2011 Fiscal Year Research-status Report
チューブリンを分子標的とする海洋無脊椎動物由来の新規抗がん剤素材の探索研究
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23590008
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山田 耕史 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00253469)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | チューブリン / 抗がん剤 / 海洋無脊椎動物 / 棘皮動物 / ナマコ |
Research Abstract |
がん克服の実現のためには、より有効な新規抗がん剤を創出することが不可欠である。本申請研究では、新規抗がん剤開発のためのシード化合物の創製を目指した基礎研究として、1)がん細胞の分裂等の細胞機能に大きく関与しているチューブリンの重合・脱重合を阻害する化学物質を九州西岸海域産海洋無脊椎動物から探索し、2)その構造解明と構造活性相関の検討を行い、3)活性アナログ体開発のための基礎データとして、活性発現に必須な構造単位を解明することを目的として行う。平成23年度は、下記の手順で、海洋無脊椎動物のスクリーニングと活性成分の抽出・単離を主に行った。1)九州西岸海域に豊富に生息している海洋生物、特に、海洋無脊椎動物の採集を行った。特に今回は、棘皮動物(ナマコ類)を中心に採集を行った。2)採集した各試料動物を処理して、粗抽出物(n-hexane、酢酸エチル、n-BuOH )を得た。3)予試験として、各粗抽出物の一部について SephadexLH-20 を用いたゲル濾過や Diaion HP20、シリカゲルを用いた各種カラムクロマトグラフィーを行い、粗分画を調製した。4)第一次活性試験として、得られた各粗分画について、神経成長因子 (NGF) 共存下で PC12 細胞に対する神経突起伸展作用を調べ、突起の伸展作用を示し、チューブリン機能に影響を与えている可能性を有する粗各分並びに粗抽出物を選出した。5)現在、ナマコ類から得られた高極性脂質画分に顕著な活性を見出すことができ、その活性成分の分離を、各種オープンカラム、中圧液体、並びに、高速液体クロマトグラフの各装置等を用いて、活性を指標にしながら、現在微量成分に至るまで徹底的に活性成分の分離・精製を行っている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりに、海洋無脊椎動物、特に、平成23年度は、棘皮動物ナマコ類を採集し、処理して粗抽出物を作成し、高極性脂質画分並びに低極性脂質画分等を調製し、それぞれの画分について、一次スクリーニングを行い、活性を示す画分を見出すことができた。現在、当初の計画どおり、それぞれの画分の活性成分を、各種カラムクロマトグラフィーを行い、分離・精製中である。尚活性試験としては、第一次活性試験として、得られた各粗抽出物について、神経成長因子 (NGF) 共存下で PC12 細胞に対する神経突起伸展作用を調べ、突起の伸展作用を示し、チューブリン機能に影響を与えている可能性を有する抽出物を選出した。また、活性成分の分離精製操作には、ゲル濾過、シリカゲルカラムクロマトグラフ、中圧液体クロマトグラフ装置、高速液体クロマトグラフ装置等を用いて行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
活性成分のチューブリン重合・脱重合作用の検討と精密構造解析を以下の手順で行う。1)単離した活性成分の作用点がチューブリン/微小管であることを確認するために、第二次活性試験として、ヒト線維肉腫細胞HT1080の細胞質微小管に対する作用を、抗チューブリン抗体を用いた免疫染色法で解析し、高感度かつ高い特異性をもってチューブリン重合・脱重合への作用を確認する。2)チューブリン重合・脱重合作用を示すことが認められた成分について、各種機器スペクトル (NMR、MS、IR、UV スペクトル) データならびに化学的手法を用いて、化学構造の解明を行う。3)構造の明らかになった活性成分について、さらに詳細(定量的)にチューブリン重合・脱重合への作用を調べる。特に、チューブリンの重合/脱重合に影響を及ぼすことが知られているcolchicine、vinblastine、vincristine や taxolを Positive Controlとして用い、活性強度を比較し、Control 物質より顕著な活性を示す成分の検索に努める。更に、活性成分の構造活性相関の検討と活性発現構造単位の解明を以下の手順で行う。1)得られた活性成分のうち、Control 物質より顕著な活性を示す化合物を出発物質として、その誘導体を調製する。2)天然由来の成分並びに、調製した誘導体について、HT1080細胞を用いて、チューブリン重合・脱重合への作用を詳細に調べる。3)得られた結果を基に、構造活性相関の検討と活性発現に必須な構造単位の解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
活性成分の精製に必要なHPLC用(ODS 分取用、C30 分取用)カラム並びに有機溶媒(n-hexane、 acetone、 酢酸エチル、メチルアルコール、HPLC 用メチルアルコール、HPLC 用アセトニトリル)、活性試験に必要な細胞培養培地、試薬など消耗品に研究費を充てる。また、成果発表のための論文投稿慮や学会参加のための旅費に充てる。
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