2012 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質の高可溶化・高機能化・治療薬開発をめざす「可溶化誘導好塩性タグ」の創製法
Project/Area Number |
23580475
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
徳永 正雄 鹿児島大学, 農学部, 教授 (20112782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 松二郎 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (20305163)
徳永 廣子 鹿児島大学, 農学部, 技能補佐員 (60381191)
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Keywords | 好塩性酵素 / 好塩性微生物 / 融合蛋白質 |
Research Abstract |
本年度は、23年度に構築した新規2種の融合蛋白質発現ベクターを含む計3種の好塩性蛋白質を超可溶性パートナーとした融合蛋白質発現系を用いて、蛋白質の分泌生産に高い能力を持つBrevibacillus chochinensisを宿主にする新しい系を開発した。3種の好塩性パートナー蛋白質はいずれも分泌蛋白質なので高い分泌能が期待されたが、予想どおりの良好な結果を得た。最も発現量が多く、安定性も優れていたβ-Lactomase-scFv(一本鎖抗体)を精製し、スロンビンにてβ-lactomaseを切り離しscFvをきれいに精製できた。このようにして得た2種類のscFvの抗体活性を測定したところ完全な生物活性を保持しており、細菌の分泌発現系を用いた一本鎖抗体の新しい生産系を確立することに成功した。 一方、「酸性クラスター配列」を用いた「可溶化誘導好塩性タグ」の作成にも取り組み上記融合蛋白発現系のパートナーに用いた好塩性蛋白より酸性アミノ酸残基を集中的に含んだ約50残基断片を切り出し、「可溶化誘導好塩性タグ」として使用できるか検討した。方法は大腸菌において封入体を形成する蛋白質に、本可溶性タグを付加して発現させ、可溶性画分への発現量の増加を指標とした。数十%の可溶性画分への増加が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①次世代抗体として期待されている一本鎖抗体scFvを選定し、好塩性蛋白質との融合蛋白として発現・精製し、パートナー蛋白を切り離したあと、活性を検証するという24年度の目標を、Brevibacillus choshinensisの分泌発現系を新たに導入することによって完全に達成した。また②「酸性クラスター配列」を切り出した「可溶化誘導好塩性タグ」についても、標的不溶性蛋白質の部分的可溶化に成功した。 一方、③超可溶性を持つ好塩性蛋白質からの規則的凝集体であるアミロイド線維形成は、相当の困難が予想されるが、いくつかの方法を検討した。2年間を終了し①はほぼ100%,②は50%,③は50%程度の達成状況と考えられ、最終年度である25年度は②と③に力を注ぐ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね計画どおり順調に推移しているので、最終年度にあたる平成25年度は「可溶化誘導好塩性タグ」の実証試験と、超可溶性の好塩性蛋白質からのアミロイド線維形成の効率化、メカニズムの解明に集中的に取り組む。 今年度に融合蛋白質としてその発現・生産に成功した一本鎖抗体scFvは、大腸菌における直接発現では封入体となるが「可溶化誘導好塩性タグ」の付加による可溶性発現をめざす。 球状蛋白質からアミロイド線維を作らせる際には、「部分的な構造の変性」が必要といわれており、酸性、高温、変性剤の添加、アルコールなどの溶媒の添加等が知られているが、供試する好塩性蛋白質を大量精製し、順次、上記の条件を検討する。その結果を元にして可溶化タグの作成を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、80万円の直接経費の交付内定があり、物品費、おもに消耗品費に使用する計画である。研究は当初計画どおり順調に推移しているので、可溶化誘導好塩性タグの実証試験、好塩性蛋白からのアミロイド形成メカニズムの解明と可溶化タグの開発を試みるため、培養、精製などに使用する試薬が主なものになる。またプラスチック製品等の消耗品が必要。
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