2011 Fiscal Year Research-status Report
LPSの内部コア糖鎖に結合するヒト抗体のエピトープ解明に向けた糖鎖プローブ合成
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23580474
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
一柳 剛 鳥取大学, 農学部, 准教授 (00302240)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | lipopolysaccharide / LPS / lipooligosaccharide / LOS / Kdo |
Research Abstract |
本研究では、ヒト抗体が認識するLPS/LOSの酸性内部コア糖鎖のエピトープ解析のための糖鎖プローブ合成を目指しており、 その糖鎖ライブラリの構築を第1の目的としている。 23年度は分岐構造を有するKdo糖鎖の最適合成経路開発を含む糖鎖ライブラリ構築について検討を行った。その結果以下の成果を得た。第1にこれまでα2-4結合を有するKdo2糖の合成に使用した共通のKdo誘導体を用いて、2-8、2-7結合を有するKdo2糖合成を達成した。またα2-4結合を有するKdo2糖の5位水酸基にヘプトース供与体を導入にも成功した。この結果よりこれまでに開発した共通のKdo誘導体が分岐型Kdo糖鎖や他の結合様式を持つKdo糖鎖合成に適した中間体になることを実証した。また、4,5-分岐糖合成においては、従来5位水酸基に糖を導入後4位水酸基に糖を導入する方法しか試みられていなかったが、逆に4位に糖を導入後5位に糖を導入する方法でも収率、選択性ともに極めて良好に合成可能であることを明らかにした。 一方α選択的グリコシル化については、Kdo中間体5位水酸基にエステル結合を介した形での分子内グリコシル化反応を試みるべく検討を行ったが、4位に保護基を導入した場合の5位水酸基へのアシル化反応は立体混雑による反応性の著しい低下のため困難であった。問題解決に向け反応条件の改善および基質の再設計が必要であることが明らかになった。 以上のことよりエピトープ解明に向けた糖鎖プローブ合成の基盤を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的であるLPS/LOS内部コア糖鎖合成の合成経路確立については、完全ではないがほぼ目的を達成することができた。 その理由は、分岐Kdo糖鎖合成を高収率で達成できたことである。その合成経路は従来の4,5分岐糖鎖合成とは異なるアプローチ、すなわち、Kdoの4位水酸基にあらかじめKdoを導入しておき、その後5位水酸基から糖鎖を新調するというこれまでとは全く異なる経路での合成計画を遂行、完了したこと、従来法よりも高収率にて標的分岐3糖合成を達成し、作業仮説が正しかったことを証明できた点にある。 目的達成が完全でない点については、Kdo供与体を使用したα選択的グリコシル化反応の開発においては、反応基質の反応性が予想以上に乏しかったために、目的とする分子内グリコシル化反応にたどり着けず、当初の目的を達成できなかったことである。しかしながら問題解決の糸口は見いだせたことより、目的の一部が達成できた。 以上、23年度は当初目的である糖鎖プローブライブラリ構築に向けた基盤構築が達成できたことから、目的はほぼ達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、当初の予定通り遂行できていることから、推進方策については大きな変更を行わない。 合成の標的とする糖鎖ライブラリ合成については、当初予定ではα2-4結合を有するKdo2糖に対してヘプトースを中心とした1-3糖の糖鎖の導入を予定していたが、クラミジア属LPSのコア糖鎖の部分構造である2-8結合を有するKdo2糖についても合成標的糖鎖として加えライブラリの種類の充実を図る。 合成糖鎖のコンジュゲート化についてはヒト抗体の精製を念頭にアガロース、セファロース担体への合成糖鎖の導入を検討し、合成糖鎖をプローブとして、糖鎖認識抗体の選抜を行える環境の構築を行う。当初予定ではタンパク質の使用を計画していたが、ビオチンなどの標識化についても検討を行い、糖鎖プローブとしての利用の可能性を広げることとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(H24)は\1,971,649円を使用する。平成23年度からの\151,649円も含めており、この分も含めて使用する。当該研究費が生じたのは、当初計画においてα選択的グリコシル化反応を分子内環化反応の利用により検討するための試薬代として使用計上していたものであるが、計画通り反応が進行しなかったため研究が完了できず使用を保留していたものである。この反応の開発は次年度(平成24年度)も継続して検討を行うため,保留経費分も使用する。 次年度以降の研究計画に大幅な変更は加えず、上述の未完了であったα選択的グリコシル化反応開発も継続して進める。研究経費についても大きな変更は行わない。研究費の使用は主に試薬、ガラス器具、クロマトグラフィー用カラムなどの消耗品に充てるが、鍵中間体合成の生産性を向上するためのマイクロリアクター(100千円)を新たに購入する。また、研究成果を国際糖質学会にて発表するため、当初の計画通り外国旅費を計上する。
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