2012 Fiscal Year Research-status Report
海洋生物由来菌類の産生する抗がん剤のシーズの探索及びリード化合物の開発
Project/Area Number |
23590028
|
Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
山田 剛司 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (20278592)
|
Keywords | 海洋生物 / 細胞毒性物質産生菌 / Trichoderma harzianum / Aspergillus fumigatus / Chaetomium globosum / 新規細胞毒性物質 / 天然有機化合物 |
Research Abstract |
種々の海洋生物を採取し、それらから分離した菌類の代謝産物についてスクリーニングし、細胞毒性物質産生菌を選出するという昨年度の研究により見出された菌類の代謝物について、活性本体およびその類縁化合物を探索することを目的とし引き続き大量培養を行った。このうちムラサキウニから分離した真菌Trichoderma harzianumより、3種の新規物質を単離し、それらの平面構造を決定した。目下、これらの絶対立体構造を検討中である。また、クロイソカイメンより分離した真菌(未同定)の代謝産物より2種の新規物質を単離し、それらの平面構造を決定した。これらは前例が稀有な構造を有している。絶対構造および詳細な活性の検討にはさらなる補充必要があり(補充は培養により可能)、今後の課題である。他の細胞毒性物質産生菌の代謝物についても単離には至ってないものの優位な活性を示す分画が認められており今後の分離・精製に期待が持てる。さらに以前からの継代培養菌においては沖縄産ラッパウニから分離した真菌Aspergillus fumigatusより1種の新規細胞毒性物質を単離した。この化合物は、前例の少ないユニークな炭素骨格を有しており、その相対立体構造をNMRをはじめ各種スペクトルの解析により確定し、論文報告した。また、海水魚ボラより分離した真菌Aspergillus fumigatus(上述とは別の菌)より本研究計画の目的の一つである構造活性相関を検討するうえで重要な化合物の追加に成功した。これらの細胞増殖阻害活性は弱いものの、絶対構造とCDスペクトルのCotton効果の間に興味深い相関を見出すことができ、今後の天然有機化合物の構造決定に有意な情報を与えることが期待できる。同じくボラより分離した真菌Chaetomium globosumから新たな類縁体を単離し、その絶対構造及び生理活性について論文で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究計画に基づいた研究により見出された細胞毒性物質産生菌を大量培養し、それらのうち数種の菌類の代謝産物から新規細胞毒性物質の単離し、構造を決定する当初の目的は達することができた。また、構造活性相関検討のための類縁体の単離も少しずつではある進行している。 さらに、従来から継代培養を行ってきた細胞毒性物質産生菌の代謝物からは微量成分の補充に成功し、その相対立体構造を決定することができ、論文で公表した。また、別の継代培養菌については、同一平面構造を有する16種類の立体異性体における構造活性相関の検討とCDスペクトルによる絶対配置の帰属が完成しつつある。その他の継代培養菌についても新たに新規化合物を単離し、論文により続報の公表を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き見出した有用な菌の代謝産物について検討を行い、新規細胞毒性物質の単離及びその化学構造の決定を第一の目標とする。しかる後、得られた生理活性物質及びその類縁体の活性から活性発現に必要なコア構造を明らかにし、それらをシーズとして、新たな機能性リード化合物の開発を目指す。また、活性試験については、これまでの細胞増殖試験に加え、ヒト培養がん細胞パネル試験及び各種分子標的スクリーニング(化学療法基盤情報支援班に依頼)を行い、これら化合物の分子レベルでの作用発現機構の解明及び新たな作用機序の発見を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
得られた新規化合物の絶対構造の決定、リード化合物創製などを効率よく行うためには、シーズとなる化合物の補充が第一となる。大量培養して得られた代謝物を大量分取するためには、Shephadex LH-20及びシリカゲルなどのカラム充填剤並びにHPLCにおけるセミ分取用パックドカラムの消耗が著しくなる。特に、さまざまな官能基で修飾されたODSをもちいたHPLC用パックドカラムを化合物の性質により使い分けていく必要がある。以上の理由から、本年度も分離・精製に関する消耗品が研究費の多くを占めることが予想される。また、研究が進行するに際し、化合物も微量となり、少容量のサンプル管で扱うことが多くなる。このような背景からサンプル管のまま、内容物の溶媒を濃縮留去できる簡易的な器具も購入したいと考えている。
|
Research Products
(3 results)