2011 Fiscal Year Research-status Report
結晶多形を利用したキラル有機結晶の多面的観測と不斉制御
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23590002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
桝 飛雄真 千葉大学, 分析センター, 准教授 (80412394)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 結晶多形 / キラリティー / 有機結晶 / X線回折 |
Research Abstract |
本研究は、有機結晶における結晶多形現象を積極的に利用し、結晶のキラリティー制御を実現することを目的とする。全体の計画では、まず結晶のコンポーネントとなる有機低分子の分子設計と合成を行い、結晶作成および多形探索、中でも不斉結晶化の探索を行う。続いてX線回折、電子顕微鏡といった分析手法を駆使し、結晶状態の静的及び動的挙動を観測することにより、キラル有機結晶の多面的な物性評価を行う。 平成23年度においては、申請者らのグループが研究してきた芳香族アミド、芳香族スルホンアミドおよび芳香族鎖状イミドの誘導体を合成し、その結晶化を行った。また市販の化合物においても、結晶多形によりキラリティーの有無が生じる可能性のあるものが見つかったため、その結晶化条件の探索も行った。結晶作成にあたっては、独自に開発した結晶化条件スクリーニング法を用いて、条件の最適化を行った。 現段階での結果として、結晶多形を示す例は見つかったものの、新たに不斉結晶化を起こす化合物は見つかっていない。ただし既報の不斉結晶化の例と類似した結晶構造(分子配列)を示す化合物も見つかっているため、それらの化合物の結晶化条件の範囲をさらに広げる(温度・圧力等)ことで、不斉結晶化につなげられる可能性も高いと考えられる。 また芳香族スルホンアミドにおいては、(半)溶融させることで多形転移が起こり、アキラルな結晶からキラルな結晶が生じる例が見つかっている(連携研究者との共同研究。論文準備中)。この化合物について詳細な熱分析およびNMR測定を行ったところ、特異な熱挙動とその原因として分子間水素結合ネットワークが重要であることがわかり、現在、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたスクリーニング的合成は、収率や生成物の純度の問題により実施を保留し、従来の一般的な方法による合成を行った。また一部の置換基の導入に際して、従来の方法では反応がうまく進行しないものがあり、合成法の検討に予想よりも時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている対象化合物の合成および化学修飾を早急に進める。既に得られている化合物については、結晶化を進めると共に、より厳密かつ広範な結晶化条件の制御により、多形および不斉結晶化の探索を行う。またこれまでの研究により、芳香族スルホンアミドなどで(半)溶融からの冷却過程などで特異な結晶化挙動の例が見つかっているので、特にその過程を重点的に観測し、多形制御の足がかりとなる知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
対象化合物の合成を継続して進めるため、試薬および器具を購入する。研究成果の発表のため、学会への参加(国内)を予定しているため、その旅費を支出する。対象化合物の構造解析を行うため、分析機器の利用料金を支出する。
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