2012 Fiscal Year Research-status Report
生理活性物質汎用合成を指向した新規鉄塩触媒高効率不斉反応系の開発
Project/Area Number |
23590011
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松永 浩文 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (10274713)
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Keywords | 鉄 / 触媒 / エポキシ化 / 不斉配位子 / 1,2-ジアミン / キラル合成子 / 生理活性物質 |
Research Abstract |
本研究では、安価且つ低毒性の鉄塩を触媒とした効率良い不斉反応系の開発を目的とする。即ち、鉄塩を利用した触媒的新規エポキシ化反応の開発を行うと共に、本反応系に不斉配位子を添加した高エナンチオ選択的不斉反応系の創出を目指す。更に、これら知見を基に、2-イミダゾロンの不斉エポキシ化を経由した光学活性1,2-ジアミン類キラル合成子の高効率大量合成や、生理活性物質類の汎用合成、更には、新規反応系の開拓を目指す。平成24年度は、前年度までに得られた本研究に関する基礎的知見をもとに、研究の発展・展開を主眼に次に示す研究を主に実施するとともに幾つかの興味深い結果を得た。 1)2-イミダゾロンの鉄塩―過酸化水素によるエポキシ化において、これまではin situで調製される鉄錯体を利用していたが、これでは触媒活性種や反応機構などの議論は困難であるため、Fe(III)-dipicolinic acid錯体を新たに別途合成し、過酸化水素水による反応系に適用した所、添加するアミンの種類及び等量に依存するものの、1,2-ジアミン類のキラル合成子である4-アルコキシ-5-ヒドロキシ体を収率良く生成する事を明らかにした。更に、添加するアミンを塩酸塩に変更しても反応が速やかに進行するという興味深い知見が得られた。 2)4-アルコキシ-5-ヒドロキシ-2-イミダゾリジノンの4、5位置換変換反応を試みたところ、当研究室により開発した既知法により容易に変換が進行する事が明らかとなった。更に、2つの窒素位の保護を工夫する事で任意のアミン部位を保護した1,2-ジアミンの合成経路の開拓に成功した。 3)N-ベンゾイル-2-イミダゾロンの鉄塩―過酸化水素によるエナンチオ選択的不斉エポキシ化を検討した。昨年度までの知見より得られた各種不斉配位子を用いたが、残念ながら低いエナンチオ選択性しか認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでその活性中心錯体構造が全く予見できていなかった本反応系においてFe(III)-dipicolinic acid錯体がその前駆体として間違いなく関与しているというのを明らかにした事は、反応時の錯体構造及び反応機構の予測やそれらを基にした高効率な不斉配位子の設計など、今後の研究の進展に重要な情報を与えるきっかけに充分なり得るものである。また、4-アルコキシ-5-ヒドロキシ-2-イミダゾリジノンから1,2-ジアミンへの合成経路の開拓にも成功した。エナンチオ選択的不斉エポキシ化において未だ低いエナンチオ選択性に留まっている事は残念ではあるが、本年度の研究予定は概ね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、2-イミダゾロンのエポキシ化においてFe(III)-dipicolinic acid錯体を鉄触媒前駆体とした効率的酸化反応系の確立に注力すると共に、未だ低いエナンチオ選択性に留まっている不斉配位子の設計・開拓を目指す。また、これら知見をtrans-スチルベン等を基質としたエポキシ化反応系に適用し、その汎用性拡大を目指す。更に、鉄触媒下での反応例が殆ど報告されていないとともにその反応制御が困難であるハロゲン原子移動型ラジカル反応(Kharasch反応)やオレフィン類のアリル位酸化反応などについても、これまでに得られた各種知見を生かして、鉄触媒による反応系の効率化並びに選択性の向上について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低温下での反応条件の検討や鉄錯体・中間体などの調製の際に必要とされる低温恒温水槽は平成23年度に購入し、本研究の推進に大きく貢献している。 平成25年度は平成24年度同様、これまでの研究結果をもとに展開していくため、研究費は主に試薬や溶媒類、ガラス器具や研究に付随する消耗品の購入に充当する。
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