2012 Fiscal Year Research-status Report
偏光による複屈折を用いた維管束組織の検出及び定量法の開発
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23580463
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
村田 善則 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (40322664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 昭彦 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (70425544)
安部 久 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, その他 (80343812)
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Keywords | オイルパーム / 維管束(VB) / 柔組織(PT) / トランク(幹) / Elaeis guineensis |
Research Abstract |
これまでオイルパームの維管束(VBs)が偏光による複屈折を示す性質を有すること示し、この複屈折は二次細胞壁の構造に由来することを明らかにした。 今年度はNear infared (NIR)とX-ray diffraction(XRD)によるVBsの検出を行い、偏光による結果との比較をおこなった。検出には柔組織(PT)とVBsを重量比で一定の割合で混合した5種類の標準サンプルを用いた。NIRによる測定の結果、相関係数0.97を示す標準曲線が得られ、これよりNIRを用いてサンプル中のVBs含量ならびにPT純度を見積もることが可能であった。NIRの吸収スペクトルからは、4つのピーク(1929nm, 2104nm, 2276nm, 2335nm)が同定されたが、デンプンの含量がピークの高さに影響することから、NIRではVBを見積もる際に、サンプル中に含まれるデンプン含量の影響を考慮する必要があった(論文発表済み)。 XRDでは標準サンプルをRigaku RINT-2550HF X-ray generatorのピンホールコリメータで測定した(40kV, 200mV)。XRDのパターンはシンチレーションカウンターを用いて求めた。5つのピーク(15°, 17°, 22°, 30°, 35°)のうち22.5°のピークがVBs量を明白に示していたことから、このピークの高さよりVBs量を見積もった。その結果、相関係数0.93を示す標準曲線が得られ、ホロセルロースとの共分散が0.99という高い相関を示した。しかしXDRによる標準曲線では、相関係数0.93が他の測定法と比べて低かった(偏光 R2=0.99, NIR R2=0.97)。これより、高い相関と共存するデンプンの影響を受けにくいことから偏光による測定がオイルパームサンプル中のVBs量を見積もるのに適していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに、オイルパーム維管束には偏光による複屈折を有する性質を有することを示した。本年度には、オイルパーム柔組織(PT)と維管束(VBs)を一定の重量比で混合した標準サンプルの化学分析(ホロセルロース、αセルロース、リグニン、デンプン)を行い、各成分の量と偏光の強度との相関を求めた。その結果、偏光が維管束のαセルロース含量に高い相関をしめした。VBsの細胞壁の構造がPTよりも成熟していることから、偏光は細胞壁の二次構造に由来することを示すことができた。 またこれまでセルロースの構造解析に用いられてきた近赤外法(NIR)およびX線回析(XRD)によってオイルパームの標準サンプルを測定し、それぞれの方法で維管束検出および定量の結果の比較をおこなった。その結果NIRの場合には、維管束に特徴的なピークがみられるが、そのピークはαセルロースのみに依存せずデンプンの影響を除外する必要があることを示した。XDRに関する結果では、5つのピークのうちVBs量を明白に示していたピークを同定し、このピークの高さを基準にしてVB定量の標準曲線を得た。XRD, NIR、および偏光の3つの検出法の中で解析結果を比較したところ、偏光が標準曲線の相関係数がもっとも高く、他の成分(デンプンなど)の干渉を受けにくいことから、オイルパームのVBの検出にはもっとも適した方法であるということを示すことができた。これまでの結果について、論文としてまとめ現在投稿中である。我々はオイルパーム幹の有効利用として、オイルパーム幹に含まれる多量の搾汁液から燃料用エタノールを生産する技術を開発している。樹液を絞った後の搾汁残渣にはVB以外にデンプン含有量が高いPTを含むため、有効にセルロースとデンプンを利用するためには、まずPTとVBを分別する必要があることを報告した。また関連する論文を3本発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、搾汁残渣のサンプルを用いて、残渣中に含まれる維管束について定量を試みる。具体的には、オイルパームトランク(幹)から糖を含む樹液を搾汁した残渣に含まれる柔組織(PT)の有効利用のため、搾汁残渣からのPTの分別を試みる。標準サンプルから求めた標準曲線をもとに、マレーシアのプランテーションで伐採したオイルパームトランク由来の搾汁残渣より分別したPT画分について、混在する維管束(VBs)を偏光による複屈折を用いて検出し、維管束の混合の割合について評価を試みる。 オイルパームには、柔組織にデンプンを蓄積する量が多い種類と少ない種類の二種類が存在する。デンプン含量の低い種類のオイルパーム柔組織については吸水性が高いことから機能性素材としての開発が見込まれる。そこで柔組織の多孔性について調べ、柔組織の吸水性との関連性について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度となるので、総決算としての研究費の使用を試みたい。具体的には、論文発表にかかわる費用、偏光による複屈折による維管束の検出にかかわる費用(顕微鏡のフィルター、スライドガラス、検出試薬、分析試薬等)、サンプル収集にかかわる費用に主に使用する予定である。
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