2011 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病治療薬の開発を目指したネオビブサニン類の作用機序の解明
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23590033
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
今川 洋 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (80279116)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機化学 / 生理活性 / アルツハイマー病 / 神経科学 / 薬学 / 有機合成化学 |
Research Abstract |
本学の福山らは,神経のモデル細胞であるPC12細胞を用いた活性評価系を用いて,神経突起伸展促進活性を有する,多種の低分子化合物の単離構造決定に成功している。中でもネオビブサニン類と呼ばれる一連の化合物が,比較的強い活性を有することが明らかとなっており,認知症治療薬のシード化合物として期待されている。私たちはこれまでに,それらの一つネオビブサニンBの全合成に成功しており,さらに構造を単純化した誘導体を合成,これが天然物を越える活性を示す事を明らかにしている。また活性を保持した蛍光標識体の合成に成功し,その細胞内での挙動に関する知見を得る事に成功している。本年度は,さらに詳細な作用機序解明を目的に,光親和性標識を持った分子の合成を進めた。光親和性標識部には,比較的安定で扱い易いベンゾフェノン型を採用する事とし,またリンカー部位には,水溶性を稼ぐ目的でポリエチレングリコール鎖を用いることにした。先に見出している単純な構造を持つ活性化合物のどの部位にリンカーを導入するか決定する目的で,構造中の幾つかの場所に,リンカーの足場となる各種官能基を置換した誘導体を合成,それらの活性を評価して,活性に影響を及ぼさない位置を明らかにすべく検討した。その結果,天然物の1位に当たる位置に,プロパルジル基を導入した誘導体が,活性を保持している事が明らかとなり,1位へのリンカーの導入が最適であることが分かった。光親和性標識体の合成は,残り2段階を残すのみとなっており,現在ビオチン部の導入法を検討している。今後,標識体合成を完了し,これを用いて活性物質と相互作用する生体内分子の検出を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず光親和性標識体の合成に際しての準備段階として,標識する活性化合物のどの位置にリンカーを導入するのが適当か決定する事が重要であった。この問題を解決するために,活性化合物の構造中の様々な位置に,官能基を持つ誘導体を多数合成し,その活性を評価する事で,リンカーを導入しても活性に影響を及ぼさない部位を決定することが出来た。次にリンカーの導入であるが,当初の計画では,平成23年度中に,長さが異なる直鎖状のリンカーを持つ数種の光親和性標識体の合成を完了する事になっていたが,現在,直鎖状分子に加えて,より効率的な分子補足が出来ると考えたリンカー側鎖が分岐した標識体も合成標的に加えて研究を展開している。側鎖が分岐した光親和性標識体は,合成完了まで残り2段階に迫っており,概ね当初のスケジュール通りであると考えている。一方,直鎖状のリンカーを持つ標識体の合成計画は,やや遅れている。この理由は当初,光親和性部であるベンゾフェノン部とリンカーのポリエチレン鎖部分をエステル結合でつなぐ計画であったが,実際合成してみると,合成分子が予想以上に不安定であり,先の合成に進めないことが判明し,その結果,結合様式をより安定なエーテル結合に変更する必要が生じた為である。PC12細胞培養など標的タンパク結合試験に対する準備はすでに整っており,標識分子が合成でき次第,結合試験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,光親和性標識体の合成完了を最優先で目指すと共に,次の段階である標的タンパク結合試験を進める。また同時に,活性分子の光学異性体が活性に及ぼす影響を確認するために,ent-ネオビブサニンB及び,光学活性なネオビブサニン誘導体の合成を目指す。標的タンパク質の同定に成功すれば,コンピュータによるシミュレーションを含めた手法を検討し,活性分子が結合する部位の同定へと展開する。また細胞内標的タンパク質を簡便な方法で網羅的に検出する新手法の開発にも挑戦する。具体的には,活性分子を固定化したビーズで前処理した細胞破砕物と,前処理なしの破砕物とをそれぞれSDS-PAGEで分析し,両者の泳動イメージを画像上で差し引くことで,活性分子に結合し固相上に吸着した分子を同定するアイデアである。前例が無く,画像の処理法など解決しなくてはいけない問題が多いが,新しい試みとして挑戦する予定である。これらの実験結果により,標的タンパク質と活性分子の相互作用が分子レベルで解明出来れば,より高活性な分子の創製に道が開け,アルツハイマー病治療薬開発に貢献できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すでに必要な備品類は整備済みであることから,平成24年度は,合成実験用の試薬,溶媒類の購入が主な研究費の使用用途となる。さらに,PC12細胞を利用した活性評価試験を実施するための試薬類の購入にも経費を出費する。加えて,細胞内標的タンパク質を検出する新手法を検討するのに必要なSDS-PAGE用のゲルプレートも購入予定である。SDS-PAGEに必要な機器類は,学部内で調達する予定であるが,研究の進捗状況や展開によっては,新規に購入する事も考えられる。
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[Journal Article] Halichonines A, B, and C, Novel Sesquiterpene Alkaloids from the Marine Sponge Halichondria okadai2011
Author(s)
Kadota. O. Ohno, T. Chiba, S. Todoroki, H. Yoshimura, N. Maru, K. Maekawa, H. Imagawa, K. Yamada, A. Wakamiya, K. Suenaga, D. Uemura
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Journal Title
Chem. Commun.
Volume: 47
Pages: 12453-12455
Peer Reviewed
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