2012 Fiscal Year Research-status Report
結晶多形を利用したキラル有機結晶の多面的観測と不斉制御
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23590002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
桝 飛雄真 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80412394)
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Keywords | 有機結晶 / X線回折 / 結晶多形 / キラリティー |
Research Abstract |
本研究は、有機結晶における結晶多形現象を積極的に利用し、結晶のキラリティー制御を実現することを目的とする。全体の計画では、まず結晶のコンポーネントとなる有機低分子の分子設計と合成を行う。次に様々な条件で結晶を作成し、多形探索、中でも不斉結晶化の探索を行う。続いてX線回折などの分析手法を駆使し、結晶状態の静的及び動的挙動を観測することにより、キラル有機結晶の多面的な物性評価を行う。 平成24年度までに、水素結合性部位を有する芳香族アミド、芳香族スルホンアミドおよび芳香族鎖状イミドなどのリンカーを持つ誘導体を合成し、結晶化を行った。また嵩高いアダマンタン骨格をコアに持つフェノール性分子とピリジン誘導体の共結晶化も試みた(連携研究者との共同研究)。さらに市販のβカルボリン化合物においても、結晶多形の探索を行った。これらの化合物においては、分子間水素結合が結晶構造の構築に大きく影響すると考えらえるため、プロトン性、非プロトン性溶媒の組み合わせなどを様々に変えて、結晶化条件の検討を行い、得られた結晶の構造解析を行った。 結果として、βカルボリン類においては、新たにキラルな空間群を持つ結晶多形が見つかり、また逆に、既存のキラル結晶とは異なるアキラルな結晶多形も見出された。一方、アダマンタン誘導体の共結晶および芳香族スルホンアミドの結晶については、アキラルだが特徴的ならせん型やジグザグ型の連鎖構造を持つ結晶構造が見出された。 また芳香族スルホンアミドにおいては、溶融させることで多形転移が起こり、アキラルな結晶からキラルな結晶が生じる例が見つかっている(連携研究者との共同研究)。熱分析およびNMR測定から、分子間水素結合ネットワークの挙動が明らかとなったので、現在、発表準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたスクリーニング的合成から一般的な方法による合成に切り替えたため、新規合成する化合物の数が予定よりも少なくなっている。また主に溶媒の組み合わせによる結晶化条件スクリーニングの方法はほぼ確立しているが、さらに幅広い条件検討を行うための手順の整備に予想よりも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規化合物の合成は、これまでの知見を元に数を絞り、効率的に合成を進める。既に得られている化合物については、結晶化を進めると共に、より厳密かつ広範な結晶化条件の制御により、多形および不斉結晶化の探索を行う。特に芳香族スルホンアミドなどで見られている溶融・冷却過程などでの結晶化挙動を重点的に観測し、多形制御に関する知見を得る。またその際、計算化学的なアプローチによって結晶構造の安定性などを評価し、多形発現の要因を探ると共に、その制御の手がかりとする。 さらに、不斉結晶化が見られた幾つかの化合物については、他の化合物との混合結晶化によるに不斉増幅などの応用を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
対象化合物の合成を継続して進めるため、試薬および器具を購入する。研究成果の発表のため、学会への参加(国内)を予定しているため、その旅費を支出する。対象化合物の構造解析を行うため、分析機器の利用料金を支出する。
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