2012 Fiscal Year Research-status Report
ケモエンザイマティック合成による高水溶性タキソール誘導体の開発とその応用
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23590013
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
下田 恵 大分大学, 医学部, 准教授 (40284153)
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Keywords | 有機合成 / 生体触媒 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き、高い水溶性を持つタキソール誘導体の創製を行うため、糖鎖を有するタキソール誘導体の合成を効率的に行うためのケモエンザイマティック合成法の開発を行った。ケモエンザイマティック合成法として、スペーサー部分は化学的な手法で縮合反応を用い、糖鎖部分の合成において、酵素などの生体触媒を使用した糖転移反応を用いて行う。今年度、生体触媒として使用した酵素は、マルトオリゴ糖を生成する市販の酵素であるシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを用いた。シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを含む緩衝溶液中に基質となるグリコール酸と共に、糖供与体としてマルトースを添加して、37度の恒温槽において、インキュベートを行った。反応は液体クロマトグラフィーを用いて生成物の収量が最大となる時点で停止した。反応溶液をグルコシダーゼ処理することにより、前反応で生成したマルトオリゴ糖を二糖体に変換した。反応溶液はシリカゲルショートカラムを通して酵素を除去したのちに凍結乾燥を行った。凍結乾燥の後、水を添加して完全に溶液状態として有機溶媒と水で分配した。変換生成物を単離・精製した後に、スペクトル測定により構造解析を行った。変換反応の経時的追跡は、上記と同様にインキュベートさせた複数のフラスコについて、一定時間ごとにフラスコ一本から反応物を抽出することにより行った。生成物の相対量は、抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により求めた。その結果、生成物には、大量のマルトシド二糖体が含まれることが分かった。シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとグルコシダーゼは、マルトシド二糖体を持つ高水溶性タキソール誘導体を生産する上で、有効な生体触媒となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、水溶性を飛躍的に向上させた高水溶性タキソール誘導体の創製を行うため、ケモエンザイマティック合成法の開発を行った。その課程で、オリゴ糖部分にマルトシド二糖体をもつ誘導体の合成を可能にする生体触媒としてシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとグルコシダーゼが有効であることを発見している。これまでに申請者はゲンチオオリゴ糖をもつ誘導体の合成に成功しているため、本年度の成果は、ケモエンザイマティック合成法を発展させる成果であるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、実際に高水溶性タキソール誘導体の創製を行うためケモエンザイマティック合成法の展開と、誘導体の合成、高水溶性タキソール誘導体の水溶性、抗腫瘍性活性の解析へと展開していく。ケモエンザイマティック合成法の展開として、キシロオリゴ糖を生産する能力を持つ培養細胞を生体触媒として使用して、スペーサーにキシロオリゴ糖を結合させる。次に、スペーサー部分とタキソールを、化学的な縮合反応により結合させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度中に、高水溶性タキソール誘導体の機能解析が完了せず、次年度に使用する予定の研究費が生じている。翌年度分として請求した助成金を使用する研究と並行して誘導体の機能解析の研究を行い、計画を遂行していく予定である。高水溶性タキソール誘導体の合成に必要な生体触媒を使用する反応試薬、培養試薬、機能解析用試薬、高速液体クロマトグラフィー用カラム、高速液体クロマトグラフィー用有機溶媒の購入に研究費を使用する。
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