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2012 Fiscal Year Research-status Report

高度に縮環した天然物ステモフォリンの全合成及び構造活性相関研究

Research Project

Project/Area Number 23590003
Research InstitutionNagoya University

Principal Investigator

下川 淳  名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (60431889)

Keywords天然物合成化学 / アルツハイマー病 / ステモフォリン
Research Abstract

アルツハイマー型認知症は重篤な記憶障害や言語障害に至る進行性の疾患であり、本人のみならず家族をはじめとした介護者に対しても長期にわたり非常に大きな負担を強いることが問題となっている。そのため人類の健康に寄与し、また増え続ける医療費を削減するためにも本疾患に対する治療方法の充実は喫緊の課題である。アセチルコリン分解酵素阻害薬はアルツハイマー型認知症治療薬としての有効性が既に広く認められている。ステモフォリンは非常に強力なアセチルコリン分解酵素阻害活性を有することが明らかにされ、半合成的な構造活性相関研究からその分子全体の骨格が活性に影響していることが判明している。網羅的な構造活性相関研究を行うには非常に込み入ったカゴ状構造を持つ分子全体を自由に改変できる技術を開発することが必要となる。そのために本研究は誘導体合成研究を志向した全合成研究及び誘導体合成研究を執り行なうことを目的としている。コリン作動性仮説によればアルツハイマー型認知症は脳内アセチルコリンの減少に由来する。脳内のアセチルコリン分解酵素が可逆的に阻害されることで脳内アセチルコリン量が増加し、その結果起きる脳内コリン作動性神経系の賦活化により認知症の進行を遅らせることが可能になると考えられている。そのため現在ではエーザイ(株)のアリセプトをはじめとするアセチルコリン分解酵素阻害薬がアルツハイマー型認知症に対する治療薬として最も多く使われている。そこで、新たな骨格を有するアセチルコリン分解酵素阻害薬のリード化合物としてステモフォリンの類縁体合成を幅広く行うべく研究を行っている。24年度はγ-イリデンテトロン酸骨格の選択的な合成法について中心的に検討を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究はおおむね順調であると言える。これまでの重要な展開としては、目的としていた分子内1,3-双極子環化付加反応が予想通りの選択性にて進行し、所望のラクトン骨格、イソキサゾリジン環の立体化学の制御が実際に行えたことを挙げることができたと報告していた。引き続くモリブデンカルボニル錯体を用いる窒素-酸素結合の切断と引き続くラクタム環化反応、およびヨウ素化体を経由するカルボニルα位での脱ヒドロキシ化反応を行うことによって目的の炭素骨格を有する中間体を形成することに成功している。以上の変換はステモフォリンの合成において最も困難な点である縮環骨格の構築法に新たな方法論を提示できたという点で画期的であった。この後、特徴的なアセタール骨格を構築するために検討を行った結果、スルホキシドの脱プロトン化を引き金とする環化反応と、引き続くプメラー反応によってαケトラクトン環を構築できることを見いだしている。24年度は、αケトラクトン骨格から増炭反応によりラクトンを構築することに成功した。これにより、既存の方法に従うことでステモフォリンの合成ができる可能性が非常に高くなったと考えられ、目的に近いところまで来ていると考えている。さらにγ-イリデンテトロン酸骨格の新規な選択的合成法についての検討も行っている。OvermanやOlivoらによって報告されている手法ではγ-イリデンテトロン酸骨格の幾何異性体選択的な合成が難しいことから、独自の導入法について検討を重ねているが、これまでのところ成功していない。

Strategy for Future Research Activity

ステモフォリンの合成に向けて次の課題は二重結合の立体化学を制御したγ-イリデンテトロン酸骨格の構築である。通常テトロン酸とカルボニル基との反応によって二重結合を構築する場合、高いEZ選択性は期待できないと考えられる。そこで我々は異性化を伴う形での変換を計画している。新規手法開発が難しい場合は類縁体合成という目的を実現することを第一に考慮し、既存の方法論を応用展開することにより、合成を行うことだけは確保することとする。本合成法は現時点でも部分的な改変が容易になる形式の合成になることが予想される。そのため、類縁体の合成においては多様性が期待できる。このような理由のため、多くの類縁体を合成することを計画に入れている。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

・消耗品としては有機化学実験の基質、反応試剤となる有機試薬及び無機試薬、基質、試薬の溶解、後処理および化合物の精製のために用いる溶剤、フラスコ、冷却管等のガラス器具、化合物精製のための分離用担体が必要となる。
・研究代表者、研究分担者、および研究協力者の成果発表のための旅費が必要となる。また研究協力者との研究打合せのための旅費が必要となる。また、成果発表とあわせて最先端情報の収集を目的として海外で開催される学会へ参加することとし、外国旅費が必要となる。
・研究の結果得られる各種サンプルの整理および活性評価のためのサンプル調製のための研究補助に対する謝金が必要となる。また外国語論文原稿の校閲のために、予算が必要となる。
・研究協力者との研究打合せのための会議費が必要となる。また研究打合せのための配布資料や研究成果公表のための印刷費が必要となる。各種郵便物およびサンプルの活性評価先への送付のために通信費が必要となる。研究成果をまとめた論文投稿のために投稿料が必要となる。

  • Research Products

    (7 results)

All 2013 2012 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (3 results) Remarks (2 results)

  • [Journal Article] Modified McFadyen–Stevens reaction for a versatile synthesis of aliphatic/aromatic aldehydes: design, optimization, and mechanistic investigations2013

    • Author(s)
      Yuri Iwai, Takashi Ozaki, Ryo Takita, Masanobu Uchiyama, Jun Shimokawa, and Tohru Fukuyama
    • Journal Title

      Chemical Science

      Volume: 4 Pages: 1111-1119

    • DOI

      10.1039/C2SC22045H

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Total Synthesis of Gelsemoxonine2012

    • Author(s)
      Jun Shimokawa, Takaaki Harada, Satoshi Yokoshima, and Tohru Fukuyama
    • Journal Title

      Pure and Applied Chemistry

      Volume: 84 Pages: 1643-1650

    • DOI

      10.1351/PAC-CON-11-10-25

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] エリスリナアルカロイドの合成研究2012

    • Author(s)
      海原浩辰、下川淳、福山透
    • Organizer
      第102回有機合成シンポジウム2012年【秋】
    • Place of Presentation
      早稲田大学
    • Year and Date
      20121108-20121109
  • [Presentation] 特異な縮環骨格を持つ化合物群の包括的合成を目指した研究2012

    • Author(s)
      下川淳
    • Organizer
      第47回天然物化学談話会
    • Place of Presentation
      阿蘇プラザホテル
    • Year and Date
      20120704-20120706
  • [Presentation] エリスリナアルカロイドの合成研究2012

    • Author(s)
      海原浩辰、下川淳、福山透
    • Organizer
      第63回有機合成化学協会関東支部シンポジウム
    • Place of Presentation
      東京理科大学 野田キャンパス
    • Year and Date
      20120519-20120519
  • [Remarks] 名古屋大学大学院創薬科学研究科有機合成化学分野

    • URL

      http://www.ps.nagoya-u.ac.jp/os/

  • [Remarks] 天然物合成化学教室/福山研究室

    • URL

      http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~fukuyama/index-j.htm

URL: 

Published: 2014-07-24  

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