2011 Fiscal Year Research-status Report
筋ジストロフィーの治療法開発を目指した発症メカニズムの解明研究
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23590036
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Research Institution | The Noguchi Institute |
Principal Investigator |
大隅 賢二 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (90203778)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 筋ジストロフィー / ラミニン / オリゴ糖 |
Research Abstract |
研究代表者は、筋ジストロフィー発症との関与が示唆されているリン酸化O-マンノース型糖鎖の合成ルートを確立した。筋ジストロフィーは、筋細胞膜上の糖タンパク質と細胞外マトリックスとの相互作用が失われることによって発症する。この相互作用には、前述の糖タンパク質の糖鎖が関与している。しかし、糖鎖について二種類の構造が提唱されており、どちらの構造が相互作用に関与しているかは明らかになっていない。研究代表者は、本研究課題の開始以前に一種類の糖鎖の合成に成功した。そこで本研究では、筋ジストロフィー発症メカニズムの解明を目的として以下4項目について検討している。1、もう一種類の糖鎖であるリン酸化O-マンノース型糖鎖の合成ルートの確立。2、糖鎖と細胞外マトリックスとの相互作用解析法の開発。3、二種類の糖鎖と細胞外マトリックスとの相互作用の比較による、筋ジストロフィー発症に関与する糖鎖の特定。4、治療薬開発に貢献するための糖鎖の提供。平成23年度は、前述の項目1の達成を目的とした。その結果、目的化合物であるリン酸化O-マンノース型糖鎖の合成法を開発することができた。また、検討過程で得られた中間化合物を生化学研究者へ提供し、治療薬開発を目指した糖鎖合成酵素の探索に活用した。この研究成果については、第48回ペプチド討論会において報告した。さらに前述の項目2の予備実験として、糖鎖のマイクロプレートへの固定化について検討し、新規な手法を開発した。この技術に関しては産業財産権を出願した。現在、筋ジストロフィーに対する治癒性の治療法は無い。遺伝子治療や薬剤開発などの研究が進められているが、それらは、様々なタイプの筋ジストロフィーに一様に効く治療法ではない。このような状況において、本研究のような糖鎖を介した病気発症メカニズムの解明は、新たな治療法開発に繋がると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画では、リン酸化O-マンノース型糖鎖の合成ルートの確立を目的とした。研究計画に基づき検討した結果、目的化合物の合成ルートを確立することができた。この検討過程で得られた中間化合物を国内の研究者に提供し、筋ジストロフィー発症に関与する酵素の探索に利用した。また、合成した糖鎖と細胞外マトリックスとの相互作用解析に向けた予備実験に着手し、マイクロプレートを用いる手法が効果的であることを明らかにした。これらの研究において得られた知見のうち、糖鎖合成に関する内容については、第48回ペプチド討論会や日本薬学会第132回年会において報告した。また糖鎖と細胞外マトリックスとの相互作用解析に関する内容については、16th European Carbohydrate Symposiumや8th AFMC International Medicinal Chemistry Symposiumにおいて報告すると共に、産業財産権(特願2011-093308、2011-179649、2012-045417)を出願した。以上のことから当初計画した目的をほぼ達成したものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画した通り、平成24年度は目的化合物であるリン酸化O-マンノース型糖鎖の量的な調製を試みる。平成23年度に確立した合成ルートに従い、目的化合物やその中間化合物を量的に調製する。合成した化合物の中で新規化合物については、詳細な物性値(旋光度や元素分析値)を測定し学術雑誌への投稿準備を行う。合成糖鎖を研究代表者が所属する研究機関の生化学研究者へ提供することで、筋ジストロフィー発症メカニズムの生化学的手法による解明研究に役立てる。また、本年度産業財産権として出願した手法を利用し、糖鎖と細胞外マトリックスとの相互作用測定準備を行う。本研究を通して得られた知見については、研究成果を社会・国民に発信する目的で、学会において発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施計画を達成するため、物品費については、目的化合物の合成に必要な試薬類、ガラス器具などの購入費用や、糖鎖と細胞外マトリックスとの相互作用解析に必要な試薬、器具の購入費用として使用する。研究成果を社会・国民に発信するため、旅費を国内学会(日本薬学会第133回年会とケミカルバイオロジー学会第7回年会を予定)での発表のための費用に、人件費・謝金を論文校閲費用に、その他の費用を学会誌投稿料に用いる。
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Research Products
(9 results)