2011 Fiscal Year Research-status Report
ケモエンザイマティック合成による高水溶性タキソール誘導体の開発とその応用
Project/Area Number |
23590013
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
下田 恵 大分大学, 医学部, 准教授 (40284153)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 有機合成 / 生体触媒 |
Research Abstract |
本研究では、水溶性を飛躍的に向上させた高水溶性タキソール誘導体の創製を行うため、まず、高水溶性タキソール誘導体の合成を効率的に行うためのケモエンザイマティック合成法の開発と確立を行った。本ケモエンザイマティック合成法は、スペーサーの結合課程に化学的な合成手法を用い、オリゴ糖などの糖鎖部分の合成に酵素や植物培養細胞などの生体触媒を使用した糖転移反応を用いた、効率的な合成手法といえる。今回、生体触媒として使用した植物培養細胞は、主に筆者らの研究室において誘導し、継代培養したものを変換実験に用いた。使用した培養細胞は、ユーカリ、ニチニチソウ、キョウチクトウ、タバコ、ニチニチソウ(ホルモンフリー培地における培養)である。植物培養細胞は培養用フラスコ内の新鮮な寒天培地に植え継いで、3週間ごとに継代培養を行った。変換実験に用いるため、均一なサスペンション状態の培養細胞へ変化させ、使用した。この培養細胞を新鮮な液体培地に移植して、同じ培養条件で1週間前培養を行った。培養細胞への基質の投与はクリーンベンチ内において無菌状態で行った。基質を前培養した細胞に投与し、一定期間、同じ振盪条件で反応を行った。細胞部分はメタノール浸漬し、メタノール抽出物を有機溶媒と水で分配し、培地部分は有機溶媒で抽出した。変換生成物を単離・精製した後に、スペクトル測定により構造解析を行った。変換反応の経時的追跡は、上記と同様にインキュベートさせた複数のフラスコについて、一定時間ごとにフラスコ一本から反応物を抽出することにより行った。生成物の相対量は、抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により求めた。その結果、ユーカリ植物培養細胞が、ゲンチオオリゴ糖の生産能力が高いことが分かった。ユーカリ植物培養細胞は、高水溶性タキソール誘導体を生産する上で、有効な生体触媒となると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、水溶性を飛躍的に向上させた高水溶性タキソール誘導体の創製を行うため、ケモエンザイマティック合成法の開発を行った。その課程で、オリゴ糖部分にゲンチオオリゴ糖をもつ誘導体の合成を可能にする生体触媒を発見している。これまでに申請者はマルトオリゴ糖をもつ誘導体の合成に成功しているため、本年度の成果は、ケモエンザイマティック合成法を発展させる成果であるため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今後、ケモエンザイマティック合成法の展開と、高水溶性タキソール誘導体の合成、合成した高水溶性タキソール誘導体の機能解析へと展開していく。本年度中に、ケモエンザイマティック合成に必要な高速液体クロマトグラフィーの選定が完了せず、次年度に使用する予定の研究費が生じている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、高速液体クロマトグラフィーの選定を行い、その購入のために研究費を有効に使用する。高水溶性タキソール誘導体の合成に必要な生体触媒を使用する反応試薬、培養試薬、高速液体クロマトグラフィー用カラム、高速液体クロマトグラフィー用有機溶媒の購入に研究費を使用する。
|
Research Products
(2 results)