2012 Fiscal Year Research-status Report
植物・微生物共生系の酸性土壌への適応機構の解析と応用
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23580462
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
砂入 道夫 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80196906)
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Keywords | 酸性土壌適応機構 / アルミニウム耐性 / ポストゲノミックス / 脂質 / 植物・微生物共生系 / Rhodotorula酵母 / 多糖 / 根圏微生物 |
Research Abstract |
本研究は強酸性土壌に適応した植物を植物だけでなく根圏に共生する窒素固定菌やアルミニウム耐性菌などの微生物群にも注目して、植物・微生物共生系における共生微生物間、宿主植物・共生微生物間の相互作用をゲノム情報を基に解析し、植物・微生物共生体の酸性土壌適応機構を解析することを目指している。これら共生系から単離した高濃度アルミ耐性菌や細胞外多糖生産菌をイネに接種するとアルミを含有する水耕液での生育の向上が認められたことから、これら共生微生物系を利用した酸性土壌での作物栽培法開発の為の基礎的知見につながることが期待される。 本年度はこれまで分析していなかった根圏の真核微生物に関する解析も進めた。新たに中国の酸性土壌(茶畑)から単離した高濃度アルミニウム耐性真核微生物Rhodotorula taiwanensis RS1に着目した。同酵母は真核微生物であるだけでなく、これまで我々が解析してきた共生微生物群とは異なるアルミニウム耐性機構を有する可能性が示唆されたことから、先ずそのドラフトゲノム配列を決定、解析した。Rhodotorula酵母のアルミニウム耐性にはミトコンドリアの機能が重要であるとの報告があるため、同酵母のミトコンドリアゲノムに詳細な検討を加えた。また同酵母はアルミニウム存在下に生育させると脂質に大きな変化が起こることを認め、その組成、特に脂肪酸構成に詳細な検討を加えた。これらの脂質の変化とアルミニウム耐性との関連を、本研究で得られたゲノム情報に基づき網羅的に解析するリピドミックス研究のための基盤を構築した。「酸性窒素固定菌とアルミニウム耐性菌の共培養系」および「Acidocella属細菌群を接種したアルミニウム感受性イネの水耕培養系」また平成23年度より開始した「強酸性土壌に適応した植物・微生物共生系における共生菌の生産する多糖の果たす役割」の解析も計画に基づき進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、強酸性土壌に適応した植物の共生菌、Acidocella属細菌やMangrovibacter属細菌などのゲノム情報を利用し、酸性窒素固定菌とAl耐性菌との共培養系やAl感受性イネの水耕培養系に接種することによりアルミニウム耐性を付与する共生菌などについてポストゲノミック解析を押し進めた。本年度は特にアルミニウム耐性酵母の実験を推し進め新しい知見を得ることができた。具体的にはゲノム配列の決定と脂質組成とアルミニウム耐性の解析が進んだ。これまでにもアルミニウム耐性に脂質が関与することは報告されてきたが、本研究により真核微生物でアルミニウム耐性に関与する脂質組成変化を解析するためのリピドミックス実験系の構築をすることができたことにより今後の研究の大きな進展が期待される。なお本年度予定していたプロテオミックス解析は、所属研究機関に新たに高機能な質量分析システムが次年度に導入されることになったことから、より高次な解析を行うために次年度に行うこととした。 これまで解析が進んでいなかった根圏に生息する真核微生物に関して重要な新しい知見を得て新しい実験系を構築できたこと、イネ根圏にバイオフィルムを形成しアルミニウム耐性を付与する細菌の細胞外多糖の構造とその合成遺伝子を解明したこと、プロテオミックス解析も計画時よりも更に高度な解析ができることなどから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した2つの研究、「酸性窒素固定菌とアルミニウム耐性菌の共培養系」および「Acidocella属細菌群を接種したアルミニウム感受性イネの水耕培養系」に合わせ、平成23年度にPullulanibacillus属細菌CA42株を用いて明らかにした「強酸性土壌に適応した植物・微生物共生系における共生菌の生産する多糖の果たす役割」と本年度構築した「強酸性土壌に適応した植物・微生物共生系における真核微生物の役割」と「アルミニウム耐性果たす脂質の役割」についてポストゲノミック解析を更に推進する。 これまでに得られた成果と来年度得られる成果をまとめ、共生微生物系を利用した酸性土壌での作物栽培法開発の為の基礎的知見としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに得られた知見をもとに、プロテオミックス解析やリピドミックス解析さらにはグリコミックス解析などのポストゲノミック解析を推進するために研究費を使用する。またポストゲノミック解析の進展に伴って必要となるゲノム配列の精密化も行う予定である。なお、平成24年度に予定していたプロテオミックス解析は、所属研究機関所有の質量分析システムがより高級な機器に更新されるため、平成25年度に行うこととした。そのため平成24年度の研究費の一部を平成25年度に使用することとした。
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Research Products
(3 results)