストゲノミック解析、プロテオミックス解析やトランスポソン変異株を用いた解析、CA42-PSを中心にグリコミックス解析を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに得られた知見をもとに、プロテオミックス解析やトランスポソン変異株解析、さらにはグリコミックス解析などのポストゲノミック解析を推進するために研究費を使用する。またポストゲノミック解析の進展に伴って必要となるゲノム配列の精密化も行う予定である。なお、平成23年度に予定していたプロテオミックス解析は、分析に用いる所属研究機関所有の多次元LC-MS/MSシステムが夏に不具合を生じ回復に年明けまでかかったため、平成24年度以降に延期した。そのため平成23年度の研究費の一部を平成24年度に使用することとした。
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Research Products
(3 results)