2013 Fiscal Year Research-status Report
触媒的三級グリコール開裂反応を用いた有機彫刻法による炭素骨格新規構築法の開発
Project/Area Number |
23590024
|
Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
桐原 正之 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (40262539)
|
Keywords | グリコール開裂 / 超原子価ヨウ素 / 触媒的酸化反応 / 次亜塩素酸ナトリウム / 環境調和型反応 / バナジウム触媒 / 酸素酸化 / 有機彫刻 |
Research Abstract |
1. 環境調和型触媒的グリコール開裂反応の開発:昨年度までに、文献に従って閉環メタセシス反応を用いて合成した二環性の三級グリコールは、バナジウム触媒を用いた酸素酸化によるグリコール開裂に対しては、全く不活性であることが判明していた。しかし超原子価ヨウ素試薬を用いるとこのような二環性三級グリコールの開裂が行えることも見いだしていた。しかしこの場合、超原子価ヨウ素試薬は化学量論量必要であるので、本年度はこの反応の触媒的酸化反応化を検討した。その結果、ヨードベンゼンを触媒として用い、共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いると、効率良くグリコール開裂をおこせることを見いだすことができた。 2. 分子内環化反応を用いた各種環状三級グリコールの合成と開裂反応:文献に従って合成した1,2-ジシリロキシシクロアルケンに対して、アルケンとの[2+2]光環化反応を行い、三級グリコール体の合成を行った。また1,2-ジケトンの二つのカルボニルに対し、プロパルギル基をそれぞれ求核付加させて三級ジオールとし、これにアルキンとをRh触媒による[2+2+2]型環化反応を行うことにも成功した。これらのグリコールはバナジウム触媒を用いた酸素酸化では開裂できなかったが、超原子価ヨウ素試薬を用いる方法と、ヨードベンゼン触媒-次亜塩素酸ナトリウムを用いる方法では開裂することができた。 3. バナジウム触媒を用いた酸素酸化の詳細の検討:バナジウム触媒を用いた酸素酸化によるグリコール開裂は、本研究で用いるグリコール類に対しては、いずれも有効に作用しなかった。その原因を探るため、バナジウム触媒を用いた酸素酸化反応をさらに詳細に検討した。その結果、本反応はグリコールなどの反応点の立体障害が大きくなると、反応しなくなることが判明した。本反応の酸化活性種は、バナジウム化合物に溶媒等が配位した、かなり嵩大いものであると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりには研究は進まなかったが、バナジウム触媒を用いた酸素酸化のかわりに、ヨードベンゼン触媒を用いた次亜塩素酸ナトリウム酸化を用いることで開裂反応を行なえることを見いだすことができた。この場合は次亜塩素酸ナトリウムにより、ヨードベンゼンが超原子価ヨウ素化合物へと酸化され、これがグリコール開裂をおこなってヨードベンゼンになり、再び次亜塩素酸ナトリウムにより超原子価ヨウ素化合物へと酸化されて触媒サイクルが成立すると考えられる。なお、超原子価ヨウ素化合物触媒(またはヨードアレン触媒)を用いた酸化反応で、共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムをもちいた例は全く報告されておらず、我々の反応が初めての例である。次亜塩素酸ナトリウムは反応終了後は無害な食塩を生じるだけなので、環境調和型の反応である。 また、分子内環化を利用する三級グリコール合成法として、Rh触媒による[2+2+2]型環化反応を用いることができることを見いだすこともできた。さらにバナジウム触媒を用いた酸素酸化反応の詳細な検討から、本反応の酸化活性種は、バナジウム化合物に溶媒等が配位した、かなり嵩大いものであることが判明した。 以上の成果を挙げることができたため、目的は達成されたと考えていえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヨードベンゼン触媒による次亜塩素酸ナトリウム酸化によるグリコール開裂の反応条件をさらに詳細に検討して、より効率の良い反応条件を見いだす。さらにヨードベンゼン触媒による次亜塩素酸ナトリウム酸化が、グリコール開裂以外の酸化反応でも有効かどうか検討する。また分子内環化反応を用いた各種環状三級グリコールの合成としては、新たに分子内Diels-Alder反応を活用したものを検討する。
|