2012 Fiscal Year Research-status Report
分子認識型軸性不斉触媒を用いる多官能性分子の位置・立体選択的反応の開発
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23590006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古田 巧 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30336656)
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Keywords | 分子認識 / アシル化 / 求核触媒 / 一般塩基 / 位置選択的反応 |
Research Abstract |
前年度までに、ピリジル基とカルボキラートイオンを剛直なアリールスペーサーで連結した一連のビアリール型 DMAP 触媒を合成し触媒活性を評価した。その結果、ナフタレン環の 1,8-位にそれぞれ DMAP およびカルボキラートを持つ触媒が特異的に高い活性を持つことを明らかにした。今年度はこの結果を受け、立体構造解明と遷移状態の計算により、この高活性触媒が持つカルボキラートの精密な位置を精査した。 まず本触媒の X 線構造解析を行ったところ、カルボキシル基はピリジン環に向き合って約 2.9 オングストロームの距離に存在することがわかった。さらに、対応する N-アセチルピリジニウムイオンに対するメタノールの付加の遷移状態を計算したところ、その分子内カルボキシラートイオンが一般塩基として機能し、アルコールを脱プロトン化することでアシル化反応を加速することを明らかにした。本研究結果は、カルボキシラートの位置を制御することで、触媒活性を増強できることを示しており、DMAP 型求核触媒の新たな設計指針を発信することができた。 また、遷移金属触媒系による多い官能性分子の位置・立体選択的反応の開発を目的に、ビナフチル型アミノ酸を配位子としたロジウムカルボキシラート触媒の創製も検討し、その合成も達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X 線構造解析、DFT 計算により一般塩基として機能するカルボキシラートイオンの位置を特定することが出来たため、研究はおおむね順調に進行していると言える。この知見は、DMAP 型求核触媒の設計に新しい知見を与えるものであり、さらなる分子認識型求核触媒開発への手がかりとなるものである。また、新規な光学活性ロジウムカルボキシラート触媒の創製も達成し、分子認識型遷移金属触媒への端緒を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に明らかにしたカルボキシラートイオンの位置を触媒設計に活用し、さらなる官能基化を施すことで分子認識型求核触媒へと発展させる。また、合成を達成した新規光学活性ロジウムカルボキシラート触媒の触媒活性を検討するとともに、触媒骨格への官能基化も行う。C-H アミノ化やシクロプロパン化などの立体選択性も含めた検討を行い、位置選択的反応への手がかりを得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に遷移金属触媒反応開発に向けた設備を整えるために研究費を使用する。また、生成物の光学純度を検討するために用いる HPLC 用キラムカラムの購入などにも研究費を使用する。
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Research Products
(13 results)