2011 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質の高可溶化・高機能化・治療薬開発をめざす「可溶化誘導好塩性タグ」の創製法
Project/Area Number |
23580475
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
徳永 正雄 鹿児島大学, 農学部, 教授 (20112782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 松二郎 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (20305163)
徳永 廣子 鹿児島大学, 農学部, 技能補佐員 (60381191)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 好塩性酵素 / 好塩性微生物 / 融合蛋白質 |
Research Abstract |
好塩性蛋白質は、総電荷がマイナス電荷に偏っていて、高い可溶性と変性しても凝集しないで巻き戻る高い構造可逆性を持っている。本研究では、「蛋白質の高可溶化・高機能化・治療薬開発をめざす"可溶化誘導好塩性タグ"の創製」を目的としている。本年度は、年度当初の研究計画に示したとおり、「ある種のリガンドに特異的親和性を備えた好塩性蛋白質を発現パートナーとした高可溶性融合蛋白質発現系の開発」を最重点課題として取り組んだ。具体的には、能動輸送に関与する好塩性金属結合蛋白質(HP)と好塩性糖結合ドメイン(SBD12)を用いた融合蛋白質発現ベクターの開発を行なうために、それぞれの蛋白質を大腸菌で発現させ、精製を行った。HPは、大腸菌において大量に可溶性画分に発現し、融合タンパク質発現パートナーとして適していることが明らかになった。また、各種金属イオンに対する結合能を調べた結果、Ni,Zn, Cuなどに高いアフィニティーが認められ、市販のNiカラムへの強い結合を確認し、タグとしての汎用性が期待できる結果となった。また、SBD12についても、HPほどではないが十分量の発現量が認められ、リガンド結合能を調べたところ市販のアミロースカラム、デキストリンカラムへの結合が確認できた。また、塩依存性も確認でき、好塩性タグの特徴を示すことができた。両タンパク質の融合タンパク質発現パートナーとしての有用性が明らかになったので、現有のbeta-lactamase融合蛋白質発現ベクターを改変して、目的の新規ベクターの構築を試み、緑色蛍光タンパク質(GFP)や1本鎖抗体分子融合タンパク質の大量可溶性発現、各カラムへの結合、精製に成功した。GFPに関しては、蛍光スペクトルの測定によりnativeなタンパク質が発現していることが確認できた。1本鎖抗体分子に関しては、現在その活性を確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に策定した研究計画どおり、本年度は、「ある種のリガンドに特異的親和性を備えた好塩性蛋白質を発現パートナーとした高可溶性融合蛋白質発現系の開発」を最重点課題として取り組んだ。計画どおり、新規2種の蛋白質を用いた新しい融合蛋白質発現系の構築に成功し、その有用性を一部確認できた。「酸性アミノ酸リッチな配列」を用いた可溶性タグの開発においては、ゲノム情報が公開されている各種好塩性細菌、古細菌のデーターベースより、候補配列を検索した。実際の構築は、H24年度以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初計画どおり順調に推移しているので、平成24年度も本研究スタート時の計画どおり遂行する。具体的には、前年度に構築した新規融合蛋白質発現ベクターを用いて、実際に難発現性の有用蛋白質をつなぎ、可溶性・活性型融合蛋白質の発現を試みる。発現した融合蛋白質を精製し、プロテアーゼによって目的蛋白質をパートナーから切り離し、生物活性を測定する。最重要なターゲットとして、次世代抗体医薬として最も期待される1本鎖抗体scFvを選定し、さらにヒト由来有用蛋白質なども検討する。また、H23年度に検索した配列を実際に当該遺伝子から切り出し、有用蛋白質の直接発現用(タグなし)に構築したプラスミドに挿入し、可溶性画分への有用蛋白質の回収率を指標に各「可溶化誘導好塩性タグ」を評価する。また、アミロイド線維の可溶化をめざした可溶性タグの構築も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、80万円の直接経費の交付内定があり、すべてを物品費、おもに消耗品費に使用したいと計画している。研究は当初計画どおり順調に推移しているので、新規融合蛋白質発現ベクターの実績を積み重ねるための、培養、精製、活性測定などに使用する試薬が主なものになる。また、プラスチック製品等の消耗品が必要。
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