2012 Fiscal Year Research-status Report
不斉カルボン酸によるホウ素試薬および関連試薬の活性化に基づく新規触媒反応の開発
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23590009
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉浦 正晴 熊本大学, 生命科学研究部薬, 准教授 (00376592)
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Keywords | 有機分子触媒 / 触媒反応 / カルボン酸 / ホウ素試薬 |
Research Abstract |
ボロン酸のα,β-不飽和ケトンへの不斉共役付加反応において、O-モノアシル酒石酸が有用な触媒となることを見出したことを契機に、『不斉カルボン酸を基軸とするシンプルな触媒系を用いて、ホウ素試薬や関連試薬および入手容易な原料を活性化することにより、新規な触媒的不斉合成法を開発すること』を目的に本研究を展開している。1年目の平成23年度は、O-モノアシル酒石酸の触媒作用機構および回収・再使用の検討、不斉アリル化への展開を行った。引き続き本年度に得られた成果を要約する。 (1)O-モノアシル酒石酸を触媒として用いて、共役ジエノンに対するスチリルボロン酸の不斉共役付加を検討した結果、モノスチリル化体を良好な選択性で得ることができた。さらに、その生成物をRu触媒による閉環メタセシス反応(RCM)に附したところ、抗腫瘍活性物質TEI-9826の合成中間体を含む光学活性シクロペンテノンを合成することができた。RCMの反応条件に関する興味深い知見も得られた。 (2)計算化学による触媒作用機構の解明に向けて、アルゼンチン・ロサリオ国立大学のPellegrinet博士との共同研究を開始している。本年度は博士を熊本大学に招聘し、10日間の滞在期間にディスカッションの機会を持つことができた。触媒の1つのカルボキシル基が徐々に水素結合することで遷移状態が規定されている可能性が示唆されていることから、酵素の触媒作用と関連づけて検討を行っているところである。 (3)触媒活性および選択性の向上を目指して、酒石酸の1つの水酸基に様々な電子求引基の導入を試みた結果、構造展開の容易なアロイル基を見出すことができた。 (4)ボロン酸以外の関連試薬の活性化についても検討を開始しているが、未だ有意な結果を得ていない。この点は、次年度も引き続き検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、「不斉共役付加反応の新しい展開」および「触媒の作用機構および構造展開」について更なる知見を得ることができた。関連試薬の活性化や新反応への展開については進展を見ることができず、成果発表(学会および論文)に関しては不十分であったと考えている。しかし、多くの知見が積み上がって来ているので、次年度に結実させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
以下に具体的な研究内容を計画している。 (1)「共役ジエノンに対する不斉共役付加および閉環メタセシス反応による光学活性シクロペンテノン合成」を更に展開し、成果をまとめる。 (2) Pellegrinet博士との共同研究により、実験および計算化学の双方から触媒作用機構の解明を行う。またその知見を基に、新しい触媒反応への展開を目指す。 (3)触媒活性および選択性の向上を目指して、見出した新しいアロイル基を中心に触媒の構造展開を行う。回収・再使用の検討も合わせて行う。 (4) ボロン酸および関連試薬(ケイ素、亜鉛、カルシウム試薬など)の活性化に基づき新しい触媒反応の開拓を引き続き目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、学部3年生1名の協力を得て、上述の研究を展開する計画である。研究費は、試薬、有機溶剤、ガラス器具などの消耗品の購入および研究成果を学会や学術論文に公表するための費用に充てる。
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Research Products
(8 results)